本当はあなたを愛してました

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第ニ部

帰宅

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「ただいま~」
『カオリ手を洗ってね。』

「はーい。わっ」


誰もいないと思っていたのに、台所からエミリオが現れてカオリを抱き上げる。

「おかえり、二人とも。」

カオリを床に下ろすと、カオリは洗面所へと向かう。
エミリオは私を軽く抱きしめ額に口づけを落とす。

「リナ、お疲れ様」

『おかえりなさいエミリオ。早かったのね。』

「あぁ、今日はかおりの誕生日だし早めに仕事を終わらせたんだ。カオリのケーキは買えた?」

「うん。冷やしておかないと。」

私はケーキを冷蔵庫に仕舞う為に台所へ向かった。
 
「お父さん、ケーキ買ってもらったし、食べたの」

カオリが手を洗い戻ってきたようだ。ケーキをゆっくりと仕舞いながら、エミリオとカオリの会話に耳をすます。

「うん?もう食べたの?」

「違うの。お店でね、食べたの。」

「ハハ。そっかぁ。カオリはケーキが大好きだもんな。お母さんと食べたのかぁ。良かったなぁ」

「うん。お母さんと、おじさんと食べたの」

カオリは無邪気に今日の出来事を話しだす。エミリオは嬉しそうにカオリの話しを聞いていた。私は、背中に妙な汗がつたうのを感じていた。

「おじさん?」

「うん、えっとね、ルークお兄さんって言ってた。お母さんの知り合いだって」


「そっかぁ。お母さんの知り合いかぁ。ちゃんとご挨拶できたかな?」

「うん。」

「そっかぁ、カオリも大きくなったなぁ」

エミリオに褒められて頭を撫でられ喜ぶカオリ。
夕飯の支度をする為にエプロンをつけようと振り返ると、ちょうどエミリオと視線が合った。

私は何か尋ねられるのかと身構えていた。

「こっちにも知り合いがいたんだ?」

「え、あ、偶然学園の同級生にあったの」

名前以外に嘘はついていないけれど、私は普段通りに話せているかしら。

「そっかぁ。それは懐かしいなぁ」

エミリオとは学園が違うし、私があまり過去の話しをしないので、交友関係は知らない。過去の話をすると、必然的にルーカスのことに触れることになるので、どうしてもお互いに避けてしまう。

エミリオはまたカオリと話しを始めていた。

結局それ以上昼間のことについて触れられることはなかった。エミリオにルーカスの事を話したくはない。ルーカスの事は冷静に話せる自信がない。感情のコントロールができなくて、泣いてしまうかもしれない。

泣いていたらきっと、誤解すると思うから。
エミリオには感謝している。
カオリという宝物まで授けてくれた。

ルーカスへの想いとエミリオへの気持ちは同じようで同じじゃない。

どちらへの想いが強いとかではなくて、二人共、私にとっては大切な存在だから。

夕食後に三人でケーキを囲み、カオリの誕生日を祝った。

カオリは昼間はチョコレートケーキを食べていたので、フルーツが載せてある生クリームケーキを持ち帰った。

家族で一緒に味わうケーキは、いつもより甘い気がした。

きっと、何でもないこういうひと時が、幸せなのだろう。

私はとても恵まれている。

ルーカスは…


一緒に誕生日を祝ってくれる人がいるだろうか。

あの人は、ルーカスを大事にしてくれているだろうか。

私が考えてもどうしようもないのに…

昼間見た少し痩せたルーカスの顔が浮かび、気になって仕方なかった。






















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