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第8話
しおりを挟む 「お世話になりました」
引継ぎも無事に終わり、今日冬樹は会社を退職することになった。
「今までお疲れさまでした。何かあれば、直ぐに戻ってきていいんですからね」
不岩や、同僚たちが温かい言葉をくれる。その言葉ににっこりと笑って冬樹は深く頭を下げ、長年お世話になった会社をあとにした。
冬樹を見送る背中にポツリと、不岩が届かない言葉を投げかけた。
電車を乗り継ぎ、シャラントで唯一海外と交易のある港へ辿り着く。そこからは船でロクッツ大陸へ。その後は車で麓の村に向かう。半月も掛かる長旅になったが、ようやく村に辿り着いた。
「一緒に来る予定だったんだけど、結局一人で来ちゃったな」
シャラントに帰る時はヘリで一気にだったのでロクッツ大陸のどこにも寄っていない。今回も、絶対寂しがっているだろうクトーの為にかなり急いで旅をしていたので、特に観光などはしていなかった。
「気配を察知して来てくれるって不岩様は言ってたけど……」
信じていない訳ではない。そうでなければ、不岩が冬樹を見つけられた理由がわからないからだ。それでも、本当に来てくれるか不安になる。
この村に着く前、冬樹は服を着替えた。きっと私を見つけたらクトーは思いっきり抱きしめてくるだろうから。そう思うのに、来てくれないかもなんて思いもする。こんな風に気持ちがあべこべになるのは初めての経験で、冬樹は心臓をドクドクと期待と不安に高鳴らせつつ村を進む。
「あんた!竜さんの嫁さん!?」
突然、見知らぬ人に声を掛けられ冬樹はきょとんとしつつ頷いた。
「あぁ、やっと来てくれたのか!ほら、竜さんはこっちだよ、着いて来てくれ!」
走るように歩き出す村人に、冬樹は慌てて後に続く。
「もう四日も山側の出口に居座られて大変なんだ。急にぽっぽと暖かくなったと思ったら、何を考えたんだか砂漠の国みたいに熱を放出しちまったり。いい人なんだけどさ、これ以上熱かったり寒かったりが続くとこっちも参っちまうからね。どうしたんだって聞いたら嫁さんの気配がするから待ってるんだなんて言うだろ?だから私らもずっとあんたが来てくれるのを待ってたのさ」
早口で理由を説明され、思わず笑ってしまった。ソワソワと落ち着き無いクトーの様子が頭に浮かぶ。四日も前から待っていてくれたことが嬉しい。
「うわっ、熱いねぇ……」
冬樹を案内してくれた村人が、これ以上近づけないとクトーのいる場所を指差してから早々に退散してしまう。冬樹はその背中に感謝の言葉を掛け、クトーが居るという場所を見る。
クトーは多分自分で運んできたのだろう、石の椅子に腰掛けていた。大股に足を開き右足でイライラと貧乏揺すりをしつつ腕を組んでいる。石はどうやら一度融け掛かったらしく、滴るような形で固まっている箇所があった。
このまま近づくのはもしかして危険なのではないだろうか?思い切り高熱を放出して、村を炎に包んでしまったりしないだろうか?冬樹はそう考え、一人村人を捕まえると、なんとかクトーがもう少し村から離れるよう説得してもらうことにした。
運悪く冬樹に捕まった村人は中々度胸のある若者らしく、さっさとクトーの元に向かうと何事かを説明し、その言葉にクトーが頷いた。
「これで任務完了かな?お嫁さんに逢えた喜びで村を壊滅させられると困るから、離れてくれるように言っといたよ。お嫁さんが村に着いたら照明弾を打ち上げるって言っておいた。だから、それを見たら気持ちを落ち着けてから村に来てくれってね。お嫁さんも、村の出口から離れ気味にしててくれると嬉しい」
中々頭の回る人のようで助かった。
「一度家に戻るって言ってたけど、もうそろそろ村との距離は良さそうかな?」
「そうですね、クトーの足ならもうだいぶ離れたと思います」
「それじゃ、照明弾を撃つからお嫁さんは村から出てね」
青年の言葉に従って、クトーが占拠していた村の出口からさらに進んだ場所で立ち止まる。
暫くすると、大気を劈くような爆音が響き、一筋の煙が空へと上った。その直後、山側からも爆音が響く。
冬樹は雪崩が起こったらどうしようと不安になったが、特に何事もなかったようだ。
ほっと息をついた瞬間、体が宙を舞う。
「ひへっ!?」
ぽーん、と空高く体が浮いた。眼下にはどうやら冬樹を抛り投げたらしく両手を高く掲げるクトーの姿。
「フユキー!」
落下する冬樹の体をしっかりと抱きとめ、そのまま強く抱きしめる。
「……愛情表現が、おかしいと思う」
落下の恐怖にドキドキと脈を打つ心臓を押さえて冬樹はクトーを睨む。
「行くぞ!」
冬樹の言うことを無視してクトーは巨大な猫型の竜に変化すると、今度は冬樹の首根っこを噛んでまたも抛り投げる。
「ぎゃぁぁぁあ!」
今度は背中で冬樹を受け止めると、風を切って走り出した。
「ちょっ!ちょっ!まっ……!」
もちろん冬樹の悲痛な叫びは無視された。
~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~
何とか鱗に掴まりクトーの背に揺られていると、一部大きく大地が抉られた場所を通過した。
後から話を聞くと、喜びと興奮を抑えるためにクトーがその場所を殴ったらしい。照明弾の後に響いたあの音の正体である。
久々に見たクトーの家は、その面影を無くしていた。
石造りではあるが、レンガのように一つ一つ重ねられた外観は、東の大陸に良く見られるもの。何を素材にして作ったのか、窓ガラスっぽい素材のものが嵌った窓もある。
ただし、白い外観と打って変わって、中に入るとワインレッドに統一されているのは変わらない。クトーの鱗を素材にして作っている以上仕方がないのだが、どうにか染色出来ないか実験してみようと冬樹は思った。
「ここがリビングで、こっちがキッチンな!食材はここに作った地下倉庫に入れておけばいい。外に通じる穴を作ったから、そっちから雪を入れれば十分れーぞーこって奴と同じ役割すんだろ。で、こっち!」
人型に戻ったクトーが冬樹の手を引いて家の中を歩き回る。紹介されたダイニングには大きな石テーブルと椅子が数えて十二脚。一人きりで生活していたクトーだが、これからは友達と呼べる人たちとこのテーブルを囲めるといいなと冬樹は思った。きっと、そういった意図もあっての椅子の数だろう。
「こっからあっこまでが子供部屋な。一応多めに見積もって十室用意したが、まぁそれ以上になったら増築するか」
「は?」
理解は出来た。己の体を竜に変化させることが可能だとわかった時から、クトーの傍に居ると決意した時から、何れクトーとの間に子供を儲けるだろうと思っていた。しかし、子供部屋を十室とは何事かと、冬樹は目を見張る。クトーは多くて十人、冬樹に子供を産ませるつもりらしい。つまりダイニングで見た十二脚の椅子は、誰かを招待するためではなく、クトーと冬樹、そして何れ生まれる十人の子供たちの為のものだ。
驚きの家族計画に眩暈がするが、そんな冬樹に構うことなくクトーは先へと進む。
「んで、ここが俺たちの寝室!」
通された部屋は、ワインレッドに統一されている以上、爽やかとか言えない……むしろ若干エロティズムに満ちた部屋になっていた。
まぁそれも仕方がないと自分を納得させ、部屋をよく検分しようとした矢先、クトーが噛み付くように冬樹にキスをする。
貪るような口付けを驚きつつ受け入れている。押され気味で、思わず足を引いて二、三歩下がるとベッドにぶつかり二人して倒れこんだ。
「っ……ふっ…」
やっと離れた唇から荒く息を吐き出すと、その吐息すら飲み込むようにまた唇を塞がれる。そうされる間にもクトーの手は冬樹の体をまさぐり、気がつけばコートの前身頃は開けられ、中に着ていたハイネックは胸元までたくし上げられている。
「んぅっ……」
冬樹がクトーの背を叩くと、やっと唇が離れた。
「ちょっとっ…急過ぎ……」
冬樹の訴えに、クトーは灼熱に燃え上がる瞳を向ける。
「もう我慢出来ねぇし、する必要もねぇ」
それだけ言うと、クトーは冬樹の全てを奪いつくさんと動き、その欲望を冬樹の中にぶちまけた。
冬樹には、ただ甘く切なく鳴き続けることしか出来なかった。
引継ぎも無事に終わり、今日冬樹は会社を退職することになった。
「今までお疲れさまでした。何かあれば、直ぐに戻ってきていいんですからね」
不岩や、同僚たちが温かい言葉をくれる。その言葉ににっこりと笑って冬樹は深く頭を下げ、長年お世話になった会社をあとにした。
冬樹を見送る背中にポツリと、不岩が届かない言葉を投げかけた。
電車を乗り継ぎ、シャラントで唯一海外と交易のある港へ辿り着く。そこからは船でロクッツ大陸へ。その後は車で麓の村に向かう。半月も掛かる長旅になったが、ようやく村に辿り着いた。
「一緒に来る予定だったんだけど、結局一人で来ちゃったな」
シャラントに帰る時はヘリで一気にだったのでロクッツ大陸のどこにも寄っていない。今回も、絶対寂しがっているだろうクトーの為にかなり急いで旅をしていたので、特に観光などはしていなかった。
「気配を察知して来てくれるって不岩様は言ってたけど……」
信じていない訳ではない。そうでなければ、不岩が冬樹を見つけられた理由がわからないからだ。それでも、本当に来てくれるか不安になる。
この村に着く前、冬樹は服を着替えた。きっと私を見つけたらクトーは思いっきり抱きしめてくるだろうから。そう思うのに、来てくれないかもなんて思いもする。こんな風に気持ちがあべこべになるのは初めての経験で、冬樹は心臓をドクドクと期待と不安に高鳴らせつつ村を進む。
「あんた!竜さんの嫁さん!?」
突然、見知らぬ人に声を掛けられ冬樹はきょとんとしつつ頷いた。
「あぁ、やっと来てくれたのか!ほら、竜さんはこっちだよ、着いて来てくれ!」
走るように歩き出す村人に、冬樹は慌てて後に続く。
「もう四日も山側の出口に居座られて大変なんだ。急にぽっぽと暖かくなったと思ったら、何を考えたんだか砂漠の国みたいに熱を放出しちまったり。いい人なんだけどさ、これ以上熱かったり寒かったりが続くとこっちも参っちまうからね。どうしたんだって聞いたら嫁さんの気配がするから待ってるんだなんて言うだろ?だから私らもずっとあんたが来てくれるのを待ってたのさ」
早口で理由を説明され、思わず笑ってしまった。ソワソワと落ち着き無いクトーの様子が頭に浮かぶ。四日も前から待っていてくれたことが嬉しい。
「うわっ、熱いねぇ……」
冬樹を案内してくれた村人が、これ以上近づけないとクトーのいる場所を指差してから早々に退散してしまう。冬樹はその背中に感謝の言葉を掛け、クトーが居るという場所を見る。
クトーは多分自分で運んできたのだろう、石の椅子に腰掛けていた。大股に足を開き右足でイライラと貧乏揺すりをしつつ腕を組んでいる。石はどうやら一度融け掛かったらしく、滴るような形で固まっている箇所があった。
このまま近づくのはもしかして危険なのではないだろうか?思い切り高熱を放出して、村を炎に包んでしまったりしないだろうか?冬樹はそう考え、一人村人を捕まえると、なんとかクトーがもう少し村から離れるよう説得してもらうことにした。
運悪く冬樹に捕まった村人は中々度胸のある若者らしく、さっさとクトーの元に向かうと何事かを説明し、その言葉にクトーが頷いた。
「これで任務完了かな?お嫁さんに逢えた喜びで村を壊滅させられると困るから、離れてくれるように言っといたよ。お嫁さんが村に着いたら照明弾を打ち上げるって言っておいた。だから、それを見たら気持ちを落ち着けてから村に来てくれってね。お嫁さんも、村の出口から離れ気味にしててくれると嬉しい」
中々頭の回る人のようで助かった。
「一度家に戻るって言ってたけど、もうそろそろ村との距離は良さそうかな?」
「そうですね、クトーの足ならもうだいぶ離れたと思います」
「それじゃ、照明弾を撃つからお嫁さんは村から出てね」
青年の言葉に従って、クトーが占拠していた村の出口からさらに進んだ場所で立ち止まる。
暫くすると、大気を劈くような爆音が響き、一筋の煙が空へと上った。その直後、山側からも爆音が響く。
冬樹は雪崩が起こったらどうしようと不安になったが、特に何事もなかったようだ。
ほっと息をついた瞬間、体が宙を舞う。
「ひへっ!?」
ぽーん、と空高く体が浮いた。眼下にはどうやら冬樹を抛り投げたらしく両手を高く掲げるクトーの姿。
「フユキー!」
落下する冬樹の体をしっかりと抱きとめ、そのまま強く抱きしめる。
「……愛情表現が、おかしいと思う」
落下の恐怖にドキドキと脈を打つ心臓を押さえて冬樹はクトーを睨む。
「行くぞ!」
冬樹の言うことを無視してクトーは巨大な猫型の竜に変化すると、今度は冬樹の首根っこを噛んでまたも抛り投げる。
「ぎゃぁぁぁあ!」
今度は背中で冬樹を受け止めると、風を切って走り出した。
「ちょっ!ちょっ!まっ……!」
もちろん冬樹の悲痛な叫びは無視された。
~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~
何とか鱗に掴まりクトーの背に揺られていると、一部大きく大地が抉られた場所を通過した。
後から話を聞くと、喜びと興奮を抑えるためにクトーがその場所を殴ったらしい。照明弾の後に響いたあの音の正体である。
久々に見たクトーの家は、その面影を無くしていた。
石造りではあるが、レンガのように一つ一つ重ねられた外観は、東の大陸に良く見られるもの。何を素材にして作ったのか、窓ガラスっぽい素材のものが嵌った窓もある。
ただし、白い外観と打って変わって、中に入るとワインレッドに統一されているのは変わらない。クトーの鱗を素材にして作っている以上仕方がないのだが、どうにか染色出来ないか実験してみようと冬樹は思った。
「ここがリビングで、こっちがキッチンな!食材はここに作った地下倉庫に入れておけばいい。外に通じる穴を作ったから、そっちから雪を入れれば十分れーぞーこって奴と同じ役割すんだろ。で、こっち!」
人型に戻ったクトーが冬樹の手を引いて家の中を歩き回る。紹介されたダイニングには大きな石テーブルと椅子が数えて十二脚。一人きりで生活していたクトーだが、これからは友達と呼べる人たちとこのテーブルを囲めるといいなと冬樹は思った。きっと、そういった意図もあっての椅子の数だろう。
「こっからあっこまでが子供部屋な。一応多めに見積もって十室用意したが、まぁそれ以上になったら増築するか」
「は?」
理解は出来た。己の体を竜に変化させることが可能だとわかった時から、クトーの傍に居ると決意した時から、何れクトーとの間に子供を儲けるだろうと思っていた。しかし、子供部屋を十室とは何事かと、冬樹は目を見張る。クトーは多くて十人、冬樹に子供を産ませるつもりらしい。つまりダイニングで見た十二脚の椅子は、誰かを招待するためではなく、クトーと冬樹、そして何れ生まれる十人の子供たちの為のものだ。
驚きの家族計画に眩暈がするが、そんな冬樹に構うことなくクトーは先へと進む。
「んで、ここが俺たちの寝室!」
通された部屋は、ワインレッドに統一されている以上、爽やかとか言えない……むしろ若干エロティズムに満ちた部屋になっていた。
まぁそれも仕方がないと自分を納得させ、部屋をよく検分しようとした矢先、クトーが噛み付くように冬樹にキスをする。
貪るような口付けを驚きつつ受け入れている。押され気味で、思わず足を引いて二、三歩下がるとベッドにぶつかり二人して倒れこんだ。
「っ……ふっ…」
やっと離れた唇から荒く息を吐き出すと、その吐息すら飲み込むようにまた唇を塞がれる。そうされる間にもクトーの手は冬樹の体をまさぐり、気がつけばコートの前身頃は開けられ、中に着ていたハイネックは胸元までたくし上げられている。
「んぅっ……」
冬樹がクトーの背を叩くと、やっと唇が離れた。
「ちょっとっ…急過ぎ……」
冬樹の訴えに、クトーは灼熱に燃え上がる瞳を向ける。
「もう我慢出来ねぇし、する必要もねぇ」
それだけ言うと、クトーは冬樹の全てを奪いつくさんと動き、その欲望を冬樹の中にぶちまけた。
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