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別荘
しおりを挟む1ヵ月と半月が経ちました。
私は心穏やかに過ごしております。
小さな友人もできたのです。それはまたご紹介しますね。
庭を散策していたらある人物が追いかけてきました。
「お嬢様! またそんな格好をして!体を冷やしてはならないとあれほど申し上げましたのに」
私はメアリーの声を聞いて、少し笑ってしまいました。
「もうお嬢様ではないのよ、結婚だってしたんだから」
「人に心配をさせるなんてまだまだお嬢様で充分です」
ダメです、昔からの私を知っているこの人物には勝てないのです。
嬉しいことに兄の別荘の管理人が私の侍女だったメアリーとグルーム・オブ・ザ・チェンバーズの一人だったヨセフ夫妻だったのです。
懐かしさに抱きついたことは内緒にしてくださいね。
相変らず、 アクラム様からは何も連絡を頂いておりません。私などより"あの人''を優先できるチャンスだからかもしれません。
それでもアクラム様が私を心の片隅にでも置いてくださったなら...と無い期待をしてしまいます。
しかし、 いつ離縁されてもおかしくないのです。
この程、 兄に正直に話しました。
アクラム様には別に好いた女性がいると…私は自分からは離縁できないが、離縁された時には別荘の一つを貸してもらえないだろうかと....
「お前はそれで良いのか?」
兄は私の意図を探るような表情です。
「たとえ私は好かれていなくとも
アクラム様を愛しております。ただ、離縁されれば、どうしようもありませんもの...」
私がそう答えると兄は息を長く吐きながら こう言ったのです。
「離縁されるとは思えんが、私は働かないものを世話する程酔狂ではない」
「はい、お兄様」
「だからな お前働け」
離縁はされないとなぜ言えるのかわかりません。しかし、実はウォルフに手紙を書いたのです。侯爵家にあるわずかな私物は処分してほしいと。 返事は来てませんが、仕事はしてくれているでしょう。ウォルフは優秀ですから。
いつでも離縁されて良いように…
アクラム様が婚姻当時にくださった指輪だけはつけてきてしまいました。既婚者のマナーですから。
それ以上に彼と私の最後の繋りのようなものを私から断つことが出来ないでいました。
「わかりました。お兄様 働くといってもどのように?」
この国は王妃様のおかげか、女性が手に職を持つことを推奨され始めていました。
しかしそれは貴族の中にはあまり浸透しておりませんでしたが...。
兄は満面の笑顔でした。
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