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第三部
体調不良
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✳︎✳︎✳︎
「またダーニャか、良くも悪くも強烈な印象を残していくなあの人は
まぁ、そのおかげで寂しさを感じる暇もないか
サラ、いいかい、あれを父上には会わせるな」
ある日の昼下がり、レナルドお兄様が商会に訪ねてきた
フェリクスのことはもはや「あれ」呼ばわりされていた
「だいたいサラは今の自分の立場が分かっているのかい?
昔から人の影響を受けやすい所があったから、自分の中の芯というか、意思というか、そういったものがはっきりしてないと危惧してたけど━」
「はっきりしてないとはどういうことですかお兄様」
「人の話を遮るものではないよ
いったいどうしてしまったんだいサラ
まるで別人じゃないか
仕事をしたいと熱く語るサラはどこに行ってしまったんだ
突然前世を思い出したとか、
中身は別世界の人間なんです
とか今度は言い出すのではないだろうね?」
「ふふふ、面白いことを言いますのね、お兄様」
「こら、真面目な話しだよ茶化すんじゃない」
「茶化しているのはお兄様ですわ」
「とにかくだ、私もこのままずるずると見逃すことはできないよ
君の名前は?」
「え?突然何ですのお兄様」
「いいから答えて」
「サラですわ」
「フルネームで!」
「サラ・ゴーデル…です…」
フルネームを名乗ることで、お兄様の言わんとしていることに気付かされた
「そう、君はただの“サラ”ではない
サラ・ゴーデルだ
私の言う意味が分かるね?
自分の身の振り方を考えろ
このままだと父上は邸の敷居をまたがせないとまで言っている」
「お父様が…」
今迄特にお父様から怒られたことはない
そのお父様がそこまで言うなんて…
「このままの状態を続けるつもりなら、わが家としても考えがあるよ
結婚しないのなら家に連れ戻す
どっぷり平民気分につかっているようだから、早急に一から厳しく教育しなおして嫁いでもらう
それが嫌なら決断しろ
家名に泥を塗ることだけは、次期当主としていくらお前でも許すことはできないよ
簡単なことだろう?分かるよね?サラ
私は最初から反対してたんだ
君の熱意が本物だと思ったから許したんだ
失望させないでくれ」
立ち上がり退室しようとしたレナルドは
思い出したと振り返る
「あぁそれと、彼には行き先ぐらいはつたえるように」
怪訝な顔をしてお兄様をみつめると
「ルーカスだよ。先日訪ねてきた
君と半年も連絡が取れないってね
あまり厳しいことを言いたくないが、君は彼の人生に横入りした自覚はあるか?」
あの時のことだ
「あ、あの時は━」
おもむろに立ち上がり反論しようとするも、ぐらりと身体が傾いて蹲る
「サラ!大丈夫かいすぐに医師を」
「だ、い、丈夫…」
「どうしたんだい?顔色が悪い」
「少し休…めば、大丈夫…お願い…お父様には言わないで…心配かけたくないの…」
「分かっ…た
本当に休めば大丈夫なんだね?回復しなければ医師を派遣するから報せるんだよいいね」
「はい、ごめん…なさい、お兄様、お見送りできそうにないので、失礼しま…す」
呼び鈴を慣らすとデボラが入室してきた
フェリクスの許可を得て時々デボラが通ってくれている
「サラお嬢様!」
床にうずくまっているのを見て驚きかけよってくる
「デボラ…ベッドまでお願い」
デボラに付き添われてベッドに横になると意識を手放した
メイドがいることに驚くレナルドにデボラは返答する
「レナルド様のおっしゃる ”あれ“ から
サラお嬢様のお世話を申しつかっています。 ”あれ“とは違い優秀なのでご心配なく」
「聞こえていたのか…」
苦笑するレナルドを
デボラは深々と腰を折って見送った
この頃
私は謎の体調不良に悩まされていた
身体のだるさ、めまい、立ちくらみ、
酷い時は立っていられない時もあった
そういうこともあって、デボラが来てくれることは本当にありがたかった
「またダーニャか、良くも悪くも強烈な印象を残していくなあの人は
まぁ、そのおかげで寂しさを感じる暇もないか
サラ、いいかい、あれを父上には会わせるな」
ある日の昼下がり、レナルドお兄様が商会に訪ねてきた
フェリクスのことはもはや「あれ」呼ばわりされていた
「だいたいサラは今の自分の立場が分かっているのかい?
昔から人の影響を受けやすい所があったから、自分の中の芯というか、意思というか、そういったものがはっきりしてないと危惧してたけど━」
「はっきりしてないとはどういうことですかお兄様」
「人の話を遮るものではないよ
いったいどうしてしまったんだいサラ
まるで別人じゃないか
仕事をしたいと熱く語るサラはどこに行ってしまったんだ
突然前世を思い出したとか、
中身は別世界の人間なんです
とか今度は言い出すのではないだろうね?」
「ふふふ、面白いことを言いますのね、お兄様」
「こら、真面目な話しだよ茶化すんじゃない」
「茶化しているのはお兄様ですわ」
「とにかくだ、私もこのままずるずると見逃すことはできないよ
君の名前は?」
「え?突然何ですのお兄様」
「いいから答えて」
「サラですわ」
「フルネームで!」
「サラ・ゴーデル…です…」
フルネームを名乗ることで、お兄様の言わんとしていることに気付かされた
「そう、君はただの“サラ”ではない
サラ・ゴーデルだ
私の言う意味が分かるね?
自分の身の振り方を考えろ
このままだと父上は邸の敷居をまたがせないとまで言っている」
「お父様が…」
今迄特にお父様から怒られたことはない
そのお父様がそこまで言うなんて…
「このままの状態を続けるつもりなら、わが家としても考えがあるよ
結婚しないのなら家に連れ戻す
どっぷり平民気分につかっているようだから、早急に一から厳しく教育しなおして嫁いでもらう
それが嫌なら決断しろ
家名に泥を塗ることだけは、次期当主としていくらお前でも許すことはできないよ
簡単なことだろう?分かるよね?サラ
私は最初から反対してたんだ
君の熱意が本物だと思ったから許したんだ
失望させないでくれ」
立ち上がり退室しようとしたレナルドは
思い出したと振り返る
「あぁそれと、彼には行き先ぐらいはつたえるように」
怪訝な顔をしてお兄様をみつめると
「ルーカスだよ。先日訪ねてきた
君と半年も連絡が取れないってね
あまり厳しいことを言いたくないが、君は彼の人生に横入りした自覚はあるか?」
あの時のことだ
「あ、あの時は━」
おもむろに立ち上がり反論しようとするも、ぐらりと身体が傾いて蹲る
「サラ!大丈夫かいすぐに医師を」
「だ、い、丈夫…」
「どうしたんだい?顔色が悪い」
「少し休…めば、大丈夫…お願い…お父様には言わないで…心配かけたくないの…」
「分かっ…た
本当に休めば大丈夫なんだね?回復しなければ医師を派遣するから報せるんだよいいね」
「はい、ごめん…なさい、お兄様、お見送りできそうにないので、失礼しま…す」
呼び鈴を慣らすとデボラが入室してきた
フェリクスの許可を得て時々デボラが通ってくれている
「サラお嬢様!」
床にうずくまっているのを見て驚きかけよってくる
「デボラ…ベッドまでお願い」
デボラに付き添われてベッドに横になると意識を手放した
メイドがいることに驚くレナルドにデボラは返答する
「レナルド様のおっしゃる ”あれ“ から
サラお嬢様のお世話を申しつかっています。 ”あれ“とは違い優秀なのでご心配なく」
「聞こえていたのか…」
苦笑するレナルドを
デボラは深々と腰を折って見送った
この頃
私は謎の体調不良に悩まされていた
身体のだるさ、めまい、立ちくらみ、
酷い時は立っていられない時もあった
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