お飾りの侯爵夫人

悠木矢彩

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その後の私たちは

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「マレーネ様!今日の収穫はこれで以上です!」


元気よくエーミルが薬草を見せてくれます。


「まぁ!こんなにたくさん!」



「これを乾燥させるのですよね?」


「そうよ、そうすると不思議なことに少し甘みが出るの。あまり知られてない方法だけど。
これなら子供も飲みやすくなるし、もっともっと薬を普及させなきゃね」


「はい!僕沢山手伝います!いえ!手伝わせてください!」


「ふふ、有難う。頼もしいわ」


私はエーミルの頭を撫でました。
そうすると彼は照れたように目をきゅっと細めておりました…







あれから三年たちました。
私は無事に離縁を果たし、ノルトハイム家から完全に離れました。
兄が私の代理人となり、諸々の手続きをとりました。
法的に認められた代理人です。
私を貶めていた使用人たちは、離縁する前に紹介状なく解雇し、次の雇用先に行けないようなりました。
前ノルトハイム侯爵夫妻は心の病に侵されているとのことで療養所での治療を余儀なくされ、前侯爵の弟であるモーリス様がノルトハイム家を継ぐことになりました。



私は今でも、あの兄の屋敷に住んでいます。
兄から屋敷を買い取り、今では私の名義になりました。
王妃様からの要請でたまに王城に行くこともありますが、基本的には自分の屋敷で薬草学の研究に没頭しておりました。
たまに王城から薬学部の方が来られます。
私の知識を是非王家にと請われるのですが、私はそれを固辞し続けています。
王家にはすでに薬草に精通した人たちがいますので、私は市井に目を向けたいのです。

勿論兄から言われていた開発もするので忙しい毎日を送っています。




私は自分の名義で建てた治療院に向かいます。
そこには様々な患者います。その治療の中でも重症の患者の棟に入ります。



「お加減はいかがですか?」



私は寝台にいる彼に話しかけます。
彼は寝ているのか目をつぶっておりました。
彼は一言も発したりしなくなりました。
確かにあの時は薬を使いましたが、それが切れても反応がなくなったのです。
私が殺したも同然でした。
ブリュンヒルド様は、アクラム様の訃報をきいて数日後に自ら命を絶ったとお聞きしました。
多少の罪悪感を感じました。
命そのものを絶つことは私自身怖いのでできませんでしたが、彼は私を見ても反応する時間が少なくなっているように思います。



「今日はエーミルが沢山薬草を収穫してくれました。また届けますね」


あの時は彼が異常だと思っていましたが、状況が落ち着けば自分の精神状態も異常だったと思います。
私は彼から解放されたかったのでしょうか?
それとも昔の彼を取り戻したかったのでしょうか?




私の短くなった髪をそよ風が撫でていきます。
穏やかになった日常に感謝しつつ、私は治療院を出ました。



















end




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