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情報屋と対価
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兄から紹介された情報屋は、ナルサスという男性でした。どこにでもいそうな目立たない男性…
情報屋としては優秀な腕を持ち、相手に警戒心を抱かせない方だそうです。
そして、それ相応の対価の要る情報屋だと。
目立たない男性ではありますが、その所作は洗練された動きでした。
「今は、貴族様のお屋敷にいますからね。これくらいできないと忍び込めないんですよ。色々ね」
ニコッと張り付いた笑顔でした。
「して、お嬢様…いえ…ノルトハイム侯爵夫人。今日はどんな情報をお望みですか?」
カチャとソーサーの音が静かに鳴る。
私は緊張していました。
知りたいと思いながらも、やはり怖いのです。
「侯爵夫人?」
ナルサスさんは訝しむように見たと思ったら、合点がいったように一つ大きな息をはきました。
「ノルトハイム侯爵のことでしょうか?」
この人はなぜわかってしまうんでしょうか?
「いえ、わかったわけではありませんが、大体、夫人から頼まれることといえば、大方が旦那の浮気調査などですからねぇ。いえ、別に馬鹿にしてるわけではありません。財産分与などもありますから把握しておきたいというかたもいらっしゃいますが、奥様は違いますね?」
確信のように話すナルサスさんに思わずコクコクとうなづいてしまいました。
「私は…」
「はい」
「私は、彼のこと…アクラム様のことを何も知らずに婚姻関係を継続してきました。」
「そうなんですね」
「お屋敷では知った顔もいず独りぼっちで、”お飾りの侯爵夫人”と使用人たちに馬鹿にされ、でも旦那様は帰ってこないし、学生時代の恋人?みたいな人との噂は全然消えないし、むしろ先日、体の関係が発覚しまして、それが今でも継続されてるのか、他人の目から見たアクラム様を知りたいのです」
「他人の目?」
「そうです、私は昔自分がイメージしたの優しくて誠実な人というアクラム様しか知りませんでした。でも、実際は違うんじゃないかと、それを知りたいのです。」
「なるほどです、いいですね。実に面白い…いや失礼。あなたのその自我の芽生えのお手伝いをさせていただきましょう。私は何であれ真実しか集めてまいりません。もしかしたら目を背けたくなるような事実を持ってくるかもしれませんよ。それでもいいですか?」
私は知りたいのです。アクラム様のことを。
なので、決心はついてます。
「はい、私は知りたいです。あなたの情報は確かなものだと兄に伺いました。それを見込んでお願いしたいです。」
ナルサスはニッコリと先ほどと違う笑みを浮かべました。
「いいでしょう!契約をいたしましょう!してノルトハイム侯爵夫人…あなたの対価をいただきましょう。何を提示してくださいますか?」
私は決めていました。
今私の手の中にあるのは
一振りの短刀でした。
情報屋としては優秀な腕を持ち、相手に警戒心を抱かせない方だそうです。
そして、それ相応の対価の要る情報屋だと。
目立たない男性ではありますが、その所作は洗練された動きでした。
「今は、貴族様のお屋敷にいますからね。これくらいできないと忍び込めないんですよ。色々ね」
ニコッと張り付いた笑顔でした。
「して、お嬢様…いえ…ノルトハイム侯爵夫人。今日はどんな情報をお望みですか?」
カチャとソーサーの音が静かに鳴る。
私は緊張していました。
知りたいと思いながらも、やはり怖いのです。
「侯爵夫人?」
ナルサスさんは訝しむように見たと思ったら、合点がいったように一つ大きな息をはきました。
「ノルトハイム侯爵のことでしょうか?」
この人はなぜわかってしまうんでしょうか?
「いえ、わかったわけではありませんが、大体、夫人から頼まれることといえば、大方が旦那の浮気調査などですからねぇ。いえ、別に馬鹿にしてるわけではありません。財産分与などもありますから把握しておきたいというかたもいらっしゃいますが、奥様は違いますね?」
確信のように話すナルサスさんに思わずコクコクとうなづいてしまいました。
「私は…」
「はい」
「私は、彼のこと…アクラム様のことを何も知らずに婚姻関係を継続してきました。」
「そうなんですね」
「お屋敷では知った顔もいず独りぼっちで、”お飾りの侯爵夫人”と使用人たちに馬鹿にされ、でも旦那様は帰ってこないし、学生時代の恋人?みたいな人との噂は全然消えないし、むしろ先日、体の関係が発覚しまして、それが今でも継続されてるのか、他人の目から見たアクラム様を知りたいのです」
「他人の目?」
「そうです、私は昔自分がイメージしたの優しくて誠実な人というアクラム様しか知りませんでした。でも、実際は違うんじゃないかと、それを知りたいのです。」
「なるほどです、いいですね。実に面白い…いや失礼。あなたのその自我の芽生えのお手伝いをさせていただきましょう。私は何であれ真実しか集めてまいりません。もしかしたら目を背けたくなるような事実を持ってくるかもしれませんよ。それでもいいですか?」
私は知りたいのです。アクラム様のことを。
なので、決心はついてます。
「はい、私は知りたいです。あなたの情報は確かなものだと兄に伺いました。それを見込んでお願いしたいです。」
ナルサスはニッコリと先ほどと違う笑みを浮かべました。
「いいでしょう!契約をいたしましょう!してノルトハイム侯爵夫人…あなたの対価をいただきましょう。何を提示してくださいますか?」
私は決めていました。
今私の手の中にあるのは
一振りの短刀でした。
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