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第5章:キルホーマン…あなたには、そんな過去がありましたのね…。
第1話
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「『南のお告げ所』か…。あんたたち、そこへ行って何をするつもりなんだ?」
「ギルド長さん、用件は人それぞれです。申し上げなければ教えて頂けない理由でもあるのでしょうか?」
「…すまないが、『南のお告げ所』という場所について、我々は聞いた事がないし、何も知らない」
(キルホーマン、祠の占い師は『南のお告げ所』について聞いた事があるとおっしゃってましたわ。この男の言っている事、怪しくなくって?)
(ええ、何か隠しているのは間違いないでしょう。私のスキルで彼の発汗量を数値化していますが、さきほど数値が上昇しました)
「では、どのような取引を行えば教えて頂けますか?」
「言っただろう。このギルドでわかる事は何もない。わざわざ紹介状まで持参してもらったのに残念だが、お引き取り願いたい」
「…なるほど。承知いたしましたよ。お時間を頂戴してありがとうございました」
(よかったんですの? 絶対に何かを知っている風でしたわよ)
(現段階で彼から得られる情報はないでしょう。ギルドの受付のお嬢さんに少しお話をお伺いしましょうか)
「このギルドで情報を取引するルール…ですか…?」
「ええ、もしあれば、教えていただきたいのです。こうして遥々、紹介状まで手挟んで推参しましたが、ギルド長さんのお気に召さなかったようして…」
「そうでしたか…。何か特別なルールがある訳ではないのですが…この街のギルドはいずれも、共通の組合に加入しておりまして…一連托生ですので、外部からの方を容易に信頼して情報を提供する事は、まずないと思って頂いた方が良いと思います」
「組合…ですか。それは具体的に、どのような組合なのでしょうか?」
「…申し訳ございません、これ以上を申し上げる訳にはいきませんから…」
「…そうですか。いえ、ありがとうございます。一旦、引き上げさせていただくとしますよ」
「おっ、出てきた出てきた。アイラちゃんたちはちゃんと情報を得られたかな?」
「おい厚化粧、キルホーマン、首尾は上々だったのか」
「それが…何も訊けませんでしたの…」
「ええ? キルホーマンでも訊けなかったなんて、何かトラブルがあったのかい?」
「トラブルではありませんよ。この街には、この街のやり方というものがあるのです」
「ふん。俺のスキルで、ギルドごと消し炭にでもしてやった方が話は早そうだ」
「ラフロイグさん、それは一理あるかもしれませんが、まだお待ちいただいた方がよさそうです。というのも、この街のギルドはどうやら、組合と呼ばれる総組織によって管理されているようだからです」
「組合…? 労働組合があるなんて、先進的じゃないか。オレなんてカフェの店主からパワハラの毎日だったのに…」
「いえ、ラガヴーリンさん、そうとも言えないのです。恐らく、『組合』という言葉自体が隠語になっているようです」
「隠語…ですの?」
「そうか。それはめでたい。いい具合にキナ臭い話になってきたな」
「ラフロイグさんは感づかれているみたいですね。そうです、つまり『組合』とは、組織犯罪集団カスクバレルの事を指していると考えて間違いないでしょう。この街では皆さん『組合』と呼んでいるのです」
「なんですって…。では、占い師に忠告を受けたにもかかわらず、カスクバレルと交渉をしなければなりませんの?」
「ええ、そういう事になるでしょうね」
「交渉となると、取引が必要だ。カスクバレルから一方的に情報だけをよこして終わる事はあるまい。何をさしだす? ゴブリンの丸焼きか?」
「な、なんだって!? またオレを火あぶりにするつもりかよ!」
「ほう。お前にもようやくゴブリンとしての自覚が生まれてきたらしい」
「おじさん、ラフロイグさん、今はケンカしないで…」
「メスガキは口を閉じていろ、と言いたいところだが、今の俺はお前なしでは移動ができない。合理的判断の帰結として、メスガキの言う事をきくとしよう。忘れるな、ゴブリンの為ではない」
「へん! お前を質屋に入れて、その金で情報を買おうと思っていたのによ! このクサレ人形!」
「キルホーマン、とりあえずどうしますの? このままでは、旅の行先を失ってしまいますわ」
「ええ。なにはともあれ、まずは情報が必要です。現時点でのミッションは、カスクバレルに話をつける方法を探し、占い師のギルドに情報提供の指示をしてもらい、『南のお告げ所』の場所についての情報を入手する事です」
「カスクバレルってこの街のボスみたいなものだろ? オレたちみたいなよそ者の話をきいてくれるのかな? 難易度高そうだよね」
「難易度は高いでしょうね。でも、やらざるを得ません。情報の集まる場所へ向かうとしましょう」
「情報の集まる場所…ですの?」
「ええ。酒場 です」
「ギルド長さん、用件は人それぞれです。申し上げなければ教えて頂けない理由でもあるのでしょうか?」
「…すまないが、『南のお告げ所』という場所について、我々は聞いた事がないし、何も知らない」
(キルホーマン、祠の占い師は『南のお告げ所』について聞いた事があるとおっしゃってましたわ。この男の言っている事、怪しくなくって?)
(ええ、何か隠しているのは間違いないでしょう。私のスキルで彼の発汗量を数値化していますが、さきほど数値が上昇しました)
「では、どのような取引を行えば教えて頂けますか?」
「言っただろう。このギルドでわかる事は何もない。わざわざ紹介状まで持参してもらったのに残念だが、お引き取り願いたい」
「…なるほど。承知いたしましたよ。お時間を頂戴してありがとうございました」
(よかったんですの? 絶対に何かを知っている風でしたわよ)
(現段階で彼から得られる情報はないでしょう。ギルドの受付のお嬢さんに少しお話をお伺いしましょうか)
「このギルドで情報を取引するルール…ですか…?」
「ええ、もしあれば、教えていただきたいのです。こうして遥々、紹介状まで手挟んで推参しましたが、ギルド長さんのお気に召さなかったようして…」
「そうでしたか…。何か特別なルールがある訳ではないのですが…この街のギルドはいずれも、共通の組合に加入しておりまして…一連托生ですので、外部からの方を容易に信頼して情報を提供する事は、まずないと思って頂いた方が良いと思います」
「組合…ですか。それは具体的に、どのような組合なのでしょうか?」
「…申し訳ございません、これ以上を申し上げる訳にはいきませんから…」
「…そうですか。いえ、ありがとうございます。一旦、引き上げさせていただくとしますよ」
「おっ、出てきた出てきた。アイラちゃんたちはちゃんと情報を得られたかな?」
「おい厚化粧、キルホーマン、首尾は上々だったのか」
「それが…何も訊けませんでしたの…」
「ええ? キルホーマンでも訊けなかったなんて、何かトラブルがあったのかい?」
「トラブルではありませんよ。この街には、この街のやり方というものがあるのです」
「ふん。俺のスキルで、ギルドごと消し炭にでもしてやった方が話は早そうだ」
「ラフロイグさん、それは一理あるかもしれませんが、まだお待ちいただいた方がよさそうです。というのも、この街のギルドはどうやら、組合と呼ばれる総組織によって管理されているようだからです」
「組合…? 労働組合があるなんて、先進的じゃないか。オレなんてカフェの店主からパワハラの毎日だったのに…」
「いえ、ラガヴーリンさん、そうとも言えないのです。恐らく、『組合』という言葉自体が隠語になっているようです」
「隠語…ですの?」
「そうか。それはめでたい。いい具合にキナ臭い話になってきたな」
「ラフロイグさんは感づかれているみたいですね。そうです、つまり『組合』とは、組織犯罪集団カスクバレルの事を指していると考えて間違いないでしょう。この街では皆さん『組合』と呼んでいるのです」
「なんですって…。では、占い師に忠告を受けたにもかかわらず、カスクバレルと交渉をしなければなりませんの?」
「ええ、そういう事になるでしょうね」
「交渉となると、取引が必要だ。カスクバレルから一方的に情報だけをよこして終わる事はあるまい。何をさしだす? ゴブリンの丸焼きか?」
「な、なんだって!? またオレを火あぶりにするつもりかよ!」
「ほう。お前にもようやくゴブリンとしての自覚が生まれてきたらしい」
「おじさん、ラフロイグさん、今はケンカしないで…」
「メスガキは口を閉じていろ、と言いたいところだが、今の俺はお前なしでは移動ができない。合理的判断の帰結として、メスガキの言う事をきくとしよう。忘れるな、ゴブリンの為ではない」
「へん! お前を質屋に入れて、その金で情報を買おうと思っていたのによ! このクサレ人形!」
「キルホーマン、とりあえずどうしますの? このままでは、旅の行先を失ってしまいますわ」
「ええ。なにはともあれ、まずは情報が必要です。現時点でのミッションは、カスクバレルに話をつける方法を探し、占い師のギルドに情報提供の指示をしてもらい、『南のお告げ所』の場所についての情報を入手する事です」
「カスクバレルってこの街のボスみたいなものだろ? オレたちみたいなよそ者の話をきいてくれるのかな? 難易度高そうだよね」
「難易度は高いでしょうね。でも、やらざるを得ません。情報の集まる場所へ向かうとしましょう」
「情報の集まる場所…ですの?」
「ええ。酒場 です」
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