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魔剣三代目の章
遭遇、挟撃
しおりを挟む「総員抜剣! 我等は既に挟撃に遭っている、敵を正面から突破しこの場を離脱せよ! ──私にッ!! 続けェッッ!!!」
クリフォードの声が地上から、一瞬で上空へと移動する。
全身を纏う銀の鎧から煌びやかな闘気が散る。凡そ超人的膂力を発揮する彼の力は、彼が祈りを捧げ祝福を王から受けた奇跡の一端である。
瞬きの間に腰の『名も無き魔剣』を抜き放った彼は空中で銀光を爆発させ、反作用だけではない推力を以てオーク達の混成群に突撃した。
ドッ!! と衝撃波を撒き散らしながら数体の──いずれも見上げる様な巨躯の──オークやオーガを肉塊へ変え、続く剣閃が荒れ狂う暴風の如く醜い半獣人達を蹴散らしていく。
宙を舞う血飛沫に混ざる棍棒や錆びた鉄棒。どこかで略奪したのであろう鉄鍋がクリフォードの視界を横切る。
「悪しき獣人どもめ、お前達オークが何故オーガと!」
【ブゴォオオッ!】
もし他種と組む事が出来るようになったのだとすれば、或いは。
そんな事を想像して問いかけるも、返って来たのは言語として認識出来ぬ獣染みた鳴き声。そして殺意をもって振り下ろされた鉈の一撃。
それをクリフォードは残像を描いて躱しながら振り抜いた逆袈裟の剣撃で鉈を弾き飛ばし、次いで掌底を打ち込んで首だけを宙に吹き飛ばす。
(くッ、土中を伝うこの震動……! このまま戦闘を継続する事は避けねばならない、既に数名の犠牲が出ている以上は撤退すべきだ……ここは私が殿を務めるしかない……ッ)
煌めく閃光。
加速の奇跡を新たに自らの脚部へ付与する事で圧倒的多数を相手に無双せしめるクリフォード。
騎士としての膂力に加え、王の祝福による鎧、そして彼が数ヵ月前に手にした魔剣がこの場で彼の生存力を跳ね上げさせていた。
どれだけ強靭な骨だろうと断ち切るだけの鋭さを帯び、刃毀れしない。彼の技量に『最適化されている』この魔剣は正しくクリフォードの愛剣と化している。
クリフォードの二倍以上ある体躯のオーガが三体並び重戦車さながらに体当たりを打つも、クリフォードはそれを真っ向から刀身で迎え撃ち。身を捻って放った一閃が総重量3トンに及ぶ肉の塊を上下に両断して吹き飛ばす。
とにかく派手さを求める理由は、彼に続いて切り込みつつ突破しようとする味方を鼓舞する事と敵を威圧せんとするが為であった。
【ブ、ブゴォッ……ッ】
【グゥブブッ……】
【……ブゴッブゴッ】
僅か十数秒程の間にオークとオーガ双方を数十体屠ったクリフォードの鬼神振りに、遂にオーク達が怯みだした。
群れの全体数はオークが二割ばかり多く偏っているだけだ。オーガさえ、己が止めれば味方を全員突破させる事は叶う。そこまで考えたクリフォードは剣を地面へ突き立てる。
「王都まで撤退せよ! 私が殿を務める!!」
「しかし隊長、この数は!」
「数は問題ではないのだ! 貴公も早く退け──!」
そう一言残して。
クリフォードは味方を背にしたまま魔剣を通して放出した魔力を爆発させ、土砂の津波を前方へ放った。
凄まじい地響きが辺り一帯を揺らす。一時的に敵の侵攻を断絶した彼はその中へ飛び込み斬りかかって行くのだった。
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