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8夏、青葉のように人間も元気、とは限りません

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キャロルを追放してから3週間、東の領域の一部で熱病が急速に流行り始めたと王子の元に報告が入った。
その速さは尋常ではなく、もう既に一部の村などは壊滅状態らしい。

「癒しが使える聖女見習いや近隣の医者が駆けつけていますが、なかなか効果が上がらないようです」
「どうかヘレン様のお力をお見せくださいませんか」

ヘレンの力というのは聖女の祈りのことを言っているのだろう。
ただそれをするには3日ほどヘレンと離れなければならない。

「もし私の力が必要ならば私も頑張り、ますわ」

ヘレンが目を潤ませながらこちらに上目遣いをよこす。

「いや、まだそこまでするほどではないだろう」
「で、でもぉ」
「これくらいならば医者や見習いが総力を挙げればどうってことのない程度のはずだ。ヘレンが手を煩わす必要はないよ」

なかなか手ごわいが、でもやれないほどではない。
お父様に治めてみよとチャンスをもらったんだ。
これをみごと治めて、その後にヘレンに正式な婚約を求める。
今までだって思い通りにならなかったことがないんだ。
今回だって、絶対に思った通りにしてみせる!

そう意気込んだのもつかの間、王宮でもすぐに熱病が流行りはじめ、多くの人が、眠れずに命をじりじりと削る日々を過ごす事になったのだった。


*****

最近、ギルドに買い取りをしてもらいに行っていて気になったことがあった。

「リーザさん、そういえば最近熱さましの買い取り値段が少しづつ上がっているんですよ」

今日の夕飯は残り物の炒めご飯だ。
リーザさんはこれをチャーハンというのだと教えてくれた。
最初はこの粒々したご飯というものが見慣れなかったけど、おいしい物はおいしい。
美味しい物は何であれ好きだ。
しかもチャーハンは残り物を刻んでご飯と溶き卵でいためればすぐに出来るから、料理に頭を使いたくないときに時々お世話になる。
一番なにも考えなくていいのはパンとソーセージだけの時だけど。

「そうか。夏はそんなに上がることはないのに不思議なもんだな」
「そうなんですよ。でもこの辺りではそんなに必要とされている感じもありませんし、柳の木になにか病気でもあったんですかね」

このあたりの人たちは病気どころかぴんぴんしている。
おかげでなんだかんだと作りすぎた料理をもらってばかりだ。
この辺りの人は元気が有り余ると料理を作りすぎるらしい。
この前のベリーのパンもおいしかったと伝えたらまたもらってしまったので明日のおやつに取っといてある位だ。

「もし病気となると厄介だな。キャロル、そのうちうちの敷地内だけで良いから変な病気が来ないように歌っておいてくれ」
「言われると思ってもうやってあります。ちなみに枝の剪定もしてあるのでもう少しなら熱さまし量産できますよ」

もう既に枝を落として皮を剥きやすいように用意まではしてある。
おかげでご飯の準備の時間が削れたけども。

「さすが。有能すぎて怖いくらいだな」
「なんとなく予想はできていましたから」
「明日からはしばらく熱さましにかかりきりになるだろうな。なんなら竹も切ってくるか」
「どこか行かれるんですか?」
「まだ教えていないんだけど竹を切ったときの雫からも熱さましが作れるんだ。ちょっと出かけた先に竹林があったのを覚えているから明日はそれを取ってくることにするよ。もうすぐ雨期でろくに外に出られなくなるだろうし」

そういえばもうすぐスコールの時期だ。
昼夜問わず激しい雨が降って、ろくに外でなにか出来るような状態ではなくなる。
薬を取った後の竹も何か小物でも作れそうなので、少し多めにとってきてもらうことにした。
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