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知らぬ間に

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用意してくれたお風呂は狭かったけど、木の浴槽はぬくもりがあってよかった。
アリスさんが用意してくれたご飯も質素だけれどおいしかった。

「じゃあ、ここが今日の寝床だよ。本当に明日出発するのかい?」
「ええ、あまりお世話になってばかりいられませんから」
「そうかい?私たちはいいんだよ?」
「いえいえ、ありがとうございます。こんなによくしてくれて」
「いやいや、こんなんでお礼なんて本当に欲がないんだねぇ。寝床の藁が足りなかったら言っておくれ」
「はい、ありがとうございます」
「よく寝なよ」
「はい、おやすみなさい」

さすがにふかふかのベッド、とはいかなかったけど、アリスさんはまるでアルプスの少女みたいな寝床を用意してくれた。
今日も満足に寝られないかと思っていたのに、久しぶりの満腹とその安心感からかもう瞼が重い。

「ちゃんとご飯食べたの、こっちの世界に来る前の昼以来だもんな……」

意識を保とうにも、その力がもうなくなっていく。
私は明日の出発の考え事をする間もなく、眠ってしまった。

その頃、アリスさんと村長さんが大分葛藤してくれていたことなんて、知る由もなかった。
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