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4、そうなったのには理由がある

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 流助がうわごとみたいにごめんなさい、と言う。
 苦しそうに喘いでいる流助をぎゅっと抱いたまま、イオが鳥飼に訴える。
「どうすればいい? ねえ、どうすれば……」
 イオはつらそうな表情で、鳥飼に問いかける。鳥飼はとたんにどっと脂汗がでる。一歩も二人に近づけなかった。
 発情している流助は当然として、窮地に立ったイオもとても悩ましかった。首筋から怯えと興奮がたちのぼり、狩ってほしいといわんばかりだ。
 流助の放つΩの強烈なフェロモンとその影響をダイレクトに受けているイオ、流助の激しい息遣い、鳥飼の剛直がギリギリと苦しめられる。
「……旅行、楽しみだったのに……こんな……ごめんなさい……」
「流助のせいじゃない」
「ぜんぶはじめてで……もっとちゃんと、はじめてだからしたくて用意もしてくれて……全部台無し、だ……」
「流助、わかった、わかったから。あとでちゃんと聞くから」
 がくがくと寒さに震えているような様子の流助が、突然イオの腕を振り払いトイレに嘔吐した。吐いてしまえば抑制剤も効果がない。
 鳥飼は流助の背中をさすろうとするイオを突き飛ばすようにして二人の間にわってはいる。流助の細い二の腕をつかむと、強引に自分の方に向きあわせた。
 ぐったりとうなだれている人形のように血の気のない顔をあおむかせ、唇にくらいついた。
 吐いた胃液の苦い味と、甘いフェロモンの蜜のような唾液。それぞれの意味でむせかえりそうになる。
 むさぼりながら下肢を乱暴にはぎとった。細い脚、小さな尻をむきだしにした。
「うんっ、」
 流助はそうされながら、歓喜ともとれる声をあげる。
 思ったとおり小さな性器はすでに固く上を向いている。
 下着はびしょ濡れで、そこからは特に濃厚な匂いがする。表の衣服にも大きくしみが広がっているうえ、糸までひいていた。鼻腔を直撃する甘い香りは南国の強い花、まがまがしい色と形の花芯を思わせる。
 鳥飼は無言で、流助の秘部を暴いた。
 そこはずぶずぶにぬれそぼり、ぱくぱくと開いて鳥飼を待っている。目と指で発情を確認してしまった。完全に見境がなくなり、流助の小さな身体を抱え上げ、何の予告もなく己をつきたてた。
 イオが見ている前で、αとΩはつながった。
 流助のそこは、前戯など求めておらず、ただ早くそうされたがっていて、めくれている。イオがいることも場所のことも何も頭になかった。鳥飼も同様で、己の欲望を流助のΩにぶつけることしか考えられなかった。事務的ともいえる動きで、突き上げ続ける。
 頭の片隅で、これが流助の初めてで、ここは公衆便所なのだという事実がよぎるが、Ωのフェロモンを前にするとそんなことはどうでもよかった。ただ、熱を、ただ熱を解放したい。流助と自分がかかえる問題を今すぐ解決しなければならない。
「あっ、あ……、は、……ああ……か、は」
 性器に鳥飼の熱い塊を受け、かすれた声をあげて、流助はのけぞった。その身体を楔がはずれないためだけに支える。
 初めてなのに、知っていて、わかっていて、待っていた。流助の身体は鳥飼にそう言っているようだった。
 鳥飼の腕に身体を持ち上げられながら、ペニスをうちつけられ、しばらく獣のように交わる。
 鳥飼は無我夢中で流助の中を味わっていたため、誰かに背中を殴られ続けていることになかなか気づかなかった。
「と、とりがいさん……ひ、ひに、ん、避妊っ……」
 イオが泣きながら鳥飼の背中を殴っていた。
 あわてて抜くと、自分の精がトイレの床に勢いよくはじけ飛ぶ。流助は自分の身体が急に空洞になってしまったことに混乱して泣いた。
「や……やだっつ、」
 固まって棒立ちになっているイオに、すがりつく。髪を振り乱し壁際に追いつめる。
「……すぐ、すぐ欲しい、すぐふさいで……死んじゃいそうにつら、い……っ……」
「え、……」
「イオ、イオ、イオの、食べさせておねがい……何でもするからっ」
 よろけて尻もちをついたイオの下肢にむしゃぶりつく。かたちのよいペニスを一息にねぶると、流助は数回己のΩにイオの性器をすりつけた。イオの半ば柔らかかったものが、みるみるうちに固くなった。流助は気持ちがはやっているようで、何度か挿入に失敗する。体重をかけ手で支え、やっと奥に迎え入れると安堵の吐息をもらす。
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