9 / 59
第一部
エミリオの告白
しおりを挟む
「上がって。」
「ここは、エミリオの家?」
私はエミリオに手を繋がれて、家に連れてこられていた。
「連れ込むようで気が引けるけど、リナをほっとけなくて。お茶ぐらいしかないけど、そこに座ってて」
「お邪魔……します」
もう、何も考えられずに、言われるがままに倒れ込むように座る。
エミリオは、温かい紅茶をだしてくれた。
「どうぞ、熱いから気をつけて」
「━━ありがとう、いただきます」
コクンと頷き、紅茶を口に含む。
ほんの少しだけ、生き返った気がした。
「リナ、何かあった?
俺には話せない?」
エミリオは優しい。
本当は誰かに聞いて欲しい。
でも、それは単なる甘えに過ぎない。
「リナが言いたくないんだったら、もう聞かない。でも、落ち着くまでここにいて。本当に…死にそうな顔をしてるから。心配だから」
「どうしてそんなに優しいの? 私は、エミリオの思っているような人間じゃない!」
もう限界だった。胸の内に一人で抱え込むのも、つらくて、誰かに聞いてほしかった。ただの自分勝手な願望なのは分かってたけど…
一度口に出すと、後から後から気持ちが溢れ出して、もう止めることができなかった。
いつの間にか、エミリオに全てを打ち明けていた。
ルーカスと付き合っていたこと、
今日ルーカスが婚約したこと、
どうしようもなく辛い気持ちを……。
エミリオは、私が話し終えるまで、ただ黙って聞いてくれた。
時々 「そっか」
「つらかったね」と、慰めの言葉をかけてくれながら。
その一言を聞くと、自分でも驚くほど気持ちが救われた。
あぁ、私は、こんな風につらかったね、大変だったね、と、誰かに言ってほしかったんだ。
どうしようもなく孤独で寂しかったんだ。
エミリオは、私の話が一区切りしたのを見計らうと、真摯な姿勢で話し始める。
「リナ…ごめん‼︎」
エミリオは、私に軽く頭を下げる。
「エミリオ、何を謝っているの?」
「俺、ほんとは、ルーカスさんとリナが、付き合っていることを知ってたんだ。」
「え……?」
衝撃な告白に思わず絶句する。
「俺、リナのことが気になっていて、何度か食事に誘って、それで…
リナが、俺に気がないことは分かってたよ。あぁ、これは脈がないなぁ、って思っててさ。
でも、なかなか諦められなくて。
そんな時に、ルーカスさんに声をかけられたんだ。てっきり仕事の話かと思ってたら
違って。
あんなに真剣なルーカスさんを初めて見たよ。だから、驚いた。
ルーカスさん…
リナの事をどう思ってるのか、と、俺にしつこく尋ねてきたんだ。
いくらルーカスさんでも、プライベートな事を話す義理はないと思って。
そんなこと、興味本位に尋ねるなんて失礼だろって言い返したんだ。
でも、違ってて……。
ルーカスさん、なんか、すごく悩んでた。
自分は、どうしてもリナとこのまま付き合うことはできないって。
俺はなんだよそれって思ってさ。
俺の事も調べたとか言うから……なんか、怖いなと思って、立ち去ろうとしたんだけど。
リナのことを本気で大切にしてくれるなら、どうか、リナを支えてくれないかって頭を下げたんだ。
ビックリしてさ、何度も理由を聞いたんだけど、答えられないって。
俺の気持ちよりも、そういうことはリナの気持ちも大事だろって言ったんだけど。
リナを大切にして欲しいの一点張りでさ、話にならなくて。
でも、俺もリナのこと諦められなかったし、そんなこと、ルーカスさんに頼まれなくても大事にする!って突っぱねたんだ。
そしたらルーカスさん…
あの綺麗なルーカスさんの顔が、歪んでた。
とても、苦しそうだった……。
この事は、リナには絶対に言わないでくれって
口止めされていたんだ。
リナ…、
リナの中には、まだルーカスさんへの気持ちが残ってるんだろ?
ルーカスさんとリナの間に、何があったのか知らない。
でも、
俺は、こんなだけど、
もしも、もしも、少しでも俺のこと気になってくれるなら、
うちへ来ないか?」
「え?」
衝撃的な告白に、頭が混乱していた。
言われた意味が分からず、自分の気持ちなど考えられずに的外れなことを言っていた。
「私…契約が…終身雇用で…」
自分でも、何を口走っているのかと驚いたほど。
「あぁ、違約金か。
それは、俺がなんとかする。
リナも、このままあそこにいるのはつらいんじゃないか?」
「私…
エミリオの所で雇ってもらえるの?」
エミリオは真っ赤になりながら言葉を続ける
「あぁ、言葉が足りなかったよな。そうじゃなくてっ、
リナ、好きだ! その、うちへ来ないかって言うのは、一緒になろう。
結婚しよう、リナ
ダメ…かな
少しづつでも、リナが俺のこと好きになってくれるよう努力する。無理してルーカスさんのこと忘れなくてもいい。だから…
リナ?」
泣いてはだめ
止まって、お願い止まって、
と何度も唱えるのに身体は言う事を聞いてはけれない。
後から後から涙が溢れてきて、
自分ではどうしようもなくて、
心の中がぐちゃぐちゃだった。
エミリオはそんな私を見てオロオロしていた。
ぎこちなく私を抱きしめてくれて、
そっと優しく背中を撫でてくれる。
私はエミリオの胸に顔を埋めて、子供のように泣きじゃくった。
私はいったい今までルーカスの何を見てきたのだろう?
エミリオから聞いた内容によれば、ルーカスは
何か理由があって別れを決心したみたいだ。
浮気が原因じゃない
私が原因じゃない
そのことが嬉しいのか、悲しいのかも分からない
ただ、ルーカスは私との別れを選んだ
私の気持ちなど一切聞いてくれずに
その事実が重荷のようにのしかかる
もう…疲れた…
苦しい…寂しい…助けて
エミリオの優しさに甘えて、
エミリオにしがみつく
エミリオはこんな私を受け入れてくれる
この苦しみからもう逃れたい
エミリオの優しさが心地良くて、
ずっとこのままいたくて、私は━━。
そうして、そのまま私は、
エミリオと一緒に
朝まで過ごしていた。
」
「ここは、エミリオの家?」
私はエミリオに手を繋がれて、家に連れてこられていた。
「連れ込むようで気が引けるけど、リナをほっとけなくて。お茶ぐらいしかないけど、そこに座ってて」
「お邪魔……します」
もう、何も考えられずに、言われるがままに倒れ込むように座る。
エミリオは、温かい紅茶をだしてくれた。
「どうぞ、熱いから気をつけて」
「━━ありがとう、いただきます」
コクンと頷き、紅茶を口に含む。
ほんの少しだけ、生き返った気がした。
「リナ、何かあった?
俺には話せない?」
エミリオは優しい。
本当は誰かに聞いて欲しい。
でも、それは単なる甘えに過ぎない。
「リナが言いたくないんだったら、もう聞かない。でも、落ち着くまでここにいて。本当に…死にそうな顔をしてるから。心配だから」
「どうしてそんなに優しいの? 私は、エミリオの思っているような人間じゃない!」
もう限界だった。胸の内に一人で抱え込むのも、つらくて、誰かに聞いてほしかった。ただの自分勝手な願望なのは分かってたけど…
一度口に出すと、後から後から気持ちが溢れ出して、もう止めることができなかった。
いつの間にか、エミリオに全てを打ち明けていた。
ルーカスと付き合っていたこと、
今日ルーカスが婚約したこと、
どうしようもなく辛い気持ちを……。
エミリオは、私が話し終えるまで、ただ黙って聞いてくれた。
時々 「そっか」
「つらかったね」と、慰めの言葉をかけてくれながら。
その一言を聞くと、自分でも驚くほど気持ちが救われた。
あぁ、私は、こんな風につらかったね、大変だったね、と、誰かに言ってほしかったんだ。
どうしようもなく孤独で寂しかったんだ。
エミリオは、私の話が一区切りしたのを見計らうと、真摯な姿勢で話し始める。
「リナ…ごめん‼︎」
エミリオは、私に軽く頭を下げる。
「エミリオ、何を謝っているの?」
「俺、ほんとは、ルーカスさんとリナが、付き合っていることを知ってたんだ。」
「え……?」
衝撃な告白に思わず絶句する。
「俺、リナのことが気になっていて、何度か食事に誘って、それで…
リナが、俺に気がないことは分かってたよ。あぁ、これは脈がないなぁ、って思っててさ。
でも、なかなか諦められなくて。
そんな時に、ルーカスさんに声をかけられたんだ。てっきり仕事の話かと思ってたら
違って。
あんなに真剣なルーカスさんを初めて見たよ。だから、驚いた。
ルーカスさん…
リナの事をどう思ってるのか、と、俺にしつこく尋ねてきたんだ。
いくらルーカスさんでも、プライベートな事を話す義理はないと思って。
そんなこと、興味本位に尋ねるなんて失礼だろって言い返したんだ。
でも、違ってて……。
ルーカスさん、なんか、すごく悩んでた。
自分は、どうしてもリナとこのまま付き合うことはできないって。
俺はなんだよそれって思ってさ。
俺の事も調べたとか言うから……なんか、怖いなと思って、立ち去ろうとしたんだけど。
リナのことを本気で大切にしてくれるなら、どうか、リナを支えてくれないかって頭を下げたんだ。
ビックリしてさ、何度も理由を聞いたんだけど、答えられないって。
俺の気持ちよりも、そういうことはリナの気持ちも大事だろって言ったんだけど。
リナを大切にして欲しいの一点張りでさ、話にならなくて。
でも、俺もリナのこと諦められなかったし、そんなこと、ルーカスさんに頼まれなくても大事にする!って突っぱねたんだ。
そしたらルーカスさん…
あの綺麗なルーカスさんの顔が、歪んでた。
とても、苦しそうだった……。
この事は、リナには絶対に言わないでくれって
口止めされていたんだ。
リナ…、
リナの中には、まだルーカスさんへの気持ちが残ってるんだろ?
ルーカスさんとリナの間に、何があったのか知らない。
でも、
俺は、こんなだけど、
もしも、もしも、少しでも俺のこと気になってくれるなら、
うちへ来ないか?」
「え?」
衝撃的な告白に、頭が混乱していた。
言われた意味が分からず、自分の気持ちなど考えられずに的外れなことを言っていた。
「私…契約が…終身雇用で…」
自分でも、何を口走っているのかと驚いたほど。
「あぁ、違約金か。
それは、俺がなんとかする。
リナも、このままあそこにいるのはつらいんじゃないか?」
「私…
エミリオの所で雇ってもらえるの?」
エミリオは真っ赤になりながら言葉を続ける
「あぁ、言葉が足りなかったよな。そうじゃなくてっ、
リナ、好きだ! その、うちへ来ないかって言うのは、一緒になろう。
結婚しよう、リナ
ダメ…かな
少しづつでも、リナが俺のこと好きになってくれるよう努力する。無理してルーカスさんのこと忘れなくてもいい。だから…
リナ?」
泣いてはだめ
止まって、お願い止まって、
と何度も唱えるのに身体は言う事を聞いてはけれない。
後から後から涙が溢れてきて、
自分ではどうしようもなくて、
心の中がぐちゃぐちゃだった。
エミリオはそんな私を見てオロオロしていた。
ぎこちなく私を抱きしめてくれて、
そっと優しく背中を撫でてくれる。
私はエミリオの胸に顔を埋めて、子供のように泣きじゃくった。
私はいったい今までルーカスの何を見てきたのだろう?
エミリオから聞いた内容によれば、ルーカスは
何か理由があって別れを決心したみたいだ。
浮気が原因じゃない
私が原因じゃない
そのことが嬉しいのか、悲しいのかも分からない
ただ、ルーカスは私との別れを選んだ
私の気持ちなど一切聞いてくれずに
その事実が重荷のようにのしかかる
もう…疲れた…
苦しい…寂しい…助けて
エミリオの優しさに甘えて、
エミリオにしがみつく
エミリオはこんな私を受け入れてくれる
この苦しみからもう逃れたい
エミリオの優しさが心地良くて、
ずっとこのままいたくて、私は━━。
そうして、そのまま私は、
エミリオと一緒に
朝まで過ごしていた。
」
0
お気に入りに追加
234
あなたにおすすめの小説
夫の不貞現場を目撃してしまいました
秋月乃衣
恋愛
伯爵夫人ミレーユは、夫との間に子供が授からないまま、閨を共にしなくなって一年。
何故か夫から閨を拒否されてしまっているが、理由が分からない。
そんな時に夜会中の庭園で、夫と未亡人のマデリーンが、情事に耽っている場面を目撃してしまう。
なろう様でも掲載しております。
王妃の手習い
桃井すもも
恋愛
オフィーリアは王太子の婚約者候補である。しかしそれは、国内貴族の勢力バランスを鑑みて、解消が前提の予定調和のものであった。
真の婚約者は既に内定している。
近い将来、オフィーリアは候補から外される。
❇妄想の産物につき史実と100%異なります。
❇知らない事は書けないをモットーに完結まで頑張ります。
❇妄想スイマーと共に遠泳下さる方にお楽しみ頂けますと泳ぎ甲斐があります。
【完結】夫もメイドも嘘ばかり
横居花琉
恋愛
真夜中に使用人の部屋から男女の睦み合うような声が聞こえていた。
サブリナはそのことを気に留めないようにしたが、ふと夫が浮気していたのではないかという疑念に駆られる。
そしてメイドから衝撃的なことを打ち明けられた。
夫のアランが無理矢理関係を迫ったというものだった。
比べないでください
わらびもち
恋愛
「ビクトリアはこうだった」
「ビクトリアならそんなことは言わない」
前の婚約者、ビクトリア様と比べて私のことを否定する王太子殿下。
もう、うんざりです。
そんなにビクトリア様がいいなら私と婚約解消なさってください――――……
帰らなければ良かった
jun
恋愛
ファルコン騎士団のシシリー・フォードが帰宅すると、婚約者で同じファルコン騎士団の副隊長のブライアン・ハワードが、ベッドで寝ていた…女と裸で。
傷付いたシシリーと傷付けたブライアン…
何故ブライアンは溺愛していたシシリーを裏切ったのか。
*性被害、レイプなどの言葉が出てきます。
気になる方はお避け下さい。
・8/1 長編に変更しました。
・8/16 本編完結しました。
浮気中の婚約者が私には塩対応なので塩対応返しすることにした
今川幸乃
恋愛
スターリッジ王国の貴族学園に通うリアナにはクリフというスポーツ万能の婚約者がいた。
リアナはクリフのことが好きで彼のために料理を作ったり勉強を教えたりと様々な親切をするが、クリフは当然の顔をしているだけで、まともに感謝もしない。
しかも彼はエルマという他の女子と仲良くしている。
もやもやが募るもののリアナはその気持ちをどうしていいか分からなかった。
そんな時、クリフが放課後もエルマとこっそり二人で会っていたことが分かる。
それを知ったリアナはこれまでクリフが自分にしていたように塩対応しようと決意した。
少しの間クリフはリアナと楽しく過ごそうとするが、やがて試験や宿題など様々な問題が起こる。
そこでようやくクリフは自分がいかにリアナに助けられていたかを実感するが、その時にはすでに遅かった。
※4/15日分の更新は抜けていた8話目「浮気」の更新にします。話の流れに差し障りが出てしまい申し訳ありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる