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真夜くんと会ったあの日から時也さんに会えていない。
もうかれこれ一週間以上、時也さんに触れられていないし、メッセージをやり取りしたりするのみだ。
メッセージには『今日も会えなくてごめん』だとか、『忙しくてごめん』とか、会いたいのだと言う旨が綴られているけれど、早朝に俺を呼んでくれることはなかった。
時也さんは忙しい、それはわかっている。
店に客として行けばいいのかもしれないけれど、今は時也さんが他の女を接待する場面を見たくなくて。
俺の生活に障らないように早朝に呼び出さないこともわかっているし、時也さんが眠る時間も必要だから押しかけるのも躊躇われる。
「聖」
リビングで悶々としていると、これから『ネロック』にでも出掛けるのだろう、やけに着飾った美聖に声を掛けられた。
「何?」
「あんた、まだ時也に遊ばれてるの?」
「俺は遊ばれてなんかいない。美聖こそ勘違いしてるんじゃないの? 時也さんにとって美聖はただの客だよ。俺は時也さんの〝特別〟だから」
そう言ってのけると、美聖は口の端を吊り上げた。
「知ってる? ナンバーツーの真夜が、客同士のケンカの仲裁に入って二階のVIPルームの階段から落ちて靭帯断裂して入院してるって」
「……え? 真夜くんが……?」
「あんたの疫病神が早速祟ってるんじゃない? 時也の周りを不幸にしてる。これ以上時也と一緒にいたら、次は時也の番かもしれない。時也を殺したら許さないから」
そうだ――。
時也さんと一緒にいたいんだということばかり考えていたけれど、俺は疫病神だったんだ――。
時也さんは俺か美聖が嫉妬に狂って刺すかもしれないとばかり考えていたけれど、真夜くんのように何らかの事故に遭わせてしまう可能性もあるんだ……。
そう考えたらたちまち怖くなって、思わず自分の身体を抱きしめて震えを抑えようとしたけれど止まってはくれなくて。
「早く時也から離れてちょうだい。聖はもう恋愛なんてする資格がないのよ。あんたに触れた手で時也に触れられていると思うだけで気が狂いそうになるの」
それだけ言って美聖は玄関へ向かった。
――次は……時也さんの番?
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