8 / 13
8夏、青葉のように人間も元気、とは限りません
しおりを挟む
キャロルを追放してから3週間、東の領域の一部で熱病が急速に流行り始めたと王子の元に報告が入った。
その速さは尋常ではなく、もう既に一部の村などは壊滅状態らしい。
「癒しが使える聖女見習いや近隣の医者が駆けつけていますが、なかなか効果が上がらないようです」
「どうかヘレン様のお力をお見せくださいませんか」
ヘレンの力というのは聖女の祈りのことを言っているのだろう。
ただそれをするには3日ほどヘレンと離れなければならない。
「もし私の力が必要ならば私も頑張り、ますわ」
ヘレンが目を潤ませながらこちらに上目遣いをよこす。
「いや、まだそこまでするほどではないだろう」
「で、でもぉ」
「これくらいならば医者や見習いが総力を挙げればどうってことのない程度のはずだ。ヘレンが手を煩わす必要はないよ」
なかなか手ごわいが、でもやれないほどではない。
お父様に治めてみよとチャンスをもらったんだ。
これをみごと治めて、その後にヘレンに正式な婚約を求める。
今までだって思い通りにならなかったことがないんだ。
今回だって、絶対に思った通りにしてみせる!
そう意気込んだのもつかの間、王宮でもすぐに熱病が流行りはじめ、多くの人が、眠れずに命をじりじりと削る日々を過ごす事になったのだった。
*****
最近、ギルドに買い取りをしてもらいに行っていて気になったことがあった。
「リーザさん、そういえば最近熱さましの買い取り値段が少しづつ上がっているんですよ」
今日の夕飯は残り物の炒めご飯だ。
リーザさんはこれをチャーハンというのだと教えてくれた。
最初はこの粒々したご飯というものが見慣れなかったけど、おいしい物はおいしい。
美味しい物は何であれ好きだ。
しかもチャーハンは残り物を刻んでご飯と溶き卵でいためればすぐに出来るから、料理に頭を使いたくないときに時々お世話になる。
一番なにも考えなくていいのはパンとソーセージだけの時だけど。
「そうか。夏はそんなに上がることはないのに不思議なもんだな」
「そうなんですよ。でもこの辺りではそんなに必要とされている感じもありませんし、柳の木になにか病気でもあったんですかね」
このあたりの人たちは病気どころかぴんぴんしている。
おかげでなんだかんだと作りすぎた料理をもらってばかりだ。
この辺りの人は元気が有り余ると料理を作りすぎるらしい。
この前のベリーのパンもおいしかったと伝えたらまたもらってしまったので明日のおやつに取っといてある位だ。
「もし病気となると厄介だな。キャロル、そのうちうちの敷地内だけで良いから変な病気が来ないように歌っておいてくれ」
「言われると思ってもうやってあります。ちなみに枝の剪定もしてあるのでもう少しなら熱さまし量産できますよ」
もう既に枝を落として皮を剥きやすいように用意まではしてある。
おかげでご飯の準備の時間が削れたけども。
「さすが。有能すぎて怖いくらいだな」
「なんとなく予想はできていましたから」
「明日からはしばらく熱さましにかかりきりになるだろうな。なんなら竹も切ってくるか」
「どこか行かれるんですか?」
「まだ教えていないんだけど竹を切ったときの雫からも熱さましが作れるんだ。ちょっと出かけた先に竹林があったのを覚えているから明日はそれを取ってくることにするよ。もうすぐ雨期でろくに外に出られなくなるだろうし」
そういえばもうすぐスコールの時期だ。
昼夜問わず激しい雨が降って、ろくに外でなにか出来るような状態ではなくなる。
薬を取った後の竹も何か小物でも作れそうなので、少し多めにとってきてもらうことにした。
その速さは尋常ではなく、もう既に一部の村などは壊滅状態らしい。
「癒しが使える聖女見習いや近隣の医者が駆けつけていますが、なかなか効果が上がらないようです」
「どうかヘレン様のお力をお見せくださいませんか」
ヘレンの力というのは聖女の祈りのことを言っているのだろう。
ただそれをするには3日ほどヘレンと離れなければならない。
「もし私の力が必要ならば私も頑張り、ますわ」
ヘレンが目を潤ませながらこちらに上目遣いをよこす。
「いや、まだそこまでするほどではないだろう」
「で、でもぉ」
「これくらいならば医者や見習いが総力を挙げればどうってことのない程度のはずだ。ヘレンが手を煩わす必要はないよ」
なかなか手ごわいが、でもやれないほどではない。
お父様に治めてみよとチャンスをもらったんだ。
これをみごと治めて、その後にヘレンに正式な婚約を求める。
今までだって思い通りにならなかったことがないんだ。
今回だって、絶対に思った通りにしてみせる!
そう意気込んだのもつかの間、王宮でもすぐに熱病が流行りはじめ、多くの人が、眠れずに命をじりじりと削る日々を過ごす事になったのだった。
*****
最近、ギルドに買い取りをしてもらいに行っていて気になったことがあった。
「リーザさん、そういえば最近熱さましの買い取り値段が少しづつ上がっているんですよ」
今日の夕飯は残り物の炒めご飯だ。
リーザさんはこれをチャーハンというのだと教えてくれた。
最初はこの粒々したご飯というものが見慣れなかったけど、おいしい物はおいしい。
美味しい物は何であれ好きだ。
しかもチャーハンは残り物を刻んでご飯と溶き卵でいためればすぐに出来るから、料理に頭を使いたくないときに時々お世話になる。
一番なにも考えなくていいのはパンとソーセージだけの時だけど。
「そうか。夏はそんなに上がることはないのに不思議なもんだな」
「そうなんですよ。でもこの辺りではそんなに必要とされている感じもありませんし、柳の木になにか病気でもあったんですかね」
このあたりの人たちは病気どころかぴんぴんしている。
おかげでなんだかんだと作りすぎた料理をもらってばかりだ。
この辺りの人は元気が有り余ると料理を作りすぎるらしい。
この前のベリーのパンもおいしかったと伝えたらまたもらってしまったので明日のおやつに取っといてある位だ。
「もし病気となると厄介だな。キャロル、そのうちうちの敷地内だけで良いから変な病気が来ないように歌っておいてくれ」
「言われると思ってもうやってあります。ちなみに枝の剪定もしてあるのでもう少しなら熱さまし量産できますよ」
もう既に枝を落として皮を剥きやすいように用意まではしてある。
おかげでご飯の準備の時間が削れたけども。
「さすが。有能すぎて怖いくらいだな」
「なんとなく予想はできていましたから」
「明日からはしばらく熱さましにかかりきりになるだろうな。なんなら竹も切ってくるか」
「どこか行かれるんですか?」
「まだ教えていないんだけど竹を切ったときの雫からも熱さましが作れるんだ。ちょっと出かけた先に竹林があったのを覚えているから明日はそれを取ってくることにするよ。もうすぐ雨期でろくに外に出られなくなるだろうし」
そういえばもうすぐスコールの時期だ。
昼夜問わず激しい雨が降って、ろくに外でなにか出来るような状態ではなくなる。
薬を取った後の竹も何か小物でも作れそうなので、少し多めにとってきてもらうことにした。
10
お気に入りに追加
79
あなたにおすすめの小説
婚約者のいる側近と婚約させられた私は悪の聖女と呼ばれています。
鈴木べにこ
恋愛
幼い頃から一緒に育ってきた婚約者の王子ギルフォードから婚約破棄を言い渡された聖女マリーベル。
突然の出来事に困惑するマリーベルをよそに、王子は自身の代わりに側近である宰相の息子ロイドとマリーベルを王命で強制的に婚約させたと言い出したのであった。
ロイドに愛する婚約者がいるの事を知っていたマリーベルはギルフォードに王命を取り下げるように訴えるが聞いてもらえず・・・。
カクヨム、小説家になろうでも連載中。
※最初の数話はイジメ表現のようなキツイ描写が出てくるので注意。
初投稿です。
勢いで書いてるので誤字脱字や変な表現が多いし、余裕で気付かないの時があるのでお気軽に教えてくださるとありがたいです٩( 'ω' )و
気分転換もかねて、他の作品と同時連載をしています。
【書庫の幽霊王妃は、貴方を愛することができない。】
という作品も同時に書いているので、この作品が気に入りましたら是非読んでみてください。
婚約破棄されたら魔法が解けました
かな
恋愛
「クロエ・ベネット。お前との婚約は破棄する。」
それは学園の卒業パーティーでの出来事だった。……やっぱり、ダメだったんだ。周りがザワザワと騒ぎ出す中、ただ1人『クロエ・ベネット』だけは冷静に事実を受け止めていた。乙女ゲームの世界に転生してから10年。国外追放を回避する為に、そして后妃となる為に努力し続けて来たその時間が無駄になった瞬間だった。そんな彼女に追い打ちをかけるかのように、王太子であるエドワード・ホワイトは聖女を新たな婚約者とすることを発表した。その後はトントン拍子にことが運び、冤罪をかけられ、ゲームのシナリオ通り国外追放になった。そして、魔物に襲われて死ぬ。……そんな運命を辿るはずだった。
「こんなことなら、転生なんてしたくなかった。元の世界に戻りたい……」
あろうことか、最後の願いとしてそう思った瞬間に、全身が光り出したのだ。そして気がつくと、なんと前世の姿に戻っていた!しかもそれを第二王子であるアルベルトに見られていて……。
「……まさかこんなことになるなんてね。……それでどうする?あの2人復讐でもしちゃう?今の君なら、それができるよ。」
死を覚悟した絶望から転生特典を得た主人公の大逆転溺愛ラブストーリー!
※最初の5話は毎日18時に投稿、それ以降は毎週土曜日の18時に投稿する予定です
【完結】魅了が解けたあと。
乙
恋愛
国を魔物から救った英雄。
元平民だった彼は、聖女の王女とその仲間と共に国を、民を守った。
その後、苦楽を共にした英雄と聖女は共に惹かれあい真実の愛を紡ぐ。
あれから何十年___。
仲睦まじくおしどり夫婦と言われていたが、
とうとう聖女が病で倒れてしまう。
そんな彼女をいつまも隣で支え最後まで手を握り続けた英雄。
彼女が永遠の眠りへとついた時、彼は叫声と共に表情を無くした。
それは彼女を亡くした虚しさからだったのか、それとも・・・・・
※すべての物語が都合よく魅了が暴かれるとは限らない。そんなお話。
______________________
少し回りくどいかも。
でも私には必要な回りくどさなので最後までお付き合い頂けると嬉しいです。
心の声が聞こえる私は、婚約者から嫌われていることを知っている。
木山楽斗
恋愛
人の心の声が聞こえるカルミアは、婚約者が自分のことを嫌っていることを知っていた。
そんな婚約者といつまでも一緒にいるつもりはない。そう思っていたカルミアは、彼といつか婚約破棄すると決めていた。
ある時、カルミアは婚約者が浮気していることを心の声によって知った。
そこで、カルミアは、友人のロウィードに協力してもらい、浮気の証拠を集めて、婚約者に突きつけたのである。
こうして、カルミアは婚約破棄して、自分を嫌っている婚約者から解放されるのだった。
ぽっちゃりな私は妹に婚約者を取られましたが、嫁ぎ先での溺愛がとまりません~冷酷な伯爵様とは誰のこと?~
柊木 ひなき
恋愛
「メリーナ、お前との婚約を破棄する!」夜会の最中に婚約者の第一王子から婚約破棄を告げられ、妹からは馬鹿にされ、貴族達の笑い者になった。
その時、思い出したのだ。(私の前世、美容部員だった!)この体型、ドレス、確かにやばい!
この世界の美の基準は、スリム体型が前提。まずはダイエットを……え、もう次の結婚? お相手は、超絶美形の伯爵様!? からの溺愛!? なんで!?
※シリアス展開もわりとあります。
王命を忘れた恋
須木 水夏
恋愛
『君はあの子よりも強いから』
そう言って貴方は私を見ることなく、この関係性を終わらせた。
強くいなければ、貴方のそばにいれなかったのに?貴方のそばにいる為に強くいたのに?
そんな痛む心を隠し。ユリアーナはただ静かに微笑むと、承知を告げた。
私が愛する王子様は、幼馴染を側妃に迎えるそうです
こことっと
恋愛
それは奇跡のような告白でした。
まさか王子様が、社交会から逃げ出した私を探しだし妃に選んでくれたのです。
幸せな結婚生活を迎え3年、私は幸せなのに不安から逃れられずにいました。
「子供が欲しいの」
「ごめんね。 もう少しだけ待って。 今は仕事が凄く楽しいんだ」
それから間もなく……彼は、彼の幼馴染を側妃に迎えると告げたのです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる