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壊れそうな
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廊下から物音がしたので出てみるとさっき部屋を出て風呂に入ったはずのリリィが倒れていた。
「おい、しっかりしろ」
さっきまでより顔が赤い。
呼吸も浅く乱れている。手先が少し冷たくなってきているか。
「おい、アベル。ここに人間用の解毒剤あったか?」
「おや、もう回ってしまったか。うーん、今はないな。ちょっと取ってきて調合するからそれまでに彼女の身なり整えておいてもらっていい?」
「もう行く気しかねぇだろ」
「ま、いいじゃないか。よろしく頼むよ」
「あんまり壊れもんの扱いは得意じゃないんだがな」
昔習ったように汗をかいた彼女の服を取り除き、温めた浴槽で軽く清めた後、新しい服を出して着せ替えた。
ベッドに枕を多めにおいて横たえる。
今の置き方はちょっとまずかっただろうか。
「それにしても細っこいな」
あちらに呼ばれてからしか見ていないがろくに飯を食っていなかった。
満足に食べたのはふもとの村での食事くらいか。
それでもまあ、十分に食べたとは言えない量だったが。
「まあ、あの食事はあまり食べないのが正解だったがな」
うっすらと汗をかく額に冷やしたタオルを当てる。
起きたら解毒して、体力をつけさせるためにもきちんと食べさせなければならない。
こんなに細いままでは心配だ。
先ほどの湯あみで子供と見まがうほど華奢な手足を見ている。
食べさせて、力をつけさせよう。
ここに連れてくるまでもうずまるようにしがみついていたが俺が速度を落とさなければ吹き飛んでいただろう。
せめてもう少し腕に力が入るようにしなければ。
そう、一人計画を立てていると、リリィの手が俺の上着の裾を引いた。
「……もう少しここにいてやるか」
別に情が沸いたわけではない。
ただ、アベルが帰ってくるまで、もう少しだけこの寝顔を見ていようと思った。
「おい、しっかりしろ」
さっきまでより顔が赤い。
呼吸も浅く乱れている。手先が少し冷たくなってきているか。
「おい、アベル。ここに人間用の解毒剤あったか?」
「おや、もう回ってしまったか。うーん、今はないな。ちょっと取ってきて調合するからそれまでに彼女の身なり整えておいてもらっていい?」
「もう行く気しかねぇだろ」
「ま、いいじゃないか。よろしく頼むよ」
「あんまり壊れもんの扱いは得意じゃないんだがな」
昔習ったように汗をかいた彼女の服を取り除き、温めた浴槽で軽く清めた後、新しい服を出して着せ替えた。
ベッドに枕を多めにおいて横たえる。
今の置き方はちょっとまずかっただろうか。
「それにしても細っこいな」
あちらに呼ばれてからしか見ていないがろくに飯を食っていなかった。
満足に食べたのはふもとの村での食事くらいか。
それでもまあ、十分に食べたとは言えない量だったが。
「まあ、あの食事はあまり食べないのが正解だったがな」
うっすらと汗をかく額に冷やしたタオルを当てる。
起きたら解毒して、体力をつけさせるためにもきちんと食べさせなければならない。
こんなに細いままでは心配だ。
先ほどの湯あみで子供と見まがうほど華奢な手足を見ている。
食べさせて、力をつけさせよう。
ここに連れてくるまでもうずまるようにしがみついていたが俺が速度を落とさなければ吹き飛んでいただろう。
せめてもう少し腕に力が入るようにしなければ。
そう、一人計画を立てていると、リリィの手が俺の上着の裾を引いた。
「……もう少しここにいてやるか」
別に情が沸いたわけではない。
ただ、アベルが帰ってくるまで、もう少しだけこの寝顔を見ていようと思った。
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