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第8話
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とある電器屋にて。
「いらっしゃい!ただ今、当店で福引きやってまーす!」
僕は真っ赤な法被に身を包み、メガホン片手に叫んでいた。
僕の隣には、安っぽい薄汚れた猫の着ぐるみが「抽選会開催中!」というプラカードを掲げて立っている。
こいつの名は、モバにゃん。
正式名称モバイルにゃんこ。
この電器屋のゆるキャラらしいが、クソダサい。
「暑い……」
と、着ぐるみの中から籠もった声がする。
「ちょっと、ルシフ……じゃなくて、モバにゃんは喋っちゃダメなんですよ」
「暑いにゃん……」
「語尾を猫っぽくしてもダメです」
どうして僕らが電器屋でバイトなんてしているのかというと、生活資金が足りないから、というのもあるのだが、それよりもっと大きな理由があった。
魔法軍の第三部隊がこの電器屋の向かいにある格安ホテルに潜伏しているらしいという情報が入ったのだ。
それで、僕らは電器屋で張り込み、第二部隊は近くのカフェで待機という計画になったわけだ。
幸い、僕らのバイトしてる姿を店長が見張っているとかいうこともないので、適当にバイトしながら、じっくりホテルの様子を伺うことができた。
「第三部隊に動きは?」
「ないですね。今のところホテルに出入りする人もいませんし……。というか、モバにゃんは黙っててください」
「チッ。なんで俺がこんな格好しなきゃいけないんだ……にゃん」
「いや、だから語尾を猫っぽくしてもダメですから。舌打ちしてる時点で可愛くないですし」
電器屋の前を通りかかった小さな女の子がモバにゃんを見るなり大声で泣きだした。
「ほら、子供が怯えてるじゃないですか。もっと可愛く振る舞ってください」
「可愛くって言われてもな……」
そんなことを言っていると、今度は数人の男の子が足を止めて、
「だっせー着ぐるみ!」
とゲラゲラ笑っている。
「あ?調子に乗ってると泣かすぞ」
とモバにゃんは可愛いとは正反対の台詞を吐き捨てた。
「やれるもんならやってみろよ!」
男の子がベーっと舌を出す。
そして寄ってたかってモバにゃんを蹴っ飛ばした。
子供を本気でボコボコにしてバイトをクビになる訳にもいかないので、ルシフは「やめろ!」とか情けない声で言いながらされるがままに蹴っ飛ばされていた。
ルシフがちびっこに虐められているのが面白かったので、僕は敢えて止めに入ることはしなかった。
ルシフが子供と戯れているのを横目に見ながらホテルを観察していると、携帯にシェムから
「今、ホテルの方に第三部隊の隊員らしき女が歩いてる」
という連絡が入ってきた。僕はゴクリと唾を呑んで、ホテルの入口をじっと見つめた。
1人の少女が建物の中に入っていくのが見えた。
「あっ!ルシフ!!ホテルの中に人が!」
「追え!!」
ルシフが子供に絡まれたまま叫ぶ。
僕は法被を脱ぎ捨ててホテルの方へと走り出した。
「いらっしゃい!ただ今、当店で福引きやってまーす!」
僕は真っ赤な法被に身を包み、メガホン片手に叫んでいた。
僕の隣には、安っぽい薄汚れた猫の着ぐるみが「抽選会開催中!」というプラカードを掲げて立っている。
こいつの名は、モバにゃん。
正式名称モバイルにゃんこ。
この電器屋のゆるキャラらしいが、クソダサい。
「暑い……」
と、着ぐるみの中から籠もった声がする。
「ちょっと、ルシフ……じゃなくて、モバにゃんは喋っちゃダメなんですよ」
「暑いにゃん……」
「語尾を猫っぽくしてもダメです」
どうして僕らが電器屋でバイトなんてしているのかというと、生活資金が足りないから、というのもあるのだが、それよりもっと大きな理由があった。
魔法軍の第三部隊がこの電器屋の向かいにある格安ホテルに潜伏しているらしいという情報が入ったのだ。
それで、僕らは電器屋で張り込み、第二部隊は近くのカフェで待機という計画になったわけだ。
幸い、僕らのバイトしてる姿を店長が見張っているとかいうこともないので、適当にバイトしながら、じっくりホテルの様子を伺うことができた。
「第三部隊に動きは?」
「ないですね。今のところホテルに出入りする人もいませんし……。というか、モバにゃんは黙っててください」
「チッ。なんで俺がこんな格好しなきゃいけないんだ……にゃん」
「いや、だから語尾を猫っぽくしてもダメですから。舌打ちしてる時点で可愛くないですし」
電器屋の前を通りかかった小さな女の子がモバにゃんを見るなり大声で泣きだした。
「ほら、子供が怯えてるじゃないですか。もっと可愛く振る舞ってください」
「可愛くって言われてもな……」
そんなことを言っていると、今度は数人の男の子が足を止めて、
「だっせー着ぐるみ!」
とゲラゲラ笑っている。
「あ?調子に乗ってると泣かすぞ」
とモバにゃんは可愛いとは正反対の台詞を吐き捨てた。
「やれるもんならやってみろよ!」
男の子がベーっと舌を出す。
そして寄ってたかってモバにゃんを蹴っ飛ばした。
子供を本気でボコボコにしてバイトをクビになる訳にもいかないので、ルシフは「やめろ!」とか情けない声で言いながらされるがままに蹴っ飛ばされていた。
ルシフがちびっこに虐められているのが面白かったので、僕は敢えて止めに入ることはしなかった。
ルシフが子供と戯れているのを横目に見ながらホテルを観察していると、携帯にシェムから
「今、ホテルの方に第三部隊の隊員らしき女が歩いてる」
という連絡が入ってきた。僕はゴクリと唾を呑んで、ホテルの入口をじっと見つめた。
1人の少女が建物の中に入っていくのが見えた。
「あっ!ルシフ!!ホテルの中に人が!」
「追え!!」
ルシフが子供に絡まれたまま叫ぶ。
僕は法被を脱ぎ捨ててホテルの方へと走り出した。
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