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サムライ校での学園生活

パルクールでコミュニケーション?

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記念すべきサムライ校の1時間目の授業は、【侍の歴史】に関する授業だった。

鎌倉時代から幕末に至るまで、侍たちがどういう道をたどり、どういう技術を開発したか?
などを学ぶ授業らしい。

この教科の担当の先生は、80歳のおじいちゃん【錦戸太平】先生だった。

だいぶ、腰が曲がっており、一見ヨボヨボな印象を受けるが、目の奥はしっかりとぎらついており
普通の老人とは違うのが、すぐにわかった。


一体、何者?



リリ「あーあー錦戸先生凄い怒ってるわ。」

麗太「一体、誰が遅刻したんだろう?」


1時間目の授業で、早々に遅刻した勇者がいるらしい。

しかも、15分も経ってるのに、まだ教室に来てないのだ。

錦戸先生は、眉間にシワを寄せて静かに黙っているから、相当怒っているらしい・・・

広い木造の教室には、ピりついた空気が漂ってる。


友愛「珍しく冴鶴は、ちゃんと席についてるし・・」

冴鶴「最初の授業が面白くなかったら、俺も遅刻どころか欠席してやるよ。」



ドタ ドタ ドタ!!!

突然、教室の外で、騒がしい足音がしてきた。


岩一「あ、遅刻してきた奴ら来たんじゃねえのか?」


教室の扉がガラガラと開く!

出てきたのは、同じ顔をした身長の高い3人の男の子たちだった。どうやら三つ子らしい。


「皆さんおはようございーます。」


錦戸先生に遅刻したことを謝りもせず、臆面もなく入室する3人の男の子たち・・・


リリ「あれ、あの子たちどっかで見たことない?」

麗太「あ、あの3人、パルクール日本大会でチャンピオンになった三つ子の工藤3兄弟じゃん。」

岩一「確か、自分たちのYourTubeチャンネルで、パルクールの凄技をめちゃくちゃ披露してるよな。」

友愛「アメリカの大会にも出場していて、ニューヨークの高層ビル群をパルクールで渡り歩く命知らずなこともしてたね。」

岩一「そうそう、俺、そのビル群を渡り歩く動画見たけど、あまりの高さとスケールに思わず漏れそうになったぜ。」





生徒たちは、遅刻してきた3人が有名パルクールYourTuberの工藤3兄弟だと、わかると途端にざわつき始めた。

そして、女子生徒の中にはキャーキャー言う子達も・・・



工藤一志「どうもー工藤3兄弟の長男 一志でーす」

工藤二志「次男の二志でーす」

工藤三誌「三男の三誌でーす」


工藤三兄弟「3人合わせて、工藤パルクール三兄弟でーす。所属クラスは【個】でーす。よろしくお願いしまーす。」




錦戸先生「ちょっと待ちなさい、君たち!」


錦戸先生が真顔で、3人に呼びかける。

ご高齢だが、若々しい声をしている・・・やはり普通のおじいちゃんとはひと味違うようだ。


三兄弟「はあ?」


三兄弟のとぼけた顔・・・・


錦戸先生「君たち、今、何時だと思ってるんだ?」

一志「なんだよ、おじさん。」


カチン!!


錦戸先生「先生に向かっておじさんとなんだ、コノヤロー!!」

錦戸先生が工藤一志に向かって、切り裂くようなチョップを食らわせようとする。

それをスレスレで避ける一志・・・・


一志「あ、すいません、間違えました。おじいちゃんですね。」


一志の煽るような発言。


流石、着物を着ていても、軽やかに動くパルクールチャンピオン!

身体を素早く回転させ、攻撃を避けた・・・運動神経は抜群だ。


一志「歳を考えろよ、おじいさん!」

錦戸先生「生徒が先生に向かっておじいさんとなんだ!」


しかし、錦戸先生も負けていない。

武術を心得ているらしく、次々に桁外れの素早さのパンチを繰り出していく。


二志「先生が生徒に向かって何すんだよ!!体罰だぞ体罰!!」


次男の二志が、先生に飛び蹴りを繰り出す。

それを綺麗に受け止める先生・・・とても80歳の身体能力とは思えない。


錦戸先生「まずは先生を敬えよ!!」

三誌「年寄りは黙って早く隠居しろよ!!」


三誌が、卍蹴りを先生に繰り出す。



錦戸先生「まだ、そんな歳じゃねえよ!」


ガシ!!


三兄弟「あ・・・・」

錦戸先生は、一斉に3人を捕まえて、地面に叩きつけた。



ボコボコ!!

その後の3人は言うまでもなく、悲惨な目に合った。


錦戸先生「はい、多少ごたつきもありましたが、授業を始めます。」


錦戸先生にボコボコにされ、鼻血を出している工藤パルクール3兄弟・・・

彼らを横に正座させ、授業を始める先生・・・

こんなの今の社会なら体罰として問題なるが、そんなのお構いなしの錦戸先生であった・・・




全生徒がダウンロードしてる、サムライだけが唯一持てるアプリの【ヤマト】には、サムライ校の校舎施設や全教職員の経歴やプロフィールについて詳細に書かれているページがある。


友愛は、その項目の【錦戸】先生のページを見てみる。

先生のプロフィールには、イスラエルの軍事格闘術【クラヴ・マガ】の達人であると書かれていた。


友愛「あちゃ~、あの3人、喧嘩売っちゃっいけない先生に喧嘩ふっかけたみたい・・・」





どうやら、この学校のほとんどの先生は、何かしらの武術の達人みたいだ。





【古流整体学】の【中尾哲郎】先生なんか、躰道の達人らしい。

小柄な身体をダイナミックに動かし、まるでスーパーマンのように異次元の距離からアクロバティックな技を繰り出すヤバい人だ。またキックボクシングや空手なども極めている武術の怪物だ。

ただ、凄い温厚で優しく、丁寧な口調の紳士な先生だ。

自身で整体の病院も経営しており、怪我や骨格の歪みを治す身体のケアのプロでもある。


中尾先生「【古流整体】とは、侍が戦場の中で開発した非常に効果的な手技療法です。

侍の時代の日本では、民間療法が特に発達していました。侍は、怪我をしないよう、非常に効果的な整体術や手技療法を開発していたんです。

皆さんも、身体を動かし鍛錬することも大事ですが、それ以上に身体のケアをすることはもっと大事なんです。立派なサムライへの第一歩は、自分で身体のケアをすることができる自己管理能力を身につけることですね。

もっと言えば、怪我をしない運動の仕方を身につけることですね。」




先生方はみんな【SAMURAI】の資格を持っているから、普通の人より強いのはわかっていたが、それに加え、何か1つ武術を極めてるなんて・・・・

先生方だけで、世界最強の軍隊作れるんじゃないか? 

だってみんな一騎当千なんだもん。





さて工藤3兄弟は、北山先生にこっぴどく怒られたものの、全く反省していなかったらしく他の授業でも
しっかり遅刻を繰り返した。

しかも遅刻による罰則もすっぽかした上、職員室の先生方のペットボトルに底が抜けるドッキリを仕掛けたりするなど、完全に問題児として校内で有名になっていった。

最初は、みんな世界的に有名な3人に対して野次馬のように群がってチヤホヤしていたが、徐々に彼らの
度が過ぎたイタズラにあきれ、近寄らなくなっていった。



つまり、校内の中で浮いちゃったわけである。




そんな、ある日の昼休み・・・


大広間で、友愛、麗太、岩一が食事をしている。


麗太は、スマホで、あるニュースを見ていた。


麗太「東京拘置所から脱獄した死刑囚の朝山宗全、未だ捕まらず・・・怖いねえ・・・」

岩一「俺は、朝山より、その朝山を脱獄させた殺人鬼のほうが怖いぜ。刑務官を皆殺しだろ・・・」


岩一がブルブル震える・・・ 確かに、あの脱獄事件は日本全土を揺るがした大騒動だった。

厳重な警備のもとに管理された東京拘置所に侵入し、刑務官を全員皆殺しにした上、死刑囚を檻から出すなんて前代未聞の凶悪犯罪をやってのけた大量殺人鬼が現れたからだ。

その大量殺人鬼の正体は不明で、現在も朝山と共に逃亡中だとか・・・・


麗太「朝山死刑囚を拘置所から出した正体不明の大量殺人鬼は、追跡してきた法務省の特殊部隊【SeRt(特別機動警備隊)】の隊員23名をサバイバルナイフ1つで皆殺しにした。警視庁は、この正体不明の殺人鬼は、戦闘経験のある軍事関係者ではないかと考え、捜索をしている・・・・ひょえええ~おっかない・・・」

岩一「確かに、一度に何十名も人を殺すなんて、軍人か殺し屋でもない限り無理だよな・・・」


友愛「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」


友愛は、2人の会話を聞きながら、あることを思い出した・・・

そう言えば、最近、東京拘置所の塀から脱獄という形ではないが、もう1人出ていなかったか?

そうだ、最黒慈緑先生だ・・・元大量殺人犯で【日本版切り裂きジャック】の異名を持つ、あのおっかない犯罪学の先生・・・

でも、天道校長が法務省にかけあって、出所させただけの話だし・・・

脱獄ではないからな・・・・




そんなことを、友愛が考えてると・・・


工藤三兄弟 「は~い、そこのデコボコトリオ君たち!!」


突然、めちゃくちゃハイテンションな工藤3兄弟が、友愛たちに話しかけてきた。

ノリノリで、大広間を縦横無尽にパルクールしながら、迫ってくる。


岩一「うるせえな。何がポンポコトリオだ!お前らもトリオじゃねえか!」

一志「いや、ポンポコなんて言ってないよ・・・」

麗太「人と会話をする時は、まず落ち着いて、ちゃんと椅子に座れって親に習わなかったの? それに、いちいちうるさいんだよな、君たち兄弟のアクロバティックな動きは・・・」

二志「酷いな~仕方ないだろ? 僕ら【個】のクラスは、色んな強いキャラを持った子達が多いんだから。
少しでも他の子と差別化を計り、多くの個性の陰に隠れないよう必死に主張しないと埋もれちゃうぜ。」

一体、何を目指してるんだよ!

友愛「いや、多分君らほど強烈なキャラクターは珍しいから、自分達でそんな主張しなくても大丈夫だよ。ていうか頼むから、もう主張しないで!動きがうるさいから。」

と言って、辞めるような連中なら、そもそも先生をなめるような態度はとらないし、職員室にイタズラするようなバカな真似はしないか・・・・

三誌「アメリカじゃ、ダンスやパルクールはコミュニケーションのツールの1つなんだぜ? コミュ障な子供はダンスで話したいことを表現するぐらいなんだから。パルクール界でも【話す前に、まず柵を跳び越えろ。】って言葉があるぐらいだからな。」


と言って、机で頭をつけ回転する三誌・・・・

一志「そうそう!!世界には、言語ではなく、動きでコミュニケーションを取る俺たちみたいな珍しい人種もいるってことよ!」


友愛「いや、そんなに、ずっと動いてて疲れないの?」

岩一「それに、お前ら根っからの陽キャやないか? わざわざそんなめんどくさい真似しなくてもいいじゃん。」


三兄弟「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」


急に黙る三兄弟(ただし、ずっと踊り続けてはいる。)・・・・・



麗太「え?どうしたの?急に黙って・・・」


一志「いや、実はな・・・・」

二志「俺たち、そんなに人とコミュニケーションを取るのは得意じゃないんだ・・・」


はい?


岩一「うそつけ!そんなパリピみたいな話し方の奴が、コミュ障とは言わせねえぞ!」

三誌「俺たち、普通に向かい合って誰かと話すと凄い緊張して、きょどったり、どもったりしちゃうんだよ。」


友愛「え、そうなの?だから今もずっと、そうやってチンパンジーみたいに動き回ってるの?」

一志「チンパンジーみたいって・・・ひどくない?」

二志「動いてると、気分が上がって、緊張もほぐれるから、誰と話す時でも動いていたほうが話しやすいんだ。」

三誌「むしろずっと動いてないと、緊張して何も話せなくなるんだ。」

二志「まあ、一種の病気だな。動いてないとコミュニケーションも取れないっていう・・」


なるほど・・・この三兄弟が、校内で浮いてしまった真の理由がわかった・・・

人と話す時も、ずっと動き回ってるからだ・・・

そりゃ、普通の人なら、この3人がずっと動き回ってるのは、真剣に話を聞かずバカにしてるんだ、と
勘違いしちゃうだろうな・・・

しかし、彼らにとっては、動くことこそがコミュニケーションをやりやすくする1つの手段なのだろう・・・

恐らく校内での、度の過ぎたイタズラも彼らなりの、みんなへの【語り掛け】なのかもしれない・・・

世界的なパルクールスターも、コミュニケーションは苦手という弱点があったのだ・・・



岩一「なんか、バイクに乗ったら性格が変わるみたいな感じだな・・・うん?なんかアニメでそういうキャラいなかったっけ?」

麗太「しかし、兄弟3人揃ってコミュ障とはね・・・また、珍しい・・・・」

三誌「幼い頃、コミュ障が原因で、友達がいなかった俺たちを心配した母親が、パルクール教室に通わせてくれたんだ。その教室でコミュニケーションとは会話だけじゃない、身体を動かすことでも、表現できるってことを学んだんだ。」

岩一「それで、ずっと身体を動かし続けてたら、いつの間にか兄弟揃ってパルクールで天下取ってったわけか・・・」


三兄弟「その通り!!」

3人揃ってバク転する。

麗太「なんか、君ら3人と関わってると、僕らも浮きそうになっちゃいそうだよ。ほら見て、みんなこの空間と距離を取り始めた・・・」


他の生徒たちが、6人を冷めた目で見て、距離を取り始めた・・・


一志「ええやん、ええやん、ハブられ者同士仲良くしようぜ。」


と一志がなれなれしく、岩一の手に肩を置く。


岩一「誰がハブられ者や!」


でも考えてみれば、友愛、麗太、岩一も入学早々、他のクラスメイトに相手にされてなかった・・・

友愛、麗太はまず地味で大人しく影が薄いことから、話しかけてくる子がいなかった。
ていうか、2人の存在に気づく子がいなかった・・・

岩一は、とにかく相撲で鍛えた腕っぷしで、無理なコミュニケーションを取ろうとするから、みんな怖がって近寄らない(いや、ただの乱暴者やん。)



ちなみにリリも、その強気な性格が災いして、女子と上手くいってないみたいだし・・・

冴鶴に関しては、一匹狼の孤高な不良感が出てるせいか、怖がって誰も近寄らない・・・



う~ん、楽しい学園生活どころか、なんだか前途多難な道しか見えない・・・・




友愛「それで、僕らに何か用なの?」

やっと、本題が始まった!と言わんばかりに、三兄弟が揃って大声でこう言った。




工藤三兄弟「僕らと、一緒に部活動見学に行きませんか?」














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