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22.善意の刃
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夢を見る。
毎晩、夢の中でクロヴィスとの逢瀬を楽しむ。だからいつも夜が待ち遠しいし、そのおかげで周囲のことなんて気にならなかった。
リリーとランの悪評なんてどうでもいい。リリーという友人を失って一人になっても気にならない。
「可哀想な、フィオナ嬢。友人と思っていた人に貶められてさぞ悲しかったでしょうね」
「私たちでよければ相談に乗りますわよ」
話したこともないスズメが情報欲しさに近づいても気にならない。
「あの、フィオナ嬢」
「聞いていますか?」
どうでもいい。そんなことよりも早く夜にならないかしら。
「おはよう、フィオナ」
「クロヴィス、おはよう」
ああ、嬉しい。夢でしか話せないのに今日は現実でも親しげに話しかけてくれるのね。
「フィオナ嬢とトラント伯爵令息様は仲がよろしいのですか?」
「ええ、まぁ」とクロヴィスが微笑むとそれだけで黄色い歓声が上がる。
私はその光景がとても嫌だった。
誰もクロヴィスに話しかけないでほしい。彼を見ないでほしい。クロヴィスは私のモノなのに。
無意識に手首からいつの間にか肩まで広がった痣に私は触れていた。この痣、気づかれないように最初は手袋で隠していたけど、入浴時に使用人たちがなんの反応も見せなかったことから私にしか見えないのだと分かり、隠すのをやめた。
蛇の鱗のような痣。私はこの黒い鱗を持った蛇を知っている。ずっと昔に会ったことがある。
『君が俺のところまで堕ちてくれればお嫁さんにしてあげる』
あれは、誰に言われたんだろうか?
「フィオナ、どうかした?」
「えっ、あ、ううん。なんでもない」
少しぼーっとしてたみたい。何かとても大切なことを思い出そうとしていたような気がするけど。なんだったかしら。
再び思考の渦に身を寄せていた私は気づかなかった。誰にも見えないはずの痣に触れている私をクロヴィスが恍惚とした顔で見ていたことに。
◇◇◇
「今日は一年生との合同訓練をする。一年生は魔力操作に不慣れな為、二年生が率先してフォローするように」
力を持つ者は力なき者を守ようにという信条の元建てられたこの学校では魔法を使った訓練を男女問わず実践も交えて行われる。
「ラン、水魔法が得意だろ。俺が教えよう」
早速アランはランのところへ行った。そのまま素直にいちゃついていればいいのにランはアランの申し出を断ったのだ。他に気になる人でもできたのかと思っていたら「僕、義姉さんに教えてもらいたい」と言ってきた。
「義姉さんと、仲直りがしたいんだ。なんだか誤解が生じて、それがどんどん拗れてる気がするんだ」
誤解なんて一つも生じてないけど。
「いいよね、義姉さん」
「お断りします。授業は実践で使えるように魔力操作の練度上げる為に存在するのであって、交流を深める為でも仲直りをする為の場でもありません」
「おい、せっかくランが強情なお前の為に」
「いいんだ、アラン」
「よくない、ラン」
「そうだぞ、ラン。こういう人はつけあがらせると碌なことがない」
「ええ。今のうちに立場というものをわからせた方がいい。噂に違わぬ悪女のようですから」
一体どんな噂を聞いたのやら。非常に興味深い。
それに、ランの噂を評判が入学当初に比べてかなり落ちているはず。その結果、ランから離れた友達は多いけど、今でも側にいる馬鹿はアラン以外に二人もいたのね。
「あなたですよね、ランの悪評を流して、彼の評判を下げているのは。恥ずかしくないのですか?」
「なんの証拠もなく、ただ思い込みだけで人を糾弾するあなたの行いこそ恥ずべき行為だわ」
「フィオナ、お前は随分と調子に乗っているようだな」
アランは私がご友人に噛み付いたのがよほど気に入らないようね。今にも胸ぐらでも掴みにかかりそう。ここで私が大怪我をしたらアランの評判もガタ落ちね。
「君たち、そこまでにしたまえ」
周囲ではすでに魔力操作の訓練を開始していた。そんな中一向に始めない私に痺れを切らした教師がやって来た。
「まず、ラン君。フィオナ君の言っていることは正しい。私は魔力操作をしろと指示をした。その訓練をしろとは言ったが仲違いした義姉との関係を修復しろとは言っていないし、そういうプライベートなことはプライベートの時間にするべきではないかね?」
教師は思ったよりも最初から成り行きを見ていたいたようだ。
「も、申し訳ありません」
ランの傷つきましたって顔は意味不明だけど。教師も正論を言っているだけでランを傷つけているわけでもないのに。
「君たちも、令嬢を数人で取り囲むのは紳士のすべきことではない。学校ではマナーに関しても学ぶはずだが、君たちは学んだことをどこかに落として来たのか?見ていて実に不快だ。マナーとは相手に不快を与えない為にあるものだ。それが理解できていないのならもう一度学び直すことを勧める。手本となる高位貴族のすべきことではない」
「っ」
あれだけ饒舌だったのにさすがのアランたちも教師には逆らえないのね。情けない。
「フィオナ君、二年生が一年生のフォローをすることで二年生も自分たちの苦手を理解したり、自分の魔力に関する理解を深める時間でもある。やりにくくはあるだろうが、精神統一の訓練にもなる。ラン君に魔力操作のフォローを」
「・・・・・はい」
「他の者たちは解散し、不慣れな一年生のフォローに回りなさい」
鶴の一声ではないけど、アランたちは渋々私とランから離れて苦戦している一年生がいないか探しに行った。
「あ、あの、義姉さん」
「魔力を操作してみせて」
「あ、うん」と、言いながらランは魔力操作をしようとはしない。授業を受ける気がないのかしら?
何度か促し、教師が見ていることを教えてやっとランは魔力操作の訓練を始めた。でも、魔力操作をしながらチラチラとこちらを見ている。集中力ゼロね。
「集中して」
「あ、うん」
「乱れてる。魔力操作中は自分の魔力から目を逸らさないで」
ランは私の言葉を全く聞かない。魔力操作しながら目を自分の魔力から逸らすのはとても危険な行為だ。それは最初の授業で習うはずなんだけど。
「集中して。できないのなら今すぐ魔力操作をやめて。あなたが持っている力は使い方を誤まれば他者の命を奪うこともあることをもっと自覚しなさい」
「命を奪うなんて、僕はそんな恐ろしいことを考えたこともないよ」
ええ、そうでしょうね。あなたはいつもそう。
他人を傷つけるつもりはなくて、悪意はいつも存在しなくて、ただ自分のことを理解してほしいだけ。ただ、私を義姉として慕っているだけ。ただ、私と仲良くなりたいだけ。そこに悪意はない。ただの善意。ただ、優しいだけ。
きっと考えたこともない。
善意が刃を持って人に襲いかかることもあるなんて。優しさから出た言動が他者にとっては不要で、不快になることもあるなんて。きっと知らない。他人を傷つけても平気な人間がいることを。きっと分からない。
だって彼は優しい世界の住人だから。
・・・・・ああ、そうか。知らないなら、分からないなら、分からせてやればいいんだ。思い知らせてやればいいんだ。
「自覚がないから失敗するのよ」
「義姉さん、何をっ!」
私は自分の魔力をランの中に流し込んだ。魔力操作の練習を始めたばかりで、しかも全く集中できていなかった彼は体内で急激に膨れ上がる魔力を操ることができなくなり、暴走させた。
「きゃあっ」
「グランチェ子爵令息、何をしているっ!さっさと魔力を収めろっ」
「む、無理です」
「自分の魔力だろっ!」
「ランっ!」
「アランっ」
アランがランを心配して駆けつけようとするが、暴走している水魔法に流され壁に激突。そのまま気を失ってしまった。ランに懸想している他二人もランを助けようとしているが彼から溢れる水で近づくこともできない。
令嬢も令息も逃げ惑い、教師はなんとか落ち着かせようと奔走する。
「だ、誰か、助けて」
止まらない魔力暴走にか、自分のせいで怪我人が出始めているせいか、ランの顔は恐怖に歪んでいた。私はそんなランに魔力をぶつけて気絶させる。発生源であるランが気絶したことによって溢れだす水は徐々に引いていく。それに比例するように生徒も落ち着きを取り戻して行った。
私は一人、気を失って倒れるランを冷たく見下ろした。
◇◇◇
ランはすぐに目を覚ました。私は教師に頼まれて嫌々ランが目覚めるまでつきそうことになった。
「義姉さん、何であんな酷いことを」
保健室のベッドに横になったままランは真っ先に私を責めた。自分に瑕疵はないと言いたげね。まぁ、八割方私が原因だけど。残り二割は集中していなかったランのせいだ。
真面目に取り組んでいたらあんな暴走の仕方はしなかった。
「私の善意よ。あなたが魔力操作の練習に消極的だったから、集中できるように手伝ってあげたの。これで自覚が持てたんじゃないかしら。自分の持っている力が鋭さを持った凶器だと」
「義姉さんがあんなことをしなければ暴走なんてしなかった。他人を傷つけて楽しい?僕を利用して楽しい?」
「あなたって自分の都合が悪くなるとそうやって人のせいにして逃げていたのね。集中していれば、あの程度の魔力を流し込まれただけでは暴走しなかったわ。私は注意したはずよ。『集中しろ』と。聞かなかったのはあなた。あの暴走はあなたが起こしたのよ」
『他人を傷つけて楽しい?僕を利用して楽しい?』、ですって?
どこまでも自分を弱者扱いする気?
あなたは弱者じゃない。
「他人を傷つけて楽しいかですって。その言葉、そのままお返しするわ。弱い者虐めして楽しい?」
壁に激突したアランは打ち身程度で済んだそうだ。
・・・・・・あのまま死ねばよかったのに。
毎晩、夢の中でクロヴィスとの逢瀬を楽しむ。だからいつも夜が待ち遠しいし、そのおかげで周囲のことなんて気にならなかった。
リリーとランの悪評なんてどうでもいい。リリーという友人を失って一人になっても気にならない。
「可哀想な、フィオナ嬢。友人と思っていた人に貶められてさぞ悲しかったでしょうね」
「私たちでよければ相談に乗りますわよ」
話したこともないスズメが情報欲しさに近づいても気にならない。
「あの、フィオナ嬢」
「聞いていますか?」
どうでもいい。そんなことよりも早く夜にならないかしら。
「おはよう、フィオナ」
「クロヴィス、おはよう」
ああ、嬉しい。夢でしか話せないのに今日は現実でも親しげに話しかけてくれるのね。
「フィオナ嬢とトラント伯爵令息様は仲がよろしいのですか?」
「ええ、まぁ」とクロヴィスが微笑むとそれだけで黄色い歓声が上がる。
私はその光景がとても嫌だった。
誰もクロヴィスに話しかけないでほしい。彼を見ないでほしい。クロヴィスは私のモノなのに。
無意識に手首からいつの間にか肩まで広がった痣に私は触れていた。この痣、気づかれないように最初は手袋で隠していたけど、入浴時に使用人たちがなんの反応も見せなかったことから私にしか見えないのだと分かり、隠すのをやめた。
蛇の鱗のような痣。私はこの黒い鱗を持った蛇を知っている。ずっと昔に会ったことがある。
『君が俺のところまで堕ちてくれればお嫁さんにしてあげる』
あれは、誰に言われたんだろうか?
「フィオナ、どうかした?」
「えっ、あ、ううん。なんでもない」
少しぼーっとしてたみたい。何かとても大切なことを思い出そうとしていたような気がするけど。なんだったかしら。
再び思考の渦に身を寄せていた私は気づかなかった。誰にも見えないはずの痣に触れている私をクロヴィスが恍惚とした顔で見ていたことに。
◇◇◇
「今日は一年生との合同訓練をする。一年生は魔力操作に不慣れな為、二年生が率先してフォローするように」
力を持つ者は力なき者を守ようにという信条の元建てられたこの学校では魔法を使った訓練を男女問わず実践も交えて行われる。
「ラン、水魔法が得意だろ。俺が教えよう」
早速アランはランのところへ行った。そのまま素直にいちゃついていればいいのにランはアランの申し出を断ったのだ。他に気になる人でもできたのかと思っていたら「僕、義姉さんに教えてもらいたい」と言ってきた。
「義姉さんと、仲直りがしたいんだ。なんだか誤解が生じて、それがどんどん拗れてる気がするんだ」
誤解なんて一つも生じてないけど。
「いいよね、義姉さん」
「お断りします。授業は実践で使えるように魔力操作の練度上げる為に存在するのであって、交流を深める為でも仲直りをする為の場でもありません」
「おい、せっかくランが強情なお前の為に」
「いいんだ、アラン」
「よくない、ラン」
「そうだぞ、ラン。こういう人はつけあがらせると碌なことがない」
「ええ。今のうちに立場というものをわからせた方がいい。噂に違わぬ悪女のようですから」
一体どんな噂を聞いたのやら。非常に興味深い。
それに、ランの噂を評判が入学当初に比べてかなり落ちているはず。その結果、ランから離れた友達は多いけど、今でも側にいる馬鹿はアラン以外に二人もいたのね。
「あなたですよね、ランの悪評を流して、彼の評判を下げているのは。恥ずかしくないのですか?」
「なんの証拠もなく、ただ思い込みだけで人を糾弾するあなたの行いこそ恥ずべき行為だわ」
「フィオナ、お前は随分と調子に乗っているようだな」
アランは私がご友人に噛み付いたのがよほど気に入らないようね。今にも胸ぐらでも掴みにかかりそう。ここで私が大怪我をしたらアランの評判もガタ落ちね。
「君たち、そこまでにしたまえ」
周囲ではすでに魔力操作の訓練を開始していた。そんな中一向に始めない私に痺れを切らした教師がやって来た。
「まず、ラン君。フィオナ君の言っていることは正しい。私は魔力操作をしろと指示をした。その訓練をしろとは言ったが仲違いした義姉との関係を修復しろとは言っていないし、そういうプライベートなことはプライベートの時間にするべきではないかね?」
教師は思ったよりも最初から成り行きを見ていたいたようだ。
「も、申し訳ありません」
ランの傷つきましたって顔は意味不明だけど。教師も正論を言っているだけでランを傷つけているわけでもないのに。
「君たちも、令嬢を数人で取り囲むのは紳士のすべきことではない。学校ではマナーに関しても学ぶはずだが、君たちは学んだことをどこかに落として来たのか?見ていて実に不快だ。マナーとは相手に不快を与えない為にあるものだ。それが理解できていないのならもう一度学び直すことを勧める。手本となる高位貴族のすべきことではない」
「っ」
あれだけ饒舌だったのにさすがのアランたちも教師には逆らえないのね。情けない。
「フィオナ君、二年生が一年生のフォローをすることで二年生も自分たちの苦手を理解したり、自分の魔力に関する理解を深める時間でもある。やりにくくはあるだろうが、精神統一の訓練にもなる。ラン君に魔力操作のフォローを」
「・・・・・はい」
「他の者たちは解散し、不慣れな一年生のフォローに回りなさい」
鶴の一声ではないけど、アランたちは渋々私とランから離れて苦戦している一年生がいないか探しに行った。
「あ、あの、義姉さん」
「魔力を操作してみせて」
「あ、うん」と、言いながらランは魔力操作をしようとはしない。授業を受ける気がないのかしら?
何度か促し、教師が見ていることを教えてやっとランは魔力操作の訓練を始めた。でも、魔力操作をしながらチラチラとこちらを見ている。集中力ゼロね。
「集中して」
「あ、うん」
「乱れてる。魔力操作中は自分の魔力から目を逸らさないで」
ランは私の言葉を全く聞かない。魔力操作しながら目を自分の魔力から逸らすのはとても危険な行為だ。それは最初の授業で習うはずなんだけど。
「集中して。できないのなら今すぐ魔力操作をやめて。あなたが持っている力は使い方を誤まれば他者の命を奪うこともあることをもっと自覚しなさい」
「命を奪うなんて、僕はそんな恐ろしいことを考えたこともないよ」
ええ、そうでしょうね。あなたはいつもそう。
他人を傷つけるつもりはなくて、悪意はいつも存在しなくて、ただ自分のことを理解してほしいだけ。ただ、私を義姉として慕っているだけ。ただ、私と仲良くなりたいだけ。そこに悪意はない。ただの善意。ただ、優しいだけ。
きっと考えたこともない。
善意が刃を持って人に襲いかかることもあるなんて。優しさから出た言動が他者にとっては不要で、不快になることもあるなんて。きっと知らない。他人を傷つけても平気な人間がいることを。きっと分からない。
だって彼は優しい世界の住人だから。
・・・・・ああ、そうか。知らないなら、分からないなら、分からせてやればいいんだ。思い知らせてやればいいんだ。
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「義姉さん、何をっ!」
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「きゃあっ」
「グランチェ子爵令息、何をしているっ!さっさと魔力を収めろっ」
「む、無理です」
「自分の魔力だろっ!」
「ランっ!」
「アランっ」
アランがランを心配して駆けつけようとするが、暴走している水魔法に流され壁に激突。そのまま気を失ってしまった。ランに懸想している他二人もランを助けようとしているが彼から溢れる水で近づくこともできない。
令嬢も令息も逃げ惑い、教師はなんとか落ち着かせようと奔走する。
「だ、誰か、助けて」
止まらない魔力暴走にか、自分のせいで怪我人が出始めているせいか、ランの顔は恐怖に歪んでいた。私はそんなランに魔力をぶつけて気絶させる。発生源であるランが気絶したことによって溢れだす水は徐々に引いていく。それに比例するように生徒も落ち着きを取り戻して行った。
私は一人、気を失って倒れるランを冷たく見下ろした。
◇◇◇
ランはすぐに目を覚ました。私は教師に頼まれて嫌々ランが目覚めるまでつきそうことになった。
「義姉さん、何であんな酷いことを」
保健室のベッドに横になったままランは真っ先に私を責めた。自分に瑕疵はないと言いたげね。まぁ、八割方私が原因だけど。残り二割は集中していなかったランのせいだ。
真面目に取り組んでいたらあんな暴走の仕方はしなかった。
「私の善意よ。あなたが魔力操作の練習に消極的だったから、集中できるように手伝ってあげたの。これで自覚が持てたんじゃないかしら。自分の持っている力が鋭さを持った凶器だと」
「義姉さんがあんなことをしなければ暴走なんてしなかった。他人を傷つけて楽しい?僕を利用して楽しい?」
「あなたって自分の都合が悪くなるとそうやって人のせいにして逃げていたのね。集中していれば、あの程度の魔力を流し込まれただけでは暴走しなかったわ。私は注意したはずよ。『集中しろ』と。聞かなかったのはあなた。あの暴走はあなたが起こしたのよ」
『他人を傷つけて楽しい?僕を利用して楽しい?』、ですって?
どこまでも自分を弱者扱いする気?
あなたは弱者じゃない。
「他人を傷つけて楽しいかですって。その言葉、そのままお返しするわ。弱い者虐めして楽しい?」
壁に激突したアランは打ち身程度で済んだそうだ。
・・・・・・あのまま死ねばよかったのに。
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