令嬢様のおなーりー!

悠木矢彩

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公爵令嬢様は発明好き

令嬢様

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「おーほっほっほ!これで完成よ!!苦節1年!やっと出来上がったわ!」

「1年て別にながく…」

「お黙り!レイモンド!!」


ここは、屋敷の一室である。

「このアリシア・ムスタ・レイランドにかかれば、あなたはきっと眠くなーる君!なんてお手のものよ!」

ドヤ顔のお嬢様。

アリシア・ムスタ・レイランドは高らかに笑った。
レイランド公爵家令嬢の彼女。
髪は銀を紡いだようなサラサラの髪を無造作に束ねている。
眼鏡のガラスを隔てていてもわかる、アメジストのような綺麗な瞳。
本来、彼女は美しく、貴族の令嬢らしく蝶よ花よと育てられるはずが、幼少期より錬金術化学に興味をもち、日夜実験を繰り返している。

その実験は時に役立つが、時に人を巻き込み(主に犠牲者は従者のレイモンドである)噂が噂を呼び彼女のその外見は噂によって霞のようになり、外見を磨くどころか益々彼女は外見に対して興味をなくしていった。


「お嬢…なんですかそのネーミングセンス…」

従者であるレイモンドは言葉遣いこそなってないが、仕事は優秀にできる。
何より、アリシアを止められる唯一の人間でもあり、レイランド公爵や夫人より
「あの子が人として道を踏み外さないように見張ってくれ!!」
と頭を下げられた異例の人物でもある。

彼女と彼はいつも一緒でそれは幼少期より変わらない光景であった。


「友人のソナタのためよ!彼女眠れないんですって、でも睡眠薬はキツすぎて吐き出してしまうそうよ。安全安心体に影響の出ないもので作るって大変なんだから!」

後ろを振り向いてキッとレイモンドを睨む。
正直レイモンドからすれば、何も怖くないのだが、このお嬢様はイマイチわかっていない。

レイモンドは、はぁっとため息をついた。
「そうですか、それで?それは効くんですか?」

「ううん!わかんない!!だから…」

ニヤリと笑うアリシア。
察したレイモンド。

「ちょっと、俺は不眠ではありませんよ。自分で試してください!」

「ダメよ!数値データをとりたいもの!だからレイモンド…」

すっとレイモンドに近づく。
後ずさりするレイモンド…
眼鏡を外し、両手を組んでレイモンドを見上げる。

「…ねぇ、お願い…レイモンド」


「お嬢…」

何度この手を使われてきたのか。

レイモンドは観念したため息をはく。

「はぁ…わかりましたよ!ちゃんとってデータくださいね!」

がばっとレイモンドに抱きつくアリシア。

「ありがとう!!レイモンド!!」



結局彼は彼女に弱かった。


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