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第2話
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朝、僕はいつもなら日の出の時刻に目を覚ます。だけど、今朝は少し寝坊してしまった。
これは間違いなく、昨日、戦わされたせいで疲れているからだ。
大きく伸びをして起き上がるとすぐに着替えを済ませ、洗濯機を回し、朝食の準備をする。魔法屋の家事は全て僕の担当だ。
というのも、ルシフは魔法以外は何をやらせてもポンコツなので、家電製品を使わせると爆発が起こるし、料理をさせると真っ黒焦げの炭と化す。結局、僕がやるしかないのだ。
朝食ができると僕は部屋で爆睡しているルシフを叩き起こす。
僕らの部屋には二段ベッドがあって、ルシフはいつも上で寝ている。本当は僕も上で寝たい。
「起きてください!!」
僕が乱暴にルシフをバシバシ叩いて起こすと、ルシフは不満げな表情で
「……おはよう」
と言う。
ルシフはのそのそと起き上がって着替えると、寝癖がついたままの頭でダイニングにやってくる。
僕は温かいミルクをカップに注いでルシフに差し出す。
僕は朝、ブラックコーヒーを飲む派だけど、ルシフは僕より味覚が幼いから飲めないのだ。
「いただきます」
僕らはいつも通り向かい合って座り、朝食をとる。
トーストとサラダとスープ。
まあ、普段と変わらない献立だ。
「ベル、お前、やつれた顔してるぞ」
ルシフが唐突に失礼なことを言ってくる。
「あんたが昨日僕を戦わせたからですよ。マジで勘弁してください、あれ、ほんとにキツイんですから」
「いい加減慣れろ。変身するたびに泣くな」
「ルシフは僕を使役する側だからアレがどんなに辛いかわからないんですよ。何せ伝説の大魔導師の力とうまく融合しないといけないんですよ?こっちの身にもなってください。それと、あの呪文どうにかなりませんか?唱えるのが嫌で仕方ないんです」
「相変わらず文句が多いな、お前は……」
「だって、意味わかんなくないですか?なんだよ『我が主の仰せのままに』って。ルシフのことを主だなんて思ったこと一度たりともないんですけど」
「そういう契約なんだから我慢しろ。だいたい契約しようって言ってきたのはお前の方だろうが」
「あの時はそうするしかなかったから仕方なく契約しただけで、本当はルシフなんかの言うことを聞くのはまっぴらごめんなんです」
僕が嫌悪感たっぷりに言うと、ルシフはミルクをふーふー冷ましながら言った。
「その割には甲斐甲斐しく世話を焼いてくれるよな。毎朝ミルク淹れてくれるし」
「それはあんたが1人じゃ何もできないポンコツだからだろ!そもそも『闇の王よ、我が血と魂を汝に捧げ……』って何なんだよ!中二病か!僕は吸血鬼じゃないんだよ!ルシフのまっずい血なんか要らねぇっつーの!!」
「悪かったな、不味い血で」
ルシフがあからさまにふて腐れたので、僕も我に返った。
「すみません、言い過ぎました」
僕とルシフが出会ったのは今からおよそ10年前。僕らはいわば幼馴染ってやつで、昔から喧嘩ばかりしていた。
とはいえ昔は、魔法屋の初代店主が僕らの喧嘩の仲裁をしてくれたからまだマシだった。ルシフが魔法屋を継いで店主になってから、さらに僕たちは喧嘩が絶えなくなった。
「もうしばらくは、あの呪文使わないでくださいね」
「どうだかな」
あの呪文は、僕の力を解き放つ為の呪文だ。
僕は、一言で言ってしまえば……魔王である。
かつて僕は魔族の国、サタン帝国の皇帝だったらしい。
「らしい」というのは、このとき僕はとても幼かったので、この頃のことは覚えていないのだ。
父が死んで即位させられたらしいけど、僕が即位してすぐにサタン帝国は滅びたという。
その後は僕は本来の悪魔らしい姿を封印して素性を隠し、魔法使いとして生きてきた。
そんな僕がルシフと契約を結んだのは数年前だ。
僕の種族は契約者の血を採り入れることにより、相手と、体力、魔力、欲望といったあらゆる力を共有し、自分の力を全て解放することができる。
これがなかなか厄介な契約で、力を共有しているときにどちらかが死ぬと、もう片方も死んでしまう。
それでも僕がルシフと契約したのは、ルシフの中に大魔導師から受け継がれた力が眠っているからだ。
ちなみに、この力についてルシフは「使いすぎると疲れるから、普段は封印してなるべく使わない」と言っている。
魔王の持つ力さえ遥かに上回る偉大な魔導師の力を共有するのはかなり辛いし疲れるけど、どうしても僕らにはこの力が必要だった。
つまり、この契約において、大魔導師の力を持つのはあくまでもルシフで僕はルシフから力を借りる立場。
それに、ルシフの種族はもともと魔族の使役に長けているため、戦闘の際の僕の扱いが上手い。
本当に屈辱的でムカつくけど、ルシフは僕より完全に優位なのだ。
そういうわけで僕は仕方なく、ルシフにこき使われる日々を送っている。
ルシフの寝癖だらけの乱れた髪を櫛で梳かしてあげるのも今では日課になってしまった。こいつは身だしなみに無頓着なので、放っておくと、お客さんの前にも平気な顔してボサボサ頭で登場するからだ。
こうやって僕がルシフを甘やかしているから彼はいつまで経ってもダメ人間なんだろうな。
ルシフの世話と家事が一通り済むと、僕は魔法屋を開店する。ルシフに接客をさせるとろくなことにならないので、お客さんの応対も基本的には僕の担当だ。
このときルシフが何をしているかというと、地下室に籠もって薬を作ったり、魔法の杖を作ったりしている。
魔法屋に売っている商品の多くがルシフの手作りなのだ。
そしていつも魔法グッズ制作に疲れてくると、休憩しながら昼ドラを観ている。
僕が店内を掃除しながらお客さんが来るのを待っていると、僕の足元に一匹の猫が擦り寄ってきた。
昨日ルシフが猫にしてしまった、レヴィ・アルストロメリアだ。
いけない、こいつの存在を忘れかけてた。
「どうしたの?お腹空いたの?」
僕が撫でると、子猫はにゃあと鳴いた。
とりあえずレヴィに昨日の夕飯の余りを食べさせた。
ユートピア魔法軍は死ぬほど嫌いだけど、猫はやっぱり可愛い。
僕が子猫と遊んでいると、不意に入口の扉が開いた。
お客さんかな……。
「いらっしゃいませ」
僕は急いで出迎えた。
「久しぶりだな。ベル、前より少し背伸びたか?」
そこに立っていたのは、見覚えのある男だった。
「あっ、情報屋さんじゃないですか。お久しぶりです」
情報屋。そう呼ばれている彼は、僕らがこの街にやって来たばかりの頃からの付き合いだ。
境界の事情に詳しく、人脈もものすごく広い人で、僕らの探偵業によく協力してくれる。情報屋といういかにも裏社会の人っぽい呼び名とは裏腹に、彼の人柄は近所のお節介なお兄さんという感じだ。
「ルシフに用ですか?」
「ああ、うん。あいつ今どこにいるんだ?」
「地下室です。呼んできますね」
地下室を覗くと、ルシフは魔法の杖にはめ込む為の水晶玉を丁寧に磨いているところだった。
「ルシフ、情報屋さんが来てますよ」
「追い返せ。俺はあいつが苦手なんだよ」
「何言ってるんですか、全く……。ほら、来てください」
僕は地下室からルシフを無理やり引っ張り出した。
情報屋がルシフに近づくなり頭を撫でる。
「おー、ルシフ、お前もちょっと見てない間に大人びた気がするな」
「子ども扱いするんじゃねぇ」
「まだ子どもだろ」
「うるせぇ、何しに来たんだよ。帰れ」
「まあまあ。これ、持ってきたからベルと一緒に食べな。超人気店の高級シュークリームだぞ」
スイーツ店の箱を受け取ってルシフの顔はにわかに明るくなったけど、すぐに平静を装って
「仕方ないから貰っておいてやる」
とだけ言った。情報屋はニヤッとして、からかうように言う。
「相変わらずツンデレだな」
「は?誰がツンデレだって?」
「そのシュークリームはお礼だ。うちの妹が世話になったみたいだからな」
「妹……?」
「イリスっていう女の子が来なかったか?あれは俺の妹だ」
それを聞いてルシフは混乱した様子で僕に耳打ちしてくる。
「なんでこいつイリスがうちに来たって知ってるんだ?記憶は消されてるはずだよな」
僕もルシフに耳打ちで返す。
「イリスさんの兄ってことは、情報屋さんが傷害事件の被害者ってことですかね?」
情報屋はそれを地獄耳で聞いていたらしい。
「ああ、やっぱり記憶が消されていたんだな。どうりで最近の記憶が曖昧だと思った。うちのパソコンに魔法屋について調べた痕跡があった。それと、部屋に大量のケーキを買ったレシートが残ってた。イリスの様子も普段とどこか違うような……何かを隠しているように感じがした。だから、ここに来たんじゃないかと思ってな」
と探偵みたいなことを言う。
「まあいい。これ以上深くは聞かないよ。そんなことより、金になりそうな仕事を見つけてきたんだ。どうせお前ら暇だろ?引き受けてみないか?」
「……どんな仕事だ?」
「浮気調査だよ。魔法屋にうってつけの仕事だろ」
「金になりそうって言うのは?」
「依頼人が、境界の中でも有名な財閥のマダムなんだ。報酬も弾むだろうよ。もしかしたらご馳走を奢って貰えるかもしれないぞ?しかも、マダムには美人な娘たちがいるらしい。お近づきになれるかも……」
「その依頼やらせろ」
ルシフが食い気味で引き受けた。ルシフのこういう自分の欲望にとことん忠実なところは尊敬に値する。
ルシフの返答に情報屋は満足げな笑顔を見せた。
「よし。じゃあ、マダムには俺が話をつけておこう。また今度、詳しいことは連絡するよ」
これは間違いなく、昨日、戦わされたせいで疲れているからだ。
大きく伸びをして起き上がるとすぐに着替えを済ませ、洗濯機を回し、朝食の準備をする。魔法屋の家事は全て僕の担当だ。
というのも、ルシフは魔法以外は何をやらせてもポンコツなので、家電製品を使わせると爆発が起こるし、料理をさせると真っ黒焦げの炭と化す。結局、僕がやるしかないのだ。
朝食ができると僕は部屋で爆睡しているルシフを叩き起こす。
僕らの部屋には二段ベッドがあって、ルシフはいつも上で寝ている。本当は僕も上で寝たい。
「起きてください!!」
僕が乱暴にルシフをバシバシ叩いて起こすと、ルシフは不満げな表情で
「……おはよう」
と言う。
ルシフはのそのそと起き上がって着替えると、寝癖がついたままの頭でダイニングにやってくる。
僕は温かいミルクをカップに注いでルシフに差し出す。
僕は朝、ブラックコーヒーを飲む派だけど、ルシフは僕より味覚が幼いから飲めないのだ。
「いただきます」
僕らはいつも通り向かい合って座り、朝食をとる。
トーストとサラダとスープ。
まあ、普段と変わらない献立だ。
「ベル、お前、やつれた顔してるぞ」
ルシフが唐突に失礼なことを言ってくる。
「あんたが昨日僕を戦わせたからですよ。マジで勘弁してください、あれ、ほんとにキツイんですから」
「いい加減慣れろ。変身するたびに泣くな」
「ルシフは僕を使役する側だからアレがどんなに辛いかわからないんですよ。何せ伝説の大魔導師の力とうまく融合しないといけないんですよ?こっちの身にもなってください。それと、あの呪文どうにかなりませんか?唱えるのが嫌で仕方ないんです」
「相変わらず文句が多いな、お前は……」
「だって、意味わかんなくないですか?なんだよ『我が主の仰せのままに』って。ルシフのことを主だなんて思ったこと一度たりともないんですけど」
「そういう契約なんだから我慢しろ。だいたい契約しようって言ってきたのはお前の方だろうが」
「あの時はそうするしかなかったから仕方なく契約しただけで、本当はルシフなんかの言うことを聞くのはまっぴらごめんなんです」
僕が嫌悪感たっぷりに言うと、ルシフはミルクをふーふー冷ましながら言った。
「その割には甲斐甲斐しく世話を焼いてくれるよな。毎朝ミルク淹れてくれるし」
「それはあんたが1人じゃ何もできないポンコツだからだろ!そもそも『闇の王よ、我が血と魂を汝に捧げ……』って何なんだよ!中二病か!僕は吸血鬼じゃないんだよ!ルシフのまっずい血なんか要らねぇっつーの!!」
「悪かったな、不味い血で」
ルシフがあからさまにふて腐れたので、僕も我に返った。
「すみません、言い過ぎました」
僕とルシフが出会ったのは今からおよそ10年前。僕らはいわば幼馴染ってやつで、昔から喧嘩ばかりしていた。
とはいえ昔は、魔法屋の初代店主が僕らの喧嘩の仲裁をしてくれたからまだマシだった。ルシフが魔法屋を継いで店主になってから、さらに僕たちは喧嘩が絶えなくなった。
「もうしばらくは、あの呪文使わないでくださいね」
「どうだかな」
あの呪文は、僕の力を解き放つ為の呪文だ。
僕は、一言で言ってしまえば……魔王である。
かつて僕は魔族の国、サタン帝国の皇帝だったらしい。
「らしい」というのは、このとき僕はとても幼かったので、この頃のことは覚えていないのだ。
父が死んで即位させられたらしいけど、僕が即位してすぐにサタン帝国は滅びたという。
その後は僕は本来の悪魔らしい姿を封印して素性を隠し、魔法使いとして生きてきた。
そんな僕がルシフと契約を結んだのは数年前だ。
僕の種族は契約者の血を採り入れることにより、相手と、体力、魔力、欲望といったあらゆる力を共有し、自分の力を全て解放することができる。
これがなかなか厄介な契約で、力を共有しているときにどちらかが死ぬと、もう片方も死んでしまう。
それでも僕がルシフと契約したのは、ルシフの中に大魔導師から受け継がれた力が眠っているからだ。
ちなみに、この力についてルシフは「使いすぎると疲れるから、普段は封印してなるべく使わない」と言っている。
魔王の持つ力さえ遥かに上回る偉大な魔導師の力を共有するのはかなり辛いし疲れるけど、どうしても僕らにはこの力が必要だった。
つまり、この契約において、大魔導師の力を持つのはあくまでもルシフで僕はルシフから力を借りる立場。
それに、ルシフの種族はもともと魔族の使役に長けているため、戦闘の際の僕の扱いが上手い。
本当に屈辱的でムカつくけど、ルシフは僕より完全に優位なのだ。
そういうわけで僕は仕方なく、ルシフにこき使われる日々を送っている。
ルシフの寝癖だらけの乱れた髪を櫛で梳かしてあげるのも今では日課になってしまった。こいつは身だしなみに無頓着なので、放っておくと、お客さんの前にも平気な顔してボサボサ頭で登場するからだ。
こうやって僕がルシフを甘やかしているから彼はいつまで経ってもダメ人間なんだろうな。
ルシフの世話と家事が一通り済むと、僕は魔法屋を開店する。ルシフに接客をさせるとろくなことにならないので、お客さんの応対も基本的には僕の担当だ。
このときルシフが何をしているかというと、地下室に籠もって薬を作ったり、魔法の杖を作ったりしている。
魔法屋に売っている商品の多くがルシフの手作りなのだ。
そしていつも魔法グッズ制作に疲れてくると、休憩しながら昼ドラを観ている。
僕が店内を掃除しながらお客さんが来るのを待っていると、僕の足元に一匹の猫が擦り寄ってきた。
昨日ルシフが猫にしてしまった、レヴィ・アルストロメリアだ。
いけない、こいつの存在を忘れかけてた。
「どうしたの?お腹空いたの?」
僕が撫でると、子猫はにゃあと鳴いた。
とりあえずレヴィに昨日の夕飯の余りを食べさせた。
ユートピア魔法軍は死ぬほど嫌いだけど、猫はやっぱり可愛い。
僕が子猫と遊んでいると、不意に入口の扉が開いた。
お客さんかな……。
「いらっしゃいませ」
僕は急いで出迎えた。
「久しぶりだな。ベル、前より少し背伸びたか?」
そこに立っていたのは、見覚えのある男だった。
「あっ、情報屋さんじゃないですか。お久しぶりです」
情報屋。そう呼ばれている彼は、僕らがこの街にやって来たばかりの頃からの付き合いだ。
境界の事情に詳しく、人脈もものすごく広い人で、僕らの探偵業によく協力してくれる。情報屋といういかにも裏社会の人っぽい呼び名とは裏腹に、彼の人柄は近所のお節介なお兄さんという感じだ。
「ルシフに用ですか?」
「ああ、うん。あいつ今どこにいるんだ?」
「地下室です。呼んできますね」
地下室を覗くと、ルシフは魔法の杖にはめ込む為の水晶玉を丁寧に磨いているところだった。
「ルシフ、情報屋さんが来てますよ」
「追い返せ。俺はあいつが苦手なんだよ」
「何言ってるんですか、全く……。ほら、来てください」
僕は地下室からルシフを無理やり引っ張り出した。
情報屋がルシフに近づくなり頭を撫でる。
「おー、ルシフ、お前もちょっと見てない間に大人びた気がするな」
「子ども扱いするんじゃねぇ」
「まだ子どもだろ」
「うるせぇ、何しに来たんだよ。帰れ」
「まあまあ。これ、持ってきたからベルと一緒に食べな。超人気店の高級シュークリームだぞ」
スイーツ店の箱を受け取ってルシフの顔はにわかに明るくなったけど、すぐに平静を装って
「仕方ないから貰っておいてやる」
とだけ言った。情報屋はニヤッとして、からかうように言う。
「相変わらずツンデレだな」
「は?誰がツンデレだって?」
「そのシュークリームはお礼だ。うちの妹が世話になったみたいだからな」
「妹……?」
「イリスっていう女の子が来なかったか?あれは俺の妹だ」
それを聞いてルシフは混乱した様子で僕に耳打ちしてくる。
「なんでこいつイリスがうちに来たって知ってるんだ?記憶は消されてるはずだよな」
僕もルシフに耳打ちで返す。
「イリスさんの兄ってことは、情報屋さんが傷害事件の被害者ってことですかね?」
情報屋はそれを地獄耳で聞いていたらしい。
「ああ、やっぱり記憶が消されていたんだな。どうりで最近の記憶が曖昧だと思った。うちのパソコンに魔法屋について調べた痕跡があった。それと、部屋に大量のケーキを買ったレシートが残ってた。イリスの様子も普段とどこか違うような……何かを隠しているように感じがした。だから、ここに来たんじゃないかと思ってな」
と探偵みたいなことを言う。
「まあいい。これ以上深くは聞かないよ。そんなことより、金になりそうな仕事を見つけてきたんだ。どうせお前ら暇だろ?引き受けてみないか?」
「……どんな仕事だ?」
「浮気調査だよ。魔法屋にうってつけの仕事だろ」
「金になりそうって言うのは?」
「依頼人が、境界の中でも有名な財閥のマダムなんだ。報酬も弾むだろうよ。もしかしたらご馳走を奢って貰えるかもしれないぞ?しかも、マダムには美人な娘たちがいるらしい。お近づきになれるかも……」
「その依頼やらせろ」
ルシフが食い気味で引き受けた。ルシフのこういう自分の欲望にとことん忠実なところは尊敬に値する。
ルシフの返答に情報屋は満足げな笑顔を見せた。
「よし。じゃあ、マダムには俺が話をつけておこう。また今度、詳しいことは連絡するよ」
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