俺様執着男が忠犬になれと命じてくるがアンタに飼われる気などない

１７

　シャワーから出てくると、（気遣いもなく）先にシャワーを済ませていた京馬きょうまはベッドの中で小さく寝息を立てていた｡

　閉じたまぶたを飾るまつ毛は黒々と長く、いつもの暴君めいた仏頂面が少しだけ幼く感じられた。

（ま、無愛想さなら俺もいい勝負だが）

　この男にとって俺はなんだろう？

　仮に、従順な犬になったとしたら、それは〝恋人関係〟ということになるってことか？

　だが、コイツはハッキリと『俺に恋心は抱くな』と言った。

　別に恋心なんか抱いちゃいねぇが、流石にこんだけヤりまくったらまったくの赤の他人ってわけでもねぇだろ。

　漆黒の艶やかな頭を撫でてやったら、京馬が小さく「遥はるか……」と寝言をこぼすから、思わず目を見開いてしまう。

（何でドキドキすんだよ俺……）

　アンタは傍若無人に俺様な態度で俺を『犬』と呼んでりゃあ良いんだよ――変な態度見せんなよ。

　自分の中で揺らぎ始めている感情が、よくわからない何かの着火剤で燻くすぶり始めている。

　その正体が何なのかわからなくて酷くイライラした。

（間違っても恋じゃねぇはずだが……）

　だが、この暴君に振り回されている現状が、何だか悪くねぇと思っちまうこの気持ちは何だ？

　また、次も――これからも付き合ってやってもいいかと思っちまうこの気持ちは何だ？