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音無砂月

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翌日、貴族や平民が好んで読むタブロイド紙にセルフ殿下の『貴族は王族の道具』発言が載っていた。
どうしてかというと。シャーベットの部屋にはいろいろな仕掛けがあるのだ。そして、彼女のクローゼットの後ろには隠し通路のようなものがあり、そこに私が懇意にしている記者が隠れていたのだ。
彼に頼んで書いてもらったのが今朝、発売された『貴族は王族の道具』宣言の記事だ。
セルフ殿下のうかつさにはこちらにいい誤算をもたらせてくれる。
今頃、王宮は大変なことになっているだろう。
セルフ殿下のうかつ発言の抗議が貴族からたくさん来ているはずだ。いくら彼が王籍を剥奪されていようと関係ない。それに婚約者である私に非を負わせようとしてもダメだ。
むしろ逆効果。
だって私は王命で無理やり婚約を結ばれ、しかも蔑ろにされている(実際は自主的に邸に引きこもり、夜会などにはシャーベットを代理に行かせていた。もちろん、世間はそんなことを知らないので勝手に誤解してくれる)私は被害者だ。
同情されることはあっても非難されることはない。
「貴族の信用を無くせば王家も終わるんですよ、陛下」
この騒ぎに襲われたショックで部屋に閉じこもっているシャーベットも、それに付き合っているセルフ殿下も気づかない。

◇◇◇
「陛下、これはどういうことですかっ!」
謁見室で貴族が押し寄せてきた。
一応、騎士が押し寄せてきた貴族から陛下を守るために前に立ちはだかるが、体は後ろにのけぞり、明らかに貴族に押されている。
「わ、私は何も知らないっ」
「知らないわけがないでしょう」
「セルフ殿下はあなたの子ではありませんか」
「王籍は剥奪している。すべての責は」
「公爵家の婚約者に無理やりさせておいて、その責まで彼女に負わせるのですかっ!だいたいセルフ殿下は婚約者の邸に愛人を連れて来た挙句住まわせているとか。貴族を馬鹿にしているにも程があるっ!」
「妻が言っていましたぞ。セルフ殿下の愛人殿は見目がよく、身分の高い男には娼婦のような仕草で媚を売ると。そのような娘を愛人にし、堂々と夜会に連れて行くなど品性を疑う」
貴族には派閥があり、普段は嫌みを言い合っているような連中がこの時ばかりは結託して陛下を責め立てる。その剣幕に押された陛下は「だ、誰かスカーレットを呼んで来い」と王宮に響き渡るような大声で命令を出した。
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