俺様執着男が忠犬になれと命じてくるがアンタに飼われる気などない

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「でさぁ、そいつが超塩対応のくせに俺に忠犬になれとか命じてくんだよ。しかも恋愛はしねぇからな？とか上から目線で言ってきてマジムカつく」

「でも身体の相性はピッタリだったんだ？」

（ムカつくことにそれは否めねぇ）

　いまホテルで会話しているのは『グレシア』で知り合って友達になったタメの男――最上もがみ瑠衣るい――だ。

　俺の人相がタチだと思って声を掛けてきたはいいが、いざホテルにチェックインしたら共にネコだったという経緯があってからというもの、性癖をオープンに話せる唯一のダチだ。

　互いに容姿が目立ち、『グレシア』では声が掛かってゆっくり話せないので、場所はどこでもいいんだが、何となく暗黙の了解で、くつろげるホテルで会うことが多い。

「でも忠犬になれとかヤバすぎるオッサンじゃね？　しかもヤってる時、首輪とか言って首絞めてくんだよ。普通じゃねぇって」

「話聞いてる限りじゃ執着されてると思うんだけどなぁ。気に入らなかったら忠犬になれとか言わなくない？」

「今は拾った犬なんだそうだ。今後の躾で飼うとかムカつくこと抜かしてきやがる」

　瑠衣が備え付けの冷蔵庫からミネラルウォーターを「ん」と手渡してくれる。

　差し出されるままに無言で受け取ったボトルのキャップを開けて一息に飲み下したのだが、そこで瑠衣がニヤニヤとこちらを見つめていることに気が付いた。

「僕はそのオジサン、遥のいい相手になると思うけどなぁ。僕もそんな風に執着されてみたいよ」

「うぜぇだけだぞ？　アイツ、どこほっつき歩いてっかわかんねぇからしばらく『グレシア』に顔出すのやめようかな。また捕まって塩対応なくせに忠犬になれとかわけわからんこと言われるのウンザリだからな」

「身体の相性ピッタリはなかなか抜け出せないと思うけどー？」

（身体の相性はピッタリでも性格に難がありすぎるからな……）

　瑠衣がクスクス笑いながら何かを予言するように窺ってくるから、俺は思わず小さく吐息を落としてしまった。


（なかなか上手くはいかねぇもんだ）