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第三章

38.ライラ視点

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おかしい。
どうして?
どうしてルルーシュは助けに来ないの?
投獄された。
しかも貴族が入る牢屋ではない。
平民が入るような薄汚い部屋だ。
養女だからって馬鹿にして。
気がついたら裁判が終わってた。
訳のわからない罪状を上げられた。ただちょっと懲らしめようとしただけなのに。
何がいけなかったの?
何が悪かったの?
ただの子供のイタズラじゃない。こんなのよくあることじゃない。
貴族なんて私より酷いことしている人いっぱいいるでしょう。
なのに、どうして私だけが責められるの。
私が平民だから?養女だから?
そんなの差別だわ。
この世は理不尽なことばかり。
私は何も悪くないのに。悪いのは私の婚約者であるルルーシュを誘惑するセイレーンなのに。
「早く助けに来てよ、ルルーシュ」
隙間風の多い牢屋の中はひどく寒い。
身を寄せて少しでも寒さを凌ごうとしていたらガチャリと音がした。
顔を上げると牢屋の扉が開いていて、フードを目深に被った男がいた。
男は顎をくいっと牢屋の外に向けて出ろと指示をする。
私は訳がわからないまま言うとおりにすると男は私の手首を掴んで歩きだした。
騎士には見えない。
もしかしてルルーシュに言われて助けに来たのかな?
「ねぇ、私を助けてくれるの?」
「・・・・・・」
「ルルーシュに言われて来たの?」
「・・・・・・」
「私はライラ。ルルーシュの婚約者よ。あなたのお名前は?」
「・・・・・・」
男は何も答えない。無口な人ね。
でも男について行ったのは正解だった。
騎士の誰にも会うことなく私は外に出られた。
人目を避ける為だろう。
男は森の中に入って行った。こちらのペースに合わせてくれるのは有難いけど、かなり歩きづらいし、どこまで歩くのか全く分からないから疲労がどんどん溜まっていく。
一度文句を言った方が良いわね。
そう思って口を開きかけた時男の足が止まった。ごそごそと懐を探った男は水筒を取り出した。
無言で私に差し出す。飲めということなんだろうけど、口で言いなさいよ。
喉渇いていたから飲むけど。
私は男から水筒を受け取り水を飲む。
「ねぇ、ルルーシュはどこ?いつ会えるの?」
「‥…」
やはり男は答えない。
どうしてルルーシュはこんな男を寄こしたのかしら。

◇◇◇

何?
うるさいわね。
「えっ?」
私は舞台の上にいてスポットライトを浴びていた。
「どうなってるの?ここどこよ」
「うるさい、黙れ」
「きゃあっ」
仮面をつけた男に頬を叩かれた。良く見ると私の首に首輪がついていた。その先についているリードを私を殴った男が持っている。
「では五千ユールから」
男がそう言うと舞台の下にいる、同じように仮面を被った人間が看板のようなものを上げて「一万ユール」とか「一万五千」とか次々に金額を提示していく。
どうなってるの?
私は冤罪をかけられて、牢屋に入れられて、でもルルーシュの従者が助けに来てくれて、森で水筒を受け取って、飲んだら眠くなって、それで目を覚ましたらここにいた。
ふと上を見上げるとルルーシュがいた。
助けに来てくれたんだと思った。
でも、ルルーシュは私に背を向けた。ルルーシュの背が遠ざかっていく。
「うそ、でしょ。ルルーシュ、何をしているの?助けなさいよっ!あんたの婚約者が酷い目に合ってんのよ!」
「うるせぇぞ、商品の分際で」
「ぎゃっ」
男が鞭で私の頬を殴った。赤い線ができてひりひりと痛む。
「何をするのよ。私は商品なんかじゃないわっ!私は貴族の令嬢なのよ。ルルーシュの婚約者。私に酷いことしたら彼が黙ってないんだから」
「はっ。イカれてるって話は本当だったのか」
「べべつに、か構わないんだな」
脂ぎった男が息を乱しながら私に近づいて来た。
「そ、それじゃあ、い行くんだな」
「や、やめてよ。私に近づかないで。あっぐ」
「だ、ダメなんだな。ぼ、僕に口答えするなんて。お、お仕置きが必要の何だな」
そう言って醜い男が何度も私の頬を叩く。力加減を知らない男の分厚く汗ばんだ手が私の頬を叩いて行く。
「ぼぼくは、君をお金でか買ったんだな。きょ、今日から君は僕のものなんだな」
叩かれ過ぎて頭がぼーっとする。文句も言えなくなった私を男が引っ張っていく。
ぐいぐいとリードを引っ張るから首輪がこすれて痛いし、うまく歩けないから体が引きずられていく。そのせいで体にも擦れた傷ができて行く。
「あらぁ、帰ったの」
「帰ったよ。ママ。み見て、あ新しいおもちゃ。今度は長くもたせるよ」
「そうして頂戴ね」
「さぁ、い行こうね。僕のおもちゃ」
そう言って男が連れて来たのは寝室だった。
嘘でしょ。
「ぃ、いや、いやぁぁぁぁっ!!」
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