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忠告もタイミングがあると思います
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「あ~おはよ~リリィ。よく寝れた?」
寝起きで髪がふわふわすごいことになっているアベルが上機嫌そうに部屋に入ってくる。
「あ、えっと、おはようございます。解毒剤ありがとうございました」
「んーん、いいのいいの。まだ少し回復しきってないからね、しばらくは安静かな」
身体の痛みは、当てられた気が毒になったものを一気に抜いた反動だと教えてくれた。
森に入ったときのあの深い霧は強い魔素というものを含んでいるらしい。
それを吸い込むと人間には毒、魔族には薬、時には麻薬にもなるという。
「あれは吸い込む量を間違えるとまずい代物だからな。先に言っておくべきだった」
うん、できればそれは聞きたかったですね。
人間には毒って、マジでやばい奴じゃん。
「まあ、難しい話は後で。今日はハンバーグなんだね~食べようか」
3人で座って、食事前に手を合わせる。
カミオの用意してくれた食事は、カミオとアベルがハンバーグ、私はとろとろに煮込んだミネストローネだった。
ふわふわと湯気が立っている。
お腹すきすぎてきもちわるいくらいの今、ここでお預けされるのは本望じゃない。
ていうか、ここでお預けされたら泣いちゃう。
おいしそう、はやく食べよう。
カミオは席についても、私の様子をうかがうばかりで自分の食事に手を付ける様子がない。
さきに食べちゃいますよ?
アベルはもうハンバーグ半分平らげてるし。
「あ、おいしい」
「まだ本調子ではないだろうからな」
「ありがとうございます」
そっか、ミネストローネは材料が足りなかったんじゃなくて、消化のいいものを、って思って作ってくれたのか。
カミオにお礼を言うと、なぜかムスッとされてしまった。
「あんまり不用心にモノを食うんじゃねえぞ。いつ毒が仕込まれているか分かったもんじゃねえからな」
「あー、もうカミオいじわる~!そんなこと今言ったらリリィの食欲なくなっちゃうでしょ。リリィ、いまこのテーブルにあるものは全部そんな心配しなくていいものだから安心して。大丈夫だよ」
アベルが安心させようとしてくれるけど、カミオの言葉であわ立った肌は収まらなかった。
湯気が立っているはずの、さっきまでおいしかったはずのミネストローネがただの熱い液体に感じる。
その後の食事はほとんど手を付ける気が起きなかった。
何とか飲み込んだけど、それでもほとんど体を回復させるための栄養を取るための義務感から。
スプーンの上げ下ろしがしんどくてたまらなかった。
そして終わった後は、アベルが寝室まで連れていってくれた。
「カミオの言ったこと、悪気はないからそのうち許してやって。どのみち君には言わないといけないことだったから」
ベッドに寝かせてもらっている途中、アベルがささやくようにそうつぶやいた。
「カミオは君のことをすべてから守りたいと思っている。あっちの国の人間からも、こっちの国に来た時の色々なことからも。だから彼のことは信じてやってくれると嬉しい」
「僕はカミオがああやって君のことを気にかけるのは、君が彼を呼び出した聖女だから、ではないと思ってる。
もちろん、君に呼ばれたのは事実だけれど、あちらの国から出た時点でもう君は普通の女の子だ。
だからわがままと思わず色々好きにしてくれ。
その中で、カミオのことも気の置けない奴だと思ってくれたらそれ以上の事はないよ」
ごめん、話過ぎたね、おやすみと言ってアベルは私の目にふわりと手をかざした。
その日の夜は体の痛みで眠れないと思ったのに、気が付けば朝まで幸せな夢を見ていた。
寝起きで髪がふわふわすごいことになっているアベルが上機嫌そうに部屋に入ってくる。
「あ、えっと、おはようございます。解毒剤ありがとうございました」
「んーん、いいのいいの。まだ少し回復しきってないからね、しばらくは安静かな」
身体の痛みは、当てられた気が毒になったものを一気に抜いた反動だと教えてくれた。
森に入ったときのあの深い霧は強い魔素というものを含んでいるらしい。
それを吸い込むと人間には毒、魔族には薬、時には麻薬にもなるという。
「あれは吸い込む量を間違えるとまずい代物だからな。先に言っておくべきだった」
うん、できればそれは聞きたかったですね。
人間には毒って、マジでやばい奴じゃん。
「まあ、難しい話は後で。今日はハンバーグなんだね~食べようか」
3人で座って、食事前に手を合わせる。
カミオの用意してくれた食事は、カミオとアベルがハンバーグ、私はとろとろに煮込んだミネストローネだった。
ふわふわと湯気が立っている。
お腹すきすぎてきもちわるいくらいの今、ここでお預けされるのは本望じゃない。
ていうか、ここでお預けされたら泣いちゃう。
おいしそう、はやく食べよう。
カミオは席についても、私の様子をうかがうばかりで自分の食事に手を付ける様子がない。
さきに食べちゃいますよ?
アベルはもうハンバーグ半分平らげてるし。
「あ、おいしい」
「まだ本調子ではないだろうからな」
「ありがとうございます」
そっか、ミネストローネは材料が足りなかったんじゃなくて、消化のいいものを、って思って作ってくれたのか。
カミオにお礼を言うと、なぜかムスッとされてしまった。
「あんまり不用心にモノを食うんじゃねえぞ。いつ毒が仕込まれているか分かったもんじゃねえからな」
「あー、もうカミオいじわる~!そんなこと今言ったらリリィの食欲なくなっちゃうでしょ。リリィ、いまこのテーブルにあるものは全部そんな心配しなくていいものだから安心して。大丈夫だよ」
アベルが安心させようとしてくれるけど、カミオの言葉であわ立った肌は収まらなかった。
湯気が立っているはずの、さっきまでおいしかったはずのミネストローネがただの熱い液体に感じる。
その後の食事はほとんど手を付ける気が起きなかった。
何とか飲み込んだけど、それでもほとんど体を回復させるための栄養を取るための義務感から。
スプーンの上げ下ろしがしんどくてたまらなかった。
そして終わった後は、アベルが寝室まで連れていってくれた。
「カミオの言ったこと、悪気はないからそのうち許してやって。どのみち君には言わないといけないことだったから」
ベッドに寝かせてもらっている途中、アベルがささやくようにそうつぶやいた。
「カミオは君のことをすべてから守りたいと思っている。あっちの国の人間からも、こっちの国に来た時の色々なことからも。だから彼のことは信じてやってくれると嬉しい」
「僕はカミオがああやって君のことを気にかけるのは、君が彼を呼び出した聖女だから、ではないと思ってる。
もちろん、君に呼ばれたのは事実だけれど、あちらの国から出た時点でもう君は普通の女の子だ。
だからわがままと思わず色々好きにしてくれ。
その中で、カミオのことも気の置けない奴だと思ってくれたらそれ以上の事はないよ」
ごめん、話過ぎたね、おやすみと言ってアベルは私の目にふわりと手をかざした。
その日の夜は体の痛みで眠れないと思ったのに、気が付けば朝まで幸せな夢を見ていた。
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