18 / 59
第ニ部
帰宅
しおりを挟む
「ただいま~」
『カオリ手を洗ってね。』
「はーい。わっ」
誰もいないと思っていたのに、台所からエミリオが現れてカオリを抱き上げる。
「おかえり、二人とも。」
カオリを床に下ろすと、カオリは洗面所へと向かう。
エミリオは私を軽く抱きしめ額に口づけを落とす。
「リナ、お疲れ様」
『おかえりなさいエミリオ。早かったのね。』
「あぁ、今日はかおりの誕生日だし早めに仕事を終わらせたんだ。カオリのケーキは買えた?」
「うん。冷やしておかないと。」
私はケーキを冷蔵庫に仕舞う為に台所へ向かった。
「お父さん、ケーキ買ってもらったし、食べたの」
カオリが手を洗い戻ってきたようだ。ケーキをゆっくりと仕舞いながら、エミリオとカオリの会話に耳をすます。
「うん?もう食べたの?」
「違うの。お店でね、食べたの。」
「ハハ。そっかぁ。カオリはケーキが大好きだもんな。お母さんと食べたのかぁ。良かったなぁ」
「うん。お母さんと、おじさんと食べたの」
カオリは無邪気に今日の出来事を話しだす。エミリオは嬉しそうにカオリの話しを聞いていた。私は、背中に妙な汗がつたうのを感じていた。
「おじさん?」
「うん、えっとね、ルークお兄さんって言ってた。お母さんの知り合いだって」
「そっかぁ。お母さんの知り合いかぁ。ちゃんとご挨拶できたかな?」
「うん。」
「そっかぁ、カオリも大きくなったなぁ」
エミリオに褒められて頭を撫でられ喜ぶカオリ。
夕飯の支度をする為にエプロンをつけようと振り返ると、ちょうどエミリオと視線が合った。
私は何か尋ねられるのかと身構えていた。
「こっちにも知り合いがいたんだ?」
「え、あ、偶然学園の同級生にあったの」
名前以外に嘘はついていないけれど、私は普段通りに話せているかしら。
「そっかぁ。それは懐かしいなぁ」
エミリオとは学園が違うし、私があまり過去の話しをしないので、交友関係は知らない。過去の話をすると、必然的にルーカスのことに触れることになるので、どうしてもお互いに避けてしまう。
エミリオはまたカオリと話しを始めていた。
結局それ以上昼間のことについて触れられることはなかった。エミリオにルーカスの事を話したくはない。ルーカスの事は冷静に話せる自信がない。感情のコントロールができなくて、泣いてしまうかもしれない。
泣いていたらきっと、誤解すると思うから。
エミリオには感謝している。
カオリという宝物まで授けてくれた。
ルーカスへの想いとエミリオへの気持ちは同じようで同じじゃない。
どちらへの想いが強いとかではなくて、二人共、私にとっては大切な存在だから。
夕食後に三人でケーキを囲み、カオリの誕生日を祝った。
カオリは昼間はチョコレートケーキを食べていたので、フルーツが載せてある生クリームケーキを持ち帰った。
家族で一緒に味わうケーキは、いつもより甘い気がした。
きっと、何でもないこういうひと時が、幸せなのだろう。
私はとても恵まれている。
ルーカスは…
一緒に誕生日を祝ってくれる人がいるだろうか。
あの人は、ルーカスを大事にしてくれているだろうか。
私が考えてもどうしようもないのに…
昼間見た少し痩せたルーカスの顔が浮かび、気になって仕方なかった。
『カオリ手を洗ってね。』
「はーい。わっ」
誰もいないと思っていたのに、台所からエミリオが現れてカオリを抱き上げる。
「おかえり、二人とも。」
カオリを床に下ろすと、カオリは洗面所へと向かう。
エミリオは私を軽く抱きしめ額に口づけを落とす。
「リナ、お疲れ様」
『おかえりなさいエミリオ。早かったのね。』
「あぁ、今日はかおりの誕生日だし早めに仕事を終わらせたんだ。カオリのケーキは買えた?」
「うん。冷やしておかないと。」
私はケーキを冷蔵庫に仕舞う為に台所へ向かった。
「お父さん、ケーキ買ってもらったし、食べたの」
カオリが手を洗い戻ってきたようだ。ケーキをゆっくりと仕舞いながら、エミリオとカオリの会話に耳をすます。
「うん?もう食べたの?」
「違うの。お店でね、食べたの。」
「ハハ。そっかぁ。カオリはケーキが大好きだもんな。お母さんと食べたのかぁ。良かったなぁ」
「うん。お母さんと、おじさんと食べたの」
カオリは無邪気に今日の出来事を話しだす。エミリオは嬉しそうにカオリの話しを聞いていた。私は、背中に妙な汗がつたうのを感じていた。
「おじさん?」
「うん、えっとね、ルークお兄さんって言ってた。お母さんの知り合いだって」
「そっかぁ。お母さんの知り合いかぁ。ちゃんとご挨拶できたかな?」
「うん。」
「そっかぁ、カオリも大きくなったなぁ」
エミリオに褒められて頭を撫でられ喜ぶカオリ。
夕飯の支度をする為にエプロンをつけようと振り返ると、ちょうどエミリオと視線が合った。
私は何か尋ねられるのかと身構えていた。
「こっちにも知り合いがいたんだ?」
「え、あ、偶然学園の同級生にあったの」
名前以外に嘘はついていないけれど、私は普段通りに話せているかしら。
「そっかぁ。それは懐かしいなぁ」
エミリオとは学園が違うし、私があまり過去の話しをしないので、交友関係は知らない。過去の話をすると、必然的にルーカスのことに触れることになるので、どうしてもお互いに避けてしまう。
エミリオはまたカオリと話しを始めていた。
結局それ以上昼間のことについて触れられることはなかった。エミリオにルーカスの事を話したくはない。ルーカスの事は冷静に話せる自信がない。感情のコントロールができなくて、泣いてしまうかもしれない。
泣いていたらきっと、誤解すると思うから。
エミリオには感謝している。
カオリという宝物まで授けてくれた。
ルーカスへの想いとエミリオへの気持ちは同じようで同じじゃない。
どちらへの想いが強いとかではなくて、二人共、私にとっては大切な存在だから。
夕食後に三人でケーキを囲み、カオリの誕生日を祝った。
カオリは昼間はチョコレートケーキを食べていたので、フルーツが載せてある生クリームケーキを持ち帰った。
家族で一緒に味わうケーキは、いつもより甘い気がした。
きっと、何でもないこういうひと時が、幸せなのだろう。
私はとても恵まれている。
ルーカスは…
一緒に誕生日を祝ってくれる人がいるだろうか。
あの人は、ルーカスを大事にしてくれているだろうか。
私が考えてもどうしようもないのに…
昼間見た少し痩せたルーカスの顔が浮かび、気になって仕方なかった。
21
お気に入りに追加
234
あなたにおすすめの小説
夫の不貞現場を目撃してしまいました
秋月乃衣
恋愛
伯爵夫人ミレーユは、夫との間に子供が授からないまま、閨を共にしなくなって一年。
何故か夫から閨を拒否されてしまっているが、理由が分からない。
そんな時に夜会中の庭園で、夫と未亡人のマデリーンが、情事に耽っている場面を目撃してしまう。
なろう様でも掲載しております。
旦那様、離婚してくださいませ!
ましろ
恋愛
ローズが結婚して3年目の結婚記念日、旦那様が事故に遭い5年間の記憶を失ってしまったらしい。
まぁ、大変ですわね。でも利き手が無事でよかったわ!こちらにサインを。
離婚届?なぜ?!大慌てする旦那様。
今更何をいっているのかしら。そうね、記憶がないんだったわ。
夫婦関係は冷めきっていた。3歳年上のキリアンは婚約時代から無口で冷たかったが、結婚したら変わるはずと期待した。しかし、初夜に言われたのは「お前を抱くのは無理だ」の一言。理由を聞いても黙って部屋を出ていってしまった。
それでもいつかは打ち解けられると期待し、様々な努力をし続けたがまったく実を結ばなかった。
お義母様には跡継ぎはまだか、石女かと嫌味を言われ、社交会でも旦那様に冷たくされる可哀想な妻と面白可笑しく噂され蔑まれる日々。なぜ私はこんな扱いを受けなくてはいけないの?耐えに耐えて3年。やっと白い結婚が成立して離婚できる!と喜んでいたのに……
なんでもいいから旦那様、離婚してくださいませ!
王妃の手習い
桃井すもも
恋愛
オフィーリアは王太子の婚約者候補である。しかしそれは、国内貴族の勢力バランスを鑑みて、解消が前提の予定調和のものであった。
真の婚約者は既に内定している。
近い将来、オフィーリアは候補から外される。
❇妄想の産物につき史実と100%異なります。
❇知らない事は書けないをモットーに完結まで頑張ります。
❇妄想スイマーと共に遠泳下さる方にお楽しみ頂けますと泳ぎ甲斐があります。
【完結】夫もメイドも嘘ばかり
横居花琉
恋愛
真夜中に使用人の部屋から男女の睦み合うような声が聞こえていた。
サブリナはそのことを気に留めないようにしたが、ふと夫が浮気していたのではないかという疑念に駆られる。
そしてメイドから衝撃的なことを打ち明けられた。
夫のアランが無理矢理関係を迫ったというものだった。
比べないでください
わらびもち
恋愛
「ビクトリアはこうだった」
「ビクトリアならそんなことは言わない」
前の婚約者、ビクトリア様と比べて私のことを否定する王太子殿下。
もう、うんざりです。
そんなにビクトリア様がいいなら私と婚約解消なさってください――――……
帰らなければ良かった
jun
恋愛
ファルコン騎士団のシシリー・フォードが帰宅すると、婚約者で同じファルコン騎士団の副隊長のブライアン・ハワードが、ベッドで寝ていた…女と裸で。
傷付いたシシリーと傷付けたブライアン…
何故ブライアンは溺愛していたシシリーを裏切ったのか。
*性被害、レイプなどの言葉が出てきます。
気になる方はお避け下さい。
・8/1 長編に変更しました。
・8/16 本編完結しました。
私は既にフラれましたので。
椎茸
恋愛
子爵令嬢ルフェルニア・シラーは、国一番の美貌を持つ幼馴染の公爵令息ユリウス・ミネルウァへの想いを断ち切るため、告白をする。ルフェルニアは、予想どおりフラれると、元来の深く悩まない性格ゆえか、気持ちを切り替えて、仕事と婚活に邁進しようとする。一方、仕事一筋で自身の感情にも恋愛事情にも疎かったユリウスは、ずっと一緒に居てくれたルフェルニアに距離を置かれたことで、感情の蓋が外れてルフェルニアの言動に一喜一憂するように…?
※小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる