本当はあなたを愛してました

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第一部

エミリオの告白

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「上がって。」

「ここは、エミリオの家?」

私はエミリオに手を繋がれて、家に連れてこられていた。


「連れ込むようで気が引けるけど、リナをほっとけなくて。お茶ぐらいしかないけど、そこに座ってて」

「お邪魔……します」

もう、何も考えられずに、言われるがままに倒れ込むように座る。


エミリオは、温かい紅茶をだしてくれた。

「どうぞ、熱いから気をつけて」

「━━ありがとう、いただきます」

コクンと頷き、紅茶を口に含む。
ほんの少しだけ、生き返った気がした。

「リナ、何かあった?
俺には話せない?」


エミリオは優しい。
本当は誰かに聞いて欲しい。
でも、それは単なる甘えに過ぎない。


「リナが言いたくないんだったら、もう聞かない。でも、落ち着くまでここにいて。本当に…死にそうな顔をしてるから。心配だから」

「どうしてそんなに優しいの? 私は、エミリオの思っているような人間じゃない!」


もう限界だった。胸の内に一人で抱え込むのも、つらくて、誰かに聞いてほしかった。ただの自分勝手な願望なのは分かってたけど…

一度口に出すと、後から後から気持ちが溢れ出して、もう止めることができなかった。

いつの間にか、エミリオに全てを打ち明けていた。

ルーカスと付き合っていたこと、

今日ルーカスが婚約したこと、

どうしようもなく辛い気持ちを……。


エミリオは、私が話し終えるまで、ただ黙って聞いてくれた。

時々 「そっか」
「つらかったね」と、慰めの言葉をかけてくれながら。

その一言を聞くと、自分でも驚くほど気持ちが救われた。

あぁ、私は、こんな風につらかったね、大変だったね、と、誰かに言ってほしかったんだ。

どうしようもなく孤独で寂しかったんだ。

エミリオは、私の話が一区切りしたのを見計らうと、真摯な姿勢で話し始める。



「リナ…ごめん‼︎」


エミリオは、私に軽く頭を下げる。

「エミリオ、何を謝っているの?」


「俺、ほんとは、ルーカスさんとリナが、付き合っていることを知ってたんだ。」


「え……?」

衝撃な告白に思わず絶句する。


「俺、リナのことが気になっていて、何度か食事に誘って、それで…

リナが、俺に気がないことは分かってたよ。あぁ、これは脈がないなぁ、って思っててさ。

でも、なかなか諦められなくて。

そんな時に、ルーカスさんに声をかけられたんだ。てっきり仕事の話かと思ってたら
違って。

あんなに真剣なルーカスさんを初めて見たよ。だから、驚いた。

ルーカスさん…
リナの事をどう思ってるのか、と、俺にしつこく尋ねてきたんだ。

いくらルーカスさんでも、プライベートな事を話す義理はないと思って。

そんなこと、興味本位に尋ねるなんて失礼だろって言い返したんだ。

でも、違ってて……。

ルーカスさん、なんか、すごく悩んでた。

自分は、どうしてもリナとこのまま付き合うことはできないって。

俺はなんだよそれって思ってさ。


俺の事も調べたとか言うから……なんか、怖いなと思って、立ち去ろうとしたんだけど。

リナのことを本気で大切にしてくれるなら、どうか、リナを支えてくれないかって頭を下げたんだ。

ビックリしてさ、何度も理由を聞いたんだけど、答えられないって。

俺の気持ちよりも、そういうことはリナの気持ちも大事だろって言ったんだけど。

リナを大切にして欲しいの一点張りでさ、話にならなくて。

でも、俺もリナのこと諦められなかったし、そんなこと、ルーカスさんに頼まれなくても大事にする!って突っぱねたんだ。



そしたらルーカスさん…

あの綺麗なルーカスさんの顔が、歪んでた。

とても、苦しそうだった……。

この事は、リナには絶対に言わないでくれって
口止めされていたんだ。


リナ…、
リナの中には、まだルーカスさんへの気持ちが残ってるんだろ?

ルーカスさんとリナの間に、何があったのか知らない。

でも、
俺は、こんなだけど、
もしも、もしも、少しでも俺のこと気になってくれるなら、

うちへ来ないか?」


「え?」

衝撃的な告白に、頭が混乱していた。

言われた意味が分からず、自分の気持ちなど考えられずに的外れなことを言っていた。

「私…契約が…終身雇用で…」

自分でも、何を口走っているのかと驚いたほど。

「あぁ、違約金か。
それは、俺がなんとかする。
リナも、このままあそこにいるのはつらいんじゃないか?」

「私…
エミリオの所で雇ってもらえるの?」

エミリオは真っ赤になりながら言葉を続ける

「あぁ、言葉が足りなかったよな。そうじゃなくてっ、

リナ、好きだ! その、うちへ来ないかって言うのは、一緒になろう。

結婚しよう、リナ

ダメ…かな

少しづつでも、リナが俺のこと好きになってくれるよう努力する。無理してルーカスさんのこと忘れなくてもいい。だから…
リナ?」


泣いてはだめ
止まって、お願い止まって、
と何度も唱えるのに身体は言う事を聞いてはけれない。
後から後から涙が溢れてきて、
自分ではどうしようもなくて、
心の中がぐちゃぐちゃだった。

エミリオはそんな私を見てオロオロしていた。

ぎこちなく私を抱きしめてくれて、
そっと優しく背中を撫でてくれる。

私はエミリオの胸に顔を埋めて、子供のように泣きじゃくった。

私はいったい今までルーカスの何を見てきたのだろう?

エミリオから聞いた内容によれば、ルーカスは
何か理由があって別れを決心したみたいだ。

浮気が原因じゃない

私が原因じゃない

そのことが嬉しいのか、悲しいのかも分からない
ただ、ルーカスは私との別れを選んだ

私の気持ちなど一切聞いてくれずに

その事実が重荷のようにのしかかる

もう…疲れた…


苦しい…寂しい…助けて

エミリオの優しさに甘えて、

エミリオにしがみつく


エミリオはこんな私を受け入れてくれる

この苦しみからもう逃れたい

エミリオの優しさが心地良くて、

ずっとこのままいたくて、私は━━。

そうして、そのまま私は、

エミリオと一緒に


朝まで過ごしていた。






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