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それでも浅ましい私は…
しおりを挟む私がどこかに行ったらアクラム様は心配してくれるでしょうか?
いいえ、 心配するはずがないでしょう。何を期待しているのでしょうか?
私のことを気にかけて下さっているならば、家を何日もあけたとしても使用人をつかうことだって出来ますもの。
期待してもそれは無駄というものでしょう。
私の心はいつまで淡い期待を抱くのでしょう。いっそうのこと、心が何も感じなくなれば良いのに...とさえ思ってしまいます。
「奥様、本日も旦那様はお戻りになりません。先に寝ているようにと仰せです。」
執事のウォルフがそう言います。
彼は昔からこの侯爵家に仕えています。そうですわ... 彼に確認をとれば良いでしょう。
「わかりました。 ところでウォルフ」
「何でございましょうか?」
「近々、 兄の別荘に行こうと思っているの。今日誘われたの。」
ウォルフがピクリと眉を動かしました。普段と違う動きに私は驚きました。
顔には出さなかったですが・・・。
「左様でございますか。そのことを旦那様は?」
「ご存知ではないと思うわ。今日の今日なので。貴方から伝えてもらえるかしら」
「...いえ、奥様からお伝えになった方が...。」
めずらしくウォルフが口ごもっています。 …彼の方が病気ではないでしょうか。
「いえ、 アクラム様が忙しいのは重々承知してるわ。 私から伝えるにしても伝える手段がないので、ウォルフ・・・お願いね」
何とも微妙な顔をしたウォルフをそのままにして部屋に戻ります。
誰も私のことなんて気にしてないでしょう。
最愛の人には最愛の人が別にいたのです。私なんかが居てもいなくても
何もかわらないでしょう。
ただ…ただ..。
ほんの少しだけ アクラム様が気にかけて下さったら... と
やはり浅ましい私は淡い期待を抱いてしまうのです。
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