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片っ端から順番に引いても、相変わらず何の変化もありません。

そして、ついに残り赤と青の二本の紐だけになりました。


この二つの紐のどちらかが、正解なはずです。


赤にするのか、青にするのか、
この際、両方同時に引いてみましょう。

お願いします! どなたか気づいてください!

祈るような気持ちでフィオナは紐を引いた。


「……」


「お願いですっ」


だめ……でしたか。

落胆したフィオナは立派なソファーへとこしかける。

柔らかな感触に身体を預けて、このまま眠りにつき、全てなかったことにならないかと思い悩む。


ふとサイドテーブルに視線を移すと、ハンドタイプの呼び鈴が置いてあることに気づく。


「こちらを鳴らすのですね!」

さっそくベルを手に取り、軽く揺らす。


伯爵家の呼び鈴なのから、きっと綺麗な音色が響くのでしょうとわくわくしながら。


「ゴッ」


ん?ん? 

気のせいかしら?


チリリンという鈴の音が聞こえない。

代わりに何か詰まったような音が……?

フィオナは何度か呼び鈴を揺らした後に、ひっくり返して中を覗く。


って、本当に詰まっているではないですかー!

どういうことですか!

振り子が動かないように、綿がぎっしりと詰まっています。


どうやったらこんなにぎっしり詰まるのでしょう。

綿を取り出そうとするも、糊付けされていて難しい。


一生懸命取ろうとしても、取れるのはほんの少しだけ。

なんという地道な作業でしょう。


コツコツと作業するのは、嫌いではありません。

ですが、こんなペースでやっていたら日が暮れてしまいますっ。



一旦気持ちを落ち着けましょう。


フィオナはベルをサイドテーブルに戻して、洗面所へと向かった。



ふぅと気持ちを落ちつけて、視線を上げる。

フィオ姉様⁉︎    

って、自分の顔ではないですか。

鏡に映る自分の姿にフィオナは驚く。


ん?

心なしか金髪がくすんでいるような……

たった1日で変色するのですね?

安い染料はだめですね。

1ヶ月もつでしょうか……


ま、まぁ、きっと何とかなるでしょう


洗面所を出ようと勢いよく振り向いた拍子に、何かに手が当たる。


これは、呼び鈴ではないですか⁉︎


洗面所にも置いてあるなて、さすがは伯爵家。


鳴らす前に、詰め物がないか確認すべきでしょうか。


う~ん、なんだか少し嫌な予感がしますね。

とりあえず鳴らしてみましょう。


「くさっ!」


呼び鈴を持ち上げたフィオナは、漂ってくる香りに鼻をつまむ。

なんでしょう、この変な匂いは。

無理です無理です。



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