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「宇大、長い間マジでお疲れさん。有終の美とはまさにこのことだな。時也さん、涙ちょちょ切れるかと思ったぜ」
今日は俺の引退イベントで、『ネロック』を貸し切り、亜美さんを始めとする太客たちが盛大なシャンパンタワーの数々を入れてくれて、一晩で数千万の売上を上げたらしい。
「時也さん、本当に長い間お世話になりました。時也さんが目をかけてくれなかったら、俺なんてナンバー入り出来なかったでしょうし、真夜との今もありませんでした。感謝してます」
真夜は俺の背中に引っ付いて「えーん! 寂しいー!」と瞳を潤ませるから「一緒に住んでるんだから毎日会えるだろう」と溜め息を吐くと、ムッと唇を尖らせた。
「だってプライベートでは宇大くんにやられっぱなしだけど、店では俺の方が立場が上じゃん」
「そうだな……今晩も覚悟しておけ」
ニヤリと笑って見せたら真夜が途端に頬を染めたと同時、「あのー……」と時也さんが呆れ顔で割行ってきた。
「最後の最後まで俺は惚気られっぱなしってわけ? くそー、俺にも本命のかわい子ちゃん出来ねぇかなぁ。そん時はお前らの前で盛大に惚気けてやるから」
「時也さんならいつでも選り取りみどりじゃないですか。その時は紹介してくださいよ」
言ったら、真夜は「時也さんの本命になる子って大変そうー」と呟くから俺も思わず苦笑してしまった。
「何言ってんだよ、真夜。俺に本命が出来たらお前ら以上にラブラブになるだろうから楽しみにしておけ。まっ、今夜はあんま盛り上がんなよ? 新婚さん」
「残念だけど盛り上がっちゃいまーす! ねっ? 宇大くん」
「だから恥じらいのない男はつまらんのじゃなかったのか?」
また二人の世界に突入し出すと、時也さんはやれやれと肩を竦めて、「まっ、お前らが幸せそうなら俺も嬉しいわ。明日っからは宇大をからかえねぇから、惚気話は真夜に聞くか」と笑った。
これから俺たちは各々の道を歩いて行くけれど、きっとみんな幸せになれるだろう……そんな確信めいたものを感じながら、俺のホスト人生は幕を閉じた。
時也さんにかわい子ちゃんが出来るのはまた別のお話。
-END-
「宇大、長い間マジでお疲れさん。有終の美とはまさにこのことだな。時也さん、涙ちょちょ切れるかと思ったぜ」
今日は俺の引退イベントで、『ネロック』を貸し切り、亜美さんを始めとする太客たちが盛大なシャンパンタワーの数々を入れてくれて、一晩で数千万の売上を上げたらしい。
「時也さん、本当に長い間お世話になりました。時也さんが目をかけてくれなかったら、俺なんてナンバー入り出来なかったでしょうし、真夜との今もありませんでした。感謝してます」
真夜は俺の背中に引っ付いて「えーん! 寂しいー!」と瞳を潤ませるから「一緒に住んでるんだから毎日会えるだろう」と溜め息を吐くと、ムッと唇を尖らせた。
「だってプライベートでは宇大くんにやられっぱなしだけど、店では俺の方が立場が上じゃん」
「そうだな……今晩も覚悟しておけ」
ニヤリと笑って見せたら真夜が途端に頬を染めたと同時、「あのー……」と時也さんが呆れ顔で割行ってきた。
「最後の最後まで俺は惚気られっぱなしってわけ? くそー、俺にも本命のかわい子ちゃん出来ねぇかなぁ。そん時はお前らの前で盛大に惚気けてやるから」
「時也さんならいつでも選り取りみどりじゃないですか。その時は紹介してくださいよ」
言ったら、真夜は「時也さんの本命になる子って大変そうー」と呟くから俺も思わず苦笑してしまった。
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「残念だけど盛り上がっちゃいまーす! ねっ? 宇大くん」
「だから恥じらいのない男はつまらんのじゃなかったのか?」
また二人の世界に突入し出すと、時也さんはやれやれと肩を竦めて、「まっ、お前らが幸せそうなら俺も嬉しいわ。明日っからは宇大をからかえねぇから、惚気話は真夜に聞くか」と笑った。
これから俺たちは各々の道を歩いて行くけれど、きっとみんな幸せになれるだろう……そんな確信めいたものを感じながら、俺のホスト人生は幕を閉じた。
時也さんにかわい子ちゃんが出来るのはまた別のお話。
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