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翌日――。
「時也、ごめんね?」
美聖と一緒に時也さんの病室を訪れるなり、美聖は涙を流しながら時也さんと対面した。
一酸化炭素中毒で意識を失った場合、煙を吸った数週間後に記憶障害や抑うつ、運動障害といった後遺症が起こる場合があるらしいのだけれど、時也さんにはわずかな運動障害(振戦)しか残らず、奇跡的な回復を遂げているらしい。
「おーおー、美聖さん。メッセージ送ったの見てくれてねぇの? 謝るのは俺だって言ったろ? 傷付けてマジでごめん。そんな泣かないでくれ。アイライナーよれるぞ?」
「ウォータープルーフよ! 本当にごめん。時也。バカなことして傷付けたのは私の方よ。ちゃんとわかったから。時也の気持ち。ずっと謝りたかったの……ごめんね?」
すると時也さんはベッドの上で急に土下座を始めるので、何事だろうかと姉弟そろって目を見開いてしまう。
「先に婚約しちまった後で悪ぃーんだけど……聖ちゃんとの結婚をお許しください! ヤバい。 今の俺、緊張で足プルップル。マジで子鹿なのでよろしくお願いします! お姉様!」
時也さんの渾身の結婚承諾に美聖が吹き出して、俺は恥ずかしすぎて目も当てられなくなった。
「私を小姑にするなんてさすが時也だわ。不束者な弟ですが、どうぞもらってやってちょうだい。ノークレームノーリターンでね」
「俺はカーナビに遠回りされても従う小心者です! 絶対にクレームもリターンもしません! 聖ちゃんのことは生涯をかけて大切にするんで何卒よしなに! お姉様!」
「はいはい。カーナビには逆らいなさいよ。時也の婚約者はもう私じゃなくて聖だってわかったから、末永くお幸せにぃ」
二人の会話にすっかり外野気分でクスクス笑っていると、美聖は「じゃ、私はそろそろ撮影に行くね? 二人っきりにしてあげるからキスでもしてなさいな」と冷やかしながら立ち上がった。
「美聖さん、本当にありがとうな? 俺はもう店辞めるつもりだからホストとしては会えねぇと思うけど、義理のお姉様ってことだから、たまには三人で会おうな?」
美聖が「厄介な義弟が出来たもんだわ。出来れば聖のために死ぬまでちゃんと義弟でいてちょうだい」と溜め息を吐いて病室から出て行った。
「よっしゃ! 美聖さんにも認められたし、改めて結婚してくれますか? 聖ちゃん」
「本当に、死ぬまで一緒にいてくれますか?」
「――だって運命共同体だろ?」
その言葉に胸が詰まって、やっと時也さんを独占出来る幸福に、「はい」と返した声は涙を堪えたせいか、わずかに震えていた。
翌日――。
「時也、ごめんね?」
美聖と一緒に時也さんの病室を訪れるなり、美聖は涙を流しながら時也さんと対面した。
一酸化炭素中毒で意識を失った場合、煙を吸った数週間後に記憶障害や抑うつ、運動障害といった後遺症が起こる場合があるらしいのだけれど、時也さんにはわずかな運動障害(振戦)しか残らず、奇跡的な回復を遂げているらしい。
「おーおー、美聖さん。メッセージ送ったの見てくれてねぇの? 謝るのは俺だって言ったろ? 傷付けてマジでごめん。そんな泣かないでくれ。アイライナーよれるぞ?」
「ウォータープルーフよ! 本当にごめん。時也。バカなことして傷付けたのは私の方よ。ちゃんとわかったから。時也の気持ち。ずっと謝りたかったの……ごめんね?」
すると時也さんはベッドの上で急に土下座を始めるので、何事だろうかと姉弟そろって目を見開いてしまう。
「先に婚約しちまった後で悪ぃーんだけど……聖ちゃんとの結婚をお許しください! ヤバい。 今の俺、緊張で足プルップル。マジで子鹿なのでよろしくお願いします! お姉様!」
時也さんの渾身の結婚承諾に美聖が吹き出して、俺は恥ずかしすぎて目も当てられなくなった。
「私を小姑にするなんてさすが時也だわ。不束者な弟ですが、どうぞもらってやってちょうだい。ノークレームノーリターンでね」
「俺はカーナビに遠回りされても従う小心者です! 絶対にクレームもリターンもしません! 聖ちゃんのことは生涯をかけて大切にするんで何卒よしなに! お姉様!」
「はいはい。カーナビには逆らいなさいよ。時也の婚約者はもう私じゃなくて聖だってわかったから、末永くお幸せにぃ」
二人の会話にすっかり外野気分でクスクス笑っていると、美聖は「じゃ、私はそろそろ撮影に行くね? 二人っきりにしてあげるからキスでもしてなさいな」と冷やかしながら立ち上がった。
「美聖さん、本当にありがとうな? 俺はもう店辞めるつもりだからホストとしては会えねぇと思うけど、義理のお姉様ってことだから、たまには三人で会おうな?」
美聖が「厄介な義弟が出来たもんだわ。出来れば聖のために死ぬまでちゃんと義弟でいてちょうだい」と溜め息を吐いて病室から出て行った。
「よっしゃ! 美聖さんにも認められたし、改めて結婚してくれますか? 聖ちゃん」
「本当に、死ぬまで一緒にいてくれますか?」
「――だって運命共同体だろ?」
その言葉に胸が詰まって、やっと時也さんを独占出来る幸福に、「はい」と返した声は涙を堪えたせいか、わずかに震えていた。
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