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12歳の少年がサムライになれる学校へ

新潟ロシア村での冒険

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「こういう行事ごとって、大抵バカが騒ぐんだよな・・・・・」


新潟への研修遠足当日・・・・

東京第二中学の一年生は、電車とバスを使い新潟県へ向かう。


バスの中、先生の注意も無視して、楽しそうに騒ぐイジメトリオたち・・・

高い費用をかけて、絆作りだの社会見学だのもっともらしいお題目を掲げて、こんなことやる意味ある?


と思いながら、友愛は静かに隅っこの席で本を読んでいる・・・・


陰キャにとって、隅っこが一番落ち着く・・・



まあ、バカトリオたちの大騒ぎには慣れている・・・

小学校の頃から、奴らの大声は日常茶飯事だったからだ・・

友愛にとっては大声で騒ぐ男子より、ひそひそと噂話する女子グループのほうが耳障りだった。


僕のことを噂してバカにしているのか・・・いつもイジメられている僕を・・・


こんな風に思うのは、自意識過剰かもしれないが、女子が近くで固まって噂話をしているのは、まるで宇宙人が会話しているように見えて、読書に集中できない・・・・

大声で奇声を発せられるより、聞こえるか聞こえないぐらいの感覚でひそひそと噂話をされるほうが、虫の羽音と同じぐらい気持ち悪い・・・

内心、話の内容が気になってしょうがない・・・

だから、自分をバカにしているんじゃないか と自意識過剰になってしまう友愛だった・・・・




そんなイライラしている友愛をジッと見ていたリリは女子の群れの中から離れ、彼に近づき・・・


「ねえ、友愛、夜の自由時間で一緒に新潟の町回らない?」



ま、まあ・・・こういう行事も悪くないかも・・・と思う単純な友愛であった。




生徒たちは、新潟に到着し、ホテルに荷物を置く。

そして、ホテルの豪華なバイキングを食べた後、先生の
説明も一通り済んだ所で


いよいよ、自由時間になり、友愛とリリは待ち合わせしていた場所で・・・・





友愛「あの子たちと、一緒に回らなくていいの?」

友愛は、さっきバスでひそひそ噂話をしていた華やかな女子グループの子たちを見ながら、リリに聞く。

リリ「うん、あの子たちの話つまらないから・・・」

友愛「そ、そう言えばあの子たち、バスで何を話していたの?」


リリ「誰かと誰かが付き合っただの・・・・くだらない噂話だよ。

土曜にイオンモールで隆盛君と真子ちゃんを見ただの。

F組の康太君と加奈ちゃんが付き合ったらしいだの。


スクープなら私にお任せみたいな感じで、なぜか情報をめちゃくちゃつかんでる芸能記者みたいな子がいるのよ。  

バカみたい。」


いや、めっちゃ暴露するやん、リリさん!

まあ、でも僕のことをバカにしてたわけじゃなかったのか・・・良かった。

そもそも考えてみれば、イジメられる以外で目立つことのないカッコ悪い僕を女子が、関心を持つわけがないか・・・

リリみたいな珍しい子じゃない限り・・・・



それにしても、確かに芸能記者みたいな情報収集力だな・・
女子って生き物は・・・・


そういう恋愛関係にうとい中学男子にとっては、リリが話した内容は結構刺激的だ・・・



友愛「でもさ、僕と一緒にいて、なんか変な噂がたったら、リリの方が迷惑しない?」

リリ「気にしないで、誘ったのは私だし。それに友愛といたほうが面白いし・・・」


僕といて、何が面白いんだか?

わからないけど、夢なら覚めるな!

一生に一度かもしれないんだ!こんな可愛い子と一緒に歩けるのは・・・・

後で、イジメトリオたちにしばかれてもいいから、今のこの時間だけは、僕を幸せにしてくれ・・・

と夜空を仰ぐ友愛・・・・・



リリ「そうだ、友愛・・・あのね、実は会わせたい人がいるの。」


会わせたい人? 急になんだろう?



大堂「ヒューヒュー、仲良くおデートですか?お2人さん」

シャクレ「冴鶴君に守ってもらってから、随分調子乗ってるんじゃない?」

湯河「ここなら、冴鶴もいないし、もう1度己の身の程をわからせる再教育にもってこいだな。」


げ、バカトリオだ・・・・せっかく良い時間を過ごしていたのに・・・・
邪魔しやがって・・・

だが、夢がわりと早く覚めて良かったかも・・・

このまま夢がずっと続いてたら、変な勘違い起こしていたかもしれないし・・・・


大堂「おい、友愛・・・お前に償いのチャンスをくれてやる。俺たちと一緒に肝試しにこい。」

友愛「え・・・・」

シャクレ「本来はお前を連れてく予定だったんだぞ。」

湯河「お前がホテルにいなかったから、仕方なく、こいつを連れていくしかなくなったんだよ!」


ニヤニヤ笑う大堂の右横に、怯えてガクガク震えている友愛と同じぐらい小さな男子生徒がいた・・・・

あ、この子・・・別のクラスのいじめられっ子だ・・・・

なるほど・・・・僕がリリと町を回っていたから、イジメトリオは肝試しの餌食にする予定だった僕をホテルで見つけられず、他のクラスの弱い子を代わりに餌食にしたのか・・・・

とことん、しょうもないバカな奴らだ・・・・


いや、知らねえし・・・・

僕は今、せっかく楽しい時間を過ごしていたのに、奴らの勝手な遊びのせいで邪魔されてたまるか・・・・

でも、僕がホテルでトリオたちに捕まらなかったせいで、この子が餌食になっちゃったのか・・・


友愛「しょうがないな・・・・わかった、いくよ。ごめんねリリ。せっかく誘ってくれたのに・・・」

リリ「ダメよ、友愛。バカな誘いにのっちゃ!何されるかわからないわよ!先生に報告しよう!」

友愛「先生の注意を聞くような連中じゃないよ。」


イジメトリオ3人 「その通り!」


口を揃えて頷くバカトリオ・・・・


そこだけ同調すんな!


友愛「ただ、条件がある。僕がついてくから代わりに連れて来たその子は解放してくれ。」

友愛は、大堂に無理やり連れてこられた別のクラスの子を解放するように言った。

大堂「へ、女の前だからってカッコつけやがって・・・わかったよ。」


こうして、友愛はイジメトリオたちの肝試しに付き合わされることになったが・・・・


もう1人・・・・


リリ「私もいく!」






さて、肝試しと行ってもどこへ行くのか?


リリと友愛は、とりあえずイジメトリオについて行ってるが・・・・・

とっくに、さっきまでの町の灯りは通り過ぎ、暗~い暗~い山の森の中に来ていた・・・・・

一体、トリオたちは、どこへ行こうというのか?



友愛はリリに深く感謝していた・・・・

イジメトリオたちには、何度かこういう風に無理やり、変な場所に連れてかれ、ストレス発散道具としてイジメられてきた・・・

今回は、男勝りで気の強いリリがいるから、歩いてるときも奴らにはイジメられない。



リリ「で、肝試しする場所は、どこなわけ?」


リリはあきれたように、トリオたちに問う。


大堂「ロシア村だよ。」


リリ「ロシア村?!あんた、こっからロシア村までどれぐらいの距離あると思ってんの?」


友愛の顔も真っ青になる・・・・

新潟ロシア村って・・・あのネットで有名なおっかない心霊スポットじゃん・・・ヤバいって、流石にあそこは・・・・本当に霊が出るって噂じゃん。

リリ「大体さ~、あんたたち3人は普段から校則破ってるから自由時間過ぎて出歩いてても、先生だって大して疑問抱かないだろうけど・・・私と友愛が、帰ってこなかったら大騒ぎになるわよ。普段良い子で生活してるんだからさ。」


確かに・・・・それに今からロシア村なんか行ったら確実に朝帰りになるだろ・・・・

中学生が朝帰りって・・・警察沙汰だろ・・・・


リリ「そもそも、3人だけで行けばいいじゃないの・・・・何で友愛を連れてく必要があるわけ?」


黙るトリオたち・・・・・

その様子を見て、ニヤニヤするリリ・・・・


リリ「はは~ん、わかった・・・怖いのね。」


大堂「バ、バカ野郎!!怖くなんかねえよ!」

シャクレ「で、でもよ~最近俺らYourTubeチャンネル開設したんだよ!」

湯河「そんでもって、視聴者から【新潟ロシア村】で肝試ししてくださいって要望があったから、ちょうどネタにも困ってたし、遠足で新潟まで行くからちょうどいいと思ってな。」

大堂「友愛は、俺らの動画のゲスト役だ。安心しろ。俺らは、顔出し無しで動画やってっから。」


リリ「へ~登録者5万人。最近始めたわりには凄い数ね。」


友愛は素直にリリが凄いと思った・・・

イジメトリオたちと、対等に会話できる生徒はほとんどいない・・・

みんな怖がって萎縮するからだ。

友愛なんか「どこいくの?」って質問しただけで、ぶん殴られるだろう・・・・

リリか冴鶴ぐらいだろう・・・イジメトリオと対等に渡り合えるのは・・・・





新潟ロシア村・・・・・1990年代初頭に日本とロシアの文化交流を目的に造られた
巨大テーマパークである。

新潟県北蒲原郡笹神村(現:阿賀野市笹神地区)にあり、現在は廃墟で、その地に荒れ果てた姿で残っている。

大きな高原と緑に囲まれた土地の中にあり、昼間、遠くから見れば綺麗な西洋のお城にも見えなくはない。

ディズニーを思わせるような、寂れた教会の塔の中は・・・

火災で真っ黒になった部屋や  散々荒らされ、年月とともに荒れ果てたボロボロになった部屋・・・

いたずら書きや割られた窓  どこから持ち込まれたのかわからぬ大量の毛布


塔周辺の敷地には一面草が生い茂っており、古びたがれき類、レンガが落ちている・・・



さて、そのような不気味かつ奇怪な廃墟【新潟ロシア村】だがネットではいくつかの心霊現象伝説が語り継がれている。


それが、こちらの4つである。


① 廃墟の内外で写真撮影をすると、辺りを浮遊しているオーブが写る。
② 火災が起きたホテル廃墟の内部に時折、謎の絶叫が響き渡る。
③ ホテルと教会のとくに地下部分では、常に誰かの視線を感じる。
④ 深夜に敷地へ侵入すると、年老いた女の幽霊が追いかけてくる。



とまあ、このような本当かどうか疑わしい噂がネット民の間では、有名な心霊スポットである・・・・

元々、創立当初から経営も上手くいっておらず、悪い気を引き寄せる土地なのかもしれない。


最近では、ユーチューバーたちがエンターテイメントのひとつとして実際に現場へ足を踏み入れている。

あの、お城や教会の廃墟感を見て、野次馬がよらないわけもない・・・

もし、知らない人がいたら、ネットで調べてみてほしい・・・

だいぶ、古いものだが、ネットには今でも【新潟ロシア村公式サイト】が残っているはずだ。




そんな恐ろしい不気味な廃墟についた友愛、リリ、イジメトリオたち・・・・・

夜の闇の中に映し出された廃墟の城は流石に5人をビビらせる・・・


大堂「よし、中に入ろうぜ…・」

カメラを持った大堂が、友愛をつついて、中に入るよう促す。

身体はデカいが、気は小さいんだな・・・・と友愛は大堂を冷めた目で見る・・・・


スマホのライトを照らしながら進んでいく・・・・

入り口周辺から早速、色んなゴミが散乱している・・・

恐らく肝試しに来た人々が捨てていったゴミだろう・・・弁当箱、空き缶、ガラス がれき類など・・・・


屋内も中々酷い・・・・・

天井の丸いロシアの絵は綺麗に残っているが、それさえも不気味に見える床のガラス片やゴミにまみれた
酷い状態・・・

相当荒らされたんだな・・・・


3階に上がると、火事で真っ黒焦げになった部屋がある・・・

その部屋には、全体は真っ黒焦げなのに・・なぜか燃えた様子のない綺麗な椅子が・・・・



その時だった!


部屋の隅で何か黒く大きなモノがうごめいていた・・・・

それは黒く大きな布を覆いかぶさった人の形をしていた・・・・

幽霊か?


「うわああああああ!!」


イジメトリオたちは悲鳴を上げて逃げる・・・・

リリも腰が抜けたように、恐怖で座り込んでしまう・・・・


友愛も恐怖でガクガク震えてしまう・・・・

な、なんだろう・・・あれ、こんな光景どこかで見たことがあるような・・・

友愛はなぜか、急に眠たくなってきた・・・・

黒い人型のモノは急接近してくるけど、そんな恐怖も、どうでもいいほど強烈な眠気が友愛に襲ってくる・・・・

そのまま友愛は眠ってしまった・・・




















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