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放課後の怪人
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『私を連れて行って……放課後の怪人――――』
うっかり思い出して悶絶する恥ずかしい記憶ってございませんか?
私にはございます。冒頭のアレです。三年とちょっと前の黒歴史です。
「って、お前さん言ってくれたのになぁ~?」
無精ヒゲを生やしたオッサンがアルコールくせぇ口を近づけて私の肩をお抱きになりやがります。
「うざっ」
素気無くその手を払って、私はさっさと台所へと向かうのでございます。
「おーい、マリアちゃ~ん。ツマミ追加ね~」
完全に無駄な美声、その声の主怪人に私は「死ねばいいのに」と言う視線を向けたのでございます――――
始まりは近所のもさいオッサンがくれた一枚の紙。
それはミュージカル<怪人の恋>のチケットでした。
小六の少女は恋と言う単語に超反応です。しかもすでに厨ニ病が始まりかけていた為<怪人>と言う単語に胸を高鳴らせてしまったのです。
小六の少女は、親に許可を貰いその舞台を一人で観に行きました。
そして、舞台の上、黒いマントに白いマスクで顔の半分を覆った怪人を見て一瞬で恋に落ちるのです。
公演後、もさいオッサンに言われた通り、私は楽屋を訊ねることにしました。
「楠木です。聖さんに会いに来ました」
聖さんとは、もさいオッサンです。役者らしいのですが、舞台上で見つけられませんでした。怪人ガン見でしたから。
「ほぉー、あいつにお客さん?今、終わったばっかでゴチャゴチャしてるから、お兄ちゃんと一緒に行こうか」
明らかにオッサンなお兄ちゃんが私の手を取り楽屋に案内をしてくれました。小六だぜ?手繋ぐとか、ガキ扱いすんじゃねぇよ。って思ったのは決して間違っていないと思います。
「おー、マリア。良く来たな」
怪人です。白馬に乗った王子様なんかガキだねガキ。と言うことを今さっき大人の色気でもって私に教えてくれた怪人が、私の名を呼び、抱きしめて来ました。
すげぇいい香りがします。心臓止まりかけました。
この瞬間、少女は目の前の男性に恋に落ちたのです。そう、怪人ではなく、目の前の男性に。
「なんだ、お前ロリコン?」
「おいおい、俺まだ三十二よ?あ、ロリコンか」
「え?マジ?」
「いや、冗談に決まってんでしょ。近所の子なんだよ。可愛いだろ?」
「ん~、確かに将来有望だな」
怪人が私を抱きしめたままオッサンお兄ちゃんと会話を続けます。
「歌も上手いんだよ。演劇センスもありそうでさ」
「あー、青田刈り?」
「そそ。今のうちに仕込んどこうと思って」
「いいねぇ、クリスティーヌとか嵌りそう」
「もちろん俺がファントムな」
「その頃にゃ、ファントム交替してんだろ~」
「ダメダメ。俺がやんの。後三十年は譲らんね」
後から知ったのですが、このミュージカルを公演した<劇団怪人座>は、怪人が主役のミュージカル・演劇専門で、私を抱きしめていた怪人がもう五年ほど主役をやり続けていたそうなのです。
「さすがに三十年は無理だろー」
「俺以上にファントム出来る奴なんて出てこねぇって」
「まぁ、あれはなぁ……確かに、お前ほど<怪人>が嵌る奴ぁいねぇわ。普段はこんななのになぁ」
「こんなは余計だ」
怪人が、オッサンお兄ちゃんに去れと言わんばかりに手を振ります。
「はいはい。打ち上げくんだろ?」
「いかね。マリア送ってかないとだからな」
怪人が半顔を覆ったマスク姿で私に妖しく微笑みかけます。心臓止まりました。色気全開です。ぴったりとその厚い胸板に頬を寄せてしまいました。
「お?なんだ、惚れちゃった?」
パタリと閉まるドアの音――私は熱い瞳で怪人を見つめます。
「今、帰り支度するから待っててな」
「……はい…………」
激アツな吐息を込めて返事をしました。
後ろを向いた怪人が、その仮面を外します。
鏡越しのその顔は近所のもさいオッサン・ヒゲがないバージョンです。普通ならここで、一気に恋が醒める所です。むしろ、醒めてくれれば良かったのに!
その時の私は、もさいオッサンが怪人だったことを……
『私だけが、この人が本当はカッコいいことを知っている』
そんな風に思ってしまったのです。
それが、黒歴史の始まりでした……
「いやっ…こないで……」
男が私の手を取ると強い力で腰を引き寄せる。
「……お前がどれほど私を恐れようが、憎もうが、離しはしない……」
身体の芯を貫く低い声、そこに潜む激情にこの身を震わせる。
「いや…いや……、怖いわ……あなたが怖い……」
「シルビア……」
「あなたを憎みたいのに……、あなたを愛してしまいそうな自分の心が怖いっ……!」
抱き寄せようとする男の胸に左手を打ち付ける。けれど男はその手を取り、掴んだ腰に力を込めて押し倒さんばかりに顔を寄せる。
「愛せ、私を愛せ。そして憎め。その心を私だけで満たせ…シルビア……私の、愛――」
そして、二人の唇が……
「おわっ!」
合わさろうとした瞬間に腰が持たずに倒れこみました。
「おま、身体柔らかすぎだって」
「聖さんがしっかり支えてくれないから!」
あれから二年、中二な私は怪人の家で稽古のお相手をするようになってました。
「いや、だってよぉ……」
情けない顔で頭をガシガシと掻いています。上下ジャージに無精ヒゲな姿に胸キュンです。
「だってなんですかー?」
うっかり腰が抜けちゃった私も悪い気がしますが、色っぽいオッサンが悪いです。
と、良くわからない溜息を落とされます。
「……お前、ほんと役者になれな?」
この頃は、聖さんの相手役が出来るなら役者もいいな。とか思ってた可哀相な乙女でした。
「もう一回、同じシーンですか?」
今のドキドキをもう一回!!と、熱い瞳で見つめますが聖さんは唸って頭を掻きます。
「今日はもういいわ。そろそろ帰らんとだろ、お前さん」
「私はお前さんじゃなくてマリアです」
「あー、はいはい。気をつけて帰れな」
そうして家を追い出されます。
「……マリアだもん……」
なんて呟いちゃった可哀相な乙女です。黒歴史です。
そうして時が流れます。中三、最大の黒歴史です。
あの頃も、いつもと同じように稽古の相手をしていました。
タイトルは<放課後の怪人>
現代モノで学校が舞台。ヒロインは高校三年生で名前がマリアです。マリアです!
未来の私……とか思っちゃって、嵌りました。聖さんより早く台詞覚えました。
「嫌い。みんな嫌い。親も、先生も、学校全部。この現実も、何もかも嫌い」
教室の窓枠に、私は腰掛けている。
「ならば、俺と行くか?」
夕日の差し込む教室に、漆黒を纏う仮面の男がいた。
「どこに……?」
眩しい夕日に目を細め、私は泣きたいのを堪える。
「劫火の世界――背徳の美酒の中。この現実ではない、夢幻の世界」
右手を私に差し向ける男。それは、私を妖しく誘う。
「嫌よ。劫火の世界ぃなんて、地獄みたいじゃない」
行きたい。こんな現実を捨てて、貴方の世界に……
「……だがお前は選ぶだろう、その地獄の世界を――この俺を」
「まさか」
一蹴する。けれど、その声は震えてしまっていた。
「呼べ。俺を――選べ」
いつの間にか近づいていた男が――怪人が私の頤を掴む。
「…………いやよ」
視線だけを下へ落として、私は闇を拒絶した――――
「いいねぇ」
悦に入る。まさにそんな声で演技が中断されました。
「ちょっと、勝手に切らないで下さいよ!」
「いやぁ、あまりにいい演技だったからさ。こう、受け入れたいのにそれを否定する感じ?惑う表情とか、やばいね」
「なに、腰に来たってわけ?」
挑発するような目線を向けてみます。これは、以前にやった<かどわかされし娘――怪人――>という劇で、ヒロインの友人で女の色気も持つ人の役を稽古相手としてやった時に覚えた仕草でした。
「……阿呆。中学生に欲情するかっての」
「なぁんだ、つまんないのー」
「お前さんなぁ……。そう言うのは、高校卒業してからやんなさい」
「今時中学生でヤッてる子沢山いますよ?」
「……はぁ?まさか…お前さん……」
「うわ、エロ親父~想像しちゃいました?」
「ばっか。ほれ、こっからやるぞ」
聖さんが示す部分を見て、私達は演技を再開したのです。
『今回の作品は現代の高校が舞台になっているんですよね?』
『えぇ。現実と幻想の世界の交わり、子供と大人の境で悩む少女、その少女を誘惑する闇。それが今回のテーマですので、舞台を高校に設定しているんです』
ファントムマスクをつけた聖さんが、テレビでインタビューを受けていました。
今回の作品はおっきなスポンサーがついているそうで、聖さんが怪人姿でテレビで番宣することになったのです!
インタビュアーが『最後に一言』と言うと、聖さんがカメラに向かって怪しい笑みを浮かべます。
それだけで腰が砕けそうになる私です。
『俺を選べ。俺の元へ来い、マリア。連れて行こう――お前を永遠の快楽の世界へ……』
これは演技じゃない、これは私に…この私に言ってる……
そう、感じました。
今思えば酷い勘違いです。
私は急いで家を飛び出して、聖さんの家に飛び込みました。
収録は昨日だったから家にいた聖さんは、私の姿を見るといつも通り手を上げて笑いかけてくれます。
「ねぇファントム!出てきてよ!いるんでしょ!」
私は叫びました。最初はきょとんとしていた聖さんが立ち上がります。私は聖さんを存在しないものとして、辺りを――
放課後の教室を必死に見渡した。
「ねぇっ……居るんでしょ……、お願い…出て、き、てよ……」
ファサリと、黒いマントのたなびく音。漆黒の闇から現れる怪人――――
「……マリア」
「本当に、呼んだら来るのね……」
「そう言ったからな……」
ゆっくりと、怪人が私の元へ歩みを進める。
「呼んだな……俺を」
そして、私の頬をその指で撫でる。
「えぇ、呼んだわ。ファントム……そうよ、呼んだのよ……」
私は、ファントムの愛撫にうっとりと目を閉じた。
「行くのだな……俺と――」
「えぇ…行くわ……。私を連れて行って……放課後の怪人――――」
そして、私は怪人のマントに包まれる。はずだった。
「…………」
抱きしめられるはずなのに、聖さんは苦い顔をしました。
「……マリア、帰れ」
「ここは、『マリア、永遠に共に』でしょ!?」
あの時の剣幕は、やばかったと思います。私は必死でした。
「今のは演技じゃないだろ?そんな感情を俺に向けるな」
「そんな感情って何!?」
「わかってんだろ……?演技と本気を、混同すんじゃねぇよ」
演技でしか聞いたことのない冷たい声に、心臓がつぶれるぐらいの苦しみを感じ、私は叫びました。
「だって……聖さんだって!」
「マリア」
吐き捨てるような声。
私は涙を拭うこともせず、聖さんから逃げたのです……
なんて、超黒歴史!!
恥 ず か し い ! !
あれから暫く、聖さんと顔を合わせることはありませんでした。
んでね、やっと目が醒めるわけですよ。高校で出逢ってしまったのですね!白馬に乗った王子様に!
やっと、阿呆な思い込みから脱出できたわけですよ!
そんな折、ばったりオッサンに会って、練習はかどってんの?って聞いたところから、また稽古相手が始まったんですね。
「ほら、オッサン。ご希望のツマミですよ」
結局王子様と結ばれることは無く、卒業式の放課後に待ち続けても怪人が夢幻へと私を誘うことも無く、つい一ヶ月前高校を卒業してしまいました。
別に本当に待ってたわけじゃないですよ?感傷に浸りたかっただけですよ?
ま、そんな感じで今は短大に通いつつなぜかオッサンの相手をしています。
「おま、昔は聖さん聖さんってさぁ……」
「うざい、オッサン」
「ほんとひでぇなおい」
お皿を受け取ったオッサンが、キュウリをポリポリしながらビールを呷ります。
「明日、千秋楽でしょ?飲みすぎ厳禁ですよ。私もう帰るから、それ食ったらさっさと寝るんですよ?」
「お~」
オッサンが背中を向けたまま応えます。
私はため息をついて靴を履くと、お見送りしようと考えたのか、いつの間にか背後にオッサンがいました。
「明日来いな?」
「アレは黒歴史だから見たくないです」
私は振り返りません。
明日千秋楽を迎える舞台は、私の恋を破くきっかけになった舞台。
三年ぶりの再演<放課後の怪人>なのです。
「ぜってーこいな、マリア」
「あー、はいはいわかったですよ」
そのまま、顔も見ずに私はオッサンの家を出ました。
『ねぇファントム!出てきてよ!いるんでしょ!』
千秋楽の舞台、私は渡されていたチケットの指定席、通路を挟んだど真ん中の席に座っていました。
叫ぶ<マリア>の声は後ろから音響を使って響きます。舞台には誰一人居ません。
『ねぇ……居るんでしょ……、お願い……出てきてよ……』
その声に応えるかのように舞台にスモークがたかれ、うっすらと影が浮かび上がります。
「……マリア」
朗々と響く声、舞台に一人きり――怪人が現れます。
『本当に呼んだら来るのね』
「そう言ったからな……」
上下から風が発生し、スモークが立ち消え怪人がその全貌を現しました。
「呼んだな……俺を」
そして、そっと……目の前に<マリア>が居るかのように手を差し出します。
『えぇ、呼んだわ。ファントム……そうよ、呼んだのよ』
「行くのだな……俺と――」
演出方法が以前と違うからか自分がヒロインになったかのような錯覚を覚えます。
「……この時を、待ち続けた……」
(あれ?セリフ違う……)
「見守り続けた……お前が、俺のモノになるまでの時を……」
不意に、亡くしたはずの恋心が沸き上がります。
だって、怪人が――確かに私を見詰めているから――――
「マリア……」
怪人が、苦しげに己の胸を掴み……
「俺と…俺と生きろ――その命燃え尽きる日まで――――」
<マリア>の返答は無いまま、手を伸ばす怪人。
音楽が盛り上がりをみせ、緞帳がゆっくりと下りていく――――
「どーよ」
ホールを出ようとしたら、懐かしのオッサンお兄ちゃんに声をかけられ舞台に残るように言われた私は、そこで誰も居なくなるのを待ち続けることになりました。
「どうって何が?」
ぼうっと舞台を見つめていたら、背後からかけられた声。私は振り向きもせず、その声に応えます。
「前よりいいだろ?」
「そうですね。<マリア>がファントムの手を取らなかった辺り最高でした」
「おいおい、あれは観客の判断に委ねる~って感じだろ?」
「だから、私だったら手を取らないんですよ」
思いのほか冷たい声が出て、そんな自分に少し驚きました。
「……取れよ」
「何がですか」
「怪人の手を、取れよ」
「ヤですよ」
「マリア」
「…………」
「マリア」
「……ばなかったくせに」
「マリア」
「こないだまで名前なんて全然呼んでくれなかったくせに!なんなんですか急に!演技と混同してんのどっちですか!!なんなのアレ!?待ち続けたって、はぁ?何言ってんの!?突き放したのはそっちのくせに!!」
激情に身を任せて振り向いた先に居たのは、怪人の衣装を身に纏った、怪人になり切れていない唯の男で――――
「俺を呼べよ」
「誰がっ……誰が呼ぶもんですか!!」
さっさとこの男の前から消えようとしたのに。
「呼べ!俺を呼べ!マリア!!」
強く腕を掴まれ、その勢いのままに引き寄せられて――
「なんで…今更……」
逞しい胸の中に封じられ、私は詰るようにその胸を叩く。
「お前、わかってんのか?あんころ中学生だぞ?俺なんて三十五だぞ?」
「今だって、十八歳と三十八歳です」
「そりゃ、年の差はどうやったって縮まんねぇからな……」
「ロリコン」
「悪かったな」
「公私混同」
「反省してる」
「怪人馬鹿」
「それは褒め言葉だ」
「あほ」
「ガキ」
「そんなガキが好きなくせに」
「あぁそうだよ、そんなガキが好きだよ」
ストレートな返答に、息が詰まった。
「だから、俺の名を呼べ……」
「ファントム?」
「ばっか、ちげぇだろ」
「……聖さん」
「それ苗字」
「…………海人、さん」
「呼んだな……俺を」
それは、舞台の台詞。でもそれは、演技じゃない声。
「えぇ、呼んだわ。……そうよ、呼んだのよ……」
「行くんだな……俺と――――」
「……どこへ?」
「劫火の世界――背徳の美酒の中。この現実での、夢幻の世界」
ほんの少し、違う台詞。
「えぇ…行くわ……。私を連れて行って……、あなたの、夢幻へ――――」
白い手袋を、噛んでゆっくりと外す。
ファントムマスクから覗く瞳が、私の心を震わせる。
漆黒のマントで隠すように抱きかかえられ、連れ去られた先は豪奢な天蓋付きベッドの上だった。まるで二人の姿を隠すようにカーテンが下ろされ、世界が鎖される……
「がっつき過ぎじゃないですか?いきなりですか?お家に帰ってからじゃ駄目なんですか?ここ、大道具室なんですけど?」
「だって俺、お前が十八になるまで超待ったもん。もう待てない」
「もんって……」
自分から良いムードをぶち壊した気がしますが、溜息が漏れます。
「ていうか、いつからですか」
「それだけは秘密」
「つまり、ロリコンと言われてもしょうがないぐらい前からこのマリアちゃんをロックオンしてた訳ですね?」
「あー……」
手袋を外した手で、頭をガシガシと掻く聖さん。外見だけはカッコいい怪人なのに、普段通りな彼の姿に、私は正直胸がきゅんきゅんです。
「……実は待ってたって言われて凄く喜んでいるから不問に処してあげます」
押し倒された格好のまま私がそう言えば、聖さんは色気ある笑顔を向けてきました。
「あんがとさん。……後悔しても、離してやんねぇからな」
そして、真剣な顔で私を見つめます。だから私は不敵な笑顔で返してあげました。
「後悔は、中三のあの日に置いて来ました」
「じゃあ二度と手離さなくてすむな」
マスク姿のまま降りてくる唇が私の目を閉じさせます。
「いっちょ前に化粧するようになったか」
「花の女子大生ですから。短大ですけど」
熱い唇が唐突に私の口を塞いで来ます。
「んっ……」
「鼻で息しろよ?」
そう告げると私の唇を舌で撫でました。
「口開けろって」
言われるままにほんの少しだけ口を開くと無遠慮に舌が差し込まれ、蠢くソレは何が気に入ったのか私の犬歯をゴリゴリと舐めます。いっそ押し出してやろうと舌を突き出した途端に、絡め取られました。
「んぐっ……ぅ」
じゅる、じゅぐ、と空気を含ませながら絡ませられる舌の動きに翻弄されて、私はただ苦しい喘ぎを漏らしてしまい、私のそんな姿に顔を離した聖さんが自身の唇を蠱惑的に舐めます。
「ほんと、女って…女になんの早ぇーのな」
「意味わかんないですよ」
「いいよ、わかんなくて。ただ、早く老けろ」
「はぁ?」
戻りかけたムードがまた崩れましたね。今。
「俺の隣に並んでも、お似合いですねって言われるぐらいの老けさを保て」
「そんな無茶な。むしろ、順当に老けてやりますから、オッサンはその顔保ってください」
「お前、流石にこの状況でオッサンはねぇだろ……。ま、五年前から顔変わってないって言われるからな。後十年ぐらいは頑張ってやる」
私の返事を待たずに、聖さんが私の首筋に噛み付きました。
「それ吸血鬼です。あなた怪人でしょ」
「もういいから黙ってろ」
意のままに女を従わせる、絶対の支配力を持つ男の声。
薄桃色のカーディガンを肌蹴させ、私の首に、肩に無言で噛み跡を付けていきます。
「……あっ…」
聖さんは私の肩を甘く噛むと、クリーム色のキャミワンピの肩紐をその口で咥えてゆっくりとおろす。おろされたのは片方だけ。もう片方は残したまま、私の胸元に顔を埋める。
ファントムマスクの冷たい感触に、身体が震えました。
「ねぇ…私を抱くのは怪人?それとも海人さん?」
昔やった<かどわか(以下略。で、そう聞くと、聖さんがマスクを外します。
「お前を抱くのは、俺だ」
傷なんてどこにもない美しい顔。
「だからお前も、お前以外になるな……」
そこからは性急に。
聖さんが下着ごとワンピをずり下げ、露になった私の胸に、その頂を避けて噛み付く。チクリと痛むのは、男が付ける征服欲の表れ。
「…んっ……」
素足を撫で上げ太股の内側をくすぐる指に、私の腰が思わず跳ねる。
指はそのまま私の内腿を辿り、下着越しに誰にも許したことの無い場所へと触れる。
「湿ってる」
「黙れ、です」
「駄目だな。言葉攻めの刑に処すつもりだから」
「こっちは不問に処しっ…あっ…」
文句を言おうとした途端に、聖さんが私の右胸にしゃぶりつき、固く勃ち上がっていた頂を舌で蹂躙する。そうしたまま下着に指を引っ掛けあっさりと脱がしてしまうと、その指を蜜壷に刺し入れた。
「んぅっ!」
「初めてのくせに、ナカ、ぐちょぐちょだぞ?」
私の反応を覗き込む顔が、身を焦がす低い声が、乱暴に蠢く指が……その全てが私を煽る。
「ほら、聞こえるだろ?この音……」
ぐちゅ、ぐちゅ、とワザと音を立てて責め立てられ、私の声が甘やかに響く。
「あっ――、ふ……」
胸を虐めていた舌が、圧し掛かっていた身体が離れたと思った矢先、快楽が背中を突き抜ける。
「やぁっ……」
上体を起こして見ると、聖さんが私の花芯をその舌で弄り、啜っていた。
「嫌じゃないだろ?ナカこんなにひくつかせといて……」
容赦なく責める姿、ベッドに広がるマントの裾、欲情を滲ませた美しい男……
私の体が燃え上がる。
「俺さ、サドなの。だから、お前の身体に強烈に俺を刻み付けたいわけ」
いきなり何を言い出すのかと思った矢先、ピタリと私の蜜壷に熱い何かが当たる。
「初めてがこんなだったら、絶対に俺のこと忘れらんないだろ……?」
あぁ、そこにあるのは獲物を残酷に食い荒らそうとする獣の瞳――
「だから、精々痛がれ…な……!」
「ぐぅっ!!」
言葉の終わりと同時に、一気に私を貫く。
ブチリ、と破瓜の音が聞こえた気がした。
「マリア、これでお前は俺のモノだ……」
恍惚の表情で、残虐な男が優しく私の頬を撫でる。
「元から…貴方のです…よ……」
痛みに息を荒げつつ答えたその言葉は、どうやら男を煽るものだったらしく……
「馬鹿だな、こっからは優しくしてやろうと思ってたのに……」
その言葉と共に、酷く、酷く私のナカを抉られた。
「あっ、だっ――やぁ……」
「嫌って言う割りに、ナカは凄いぜ?」
私の耳元に唇を寄せて、耳朶を噛みながら抽挿を繰り返す。
「キツいわりに柔らけぇ……、お前感じてんだろ?」
何も言えずに、私は唯喘ぐだけで。
「あっ…あぁっ……」
聖さんが、その動きに翻弄される私を覗き込む。
「……お前って、すっげぇ虐めたくなる……」
その言葉とは裏腹に、責め立てるような動きが何か探るように緩やかな腰付きになった。
「泣いて善がって、イかせてって言わせてやりたい……」
あぁ、この男は本当にサドだ。この抽挿は優しいんじゃない。私の感じる所をただ貪欲に探っているんだ。そう思う私に訪れたのは恐怖ではなくゾクゾクとした期待だった。
「お前、マゾだろ。俺が喋るたびにこんなに締め付けて……」
「あ、あ、あぁ……」
掠る。確かに感じる場所があって、そこを掠られるたびに腰が跳ねた。絶対に気付いているはずなのに、聖さんはそこを責めてはくれない。
「マリア…、お前今すっげぇ物欲しそうな顔してる」
「…んっ、だって……海、人さっ……」
「言ったら、ご褒美やるよ」
「な、にをっ……?」
きっとそれは「イかせて」の言葉だと思ったのに、優しいキスと共に降って来たのは……
「好きって、言ってくれ」
心臓が破れてしまうかと思った。今までの余裕はどこに行ったのか、聖さんの瞳は愛を乞う哀れな男のモノだった。
「好き……好き、好き」
愛してる、ずっと、ずっと前から――――
「マリア……俺もだ。好きだ…愛してる……」
唇を奪われる。口内を舌が犯す。同時に激しくなった抽挿に、私の頭は真っ白になっていった。
「んぅ……んっ…!んんっ――!!」
あぁ、だめ、やめて、気持ち良すぎて頭が変になりそう。
「マリア――」
私への劣情を吐息と共に吐き出して――それが余計に私を煽る。
「海、人さ…、好き……好き、すき――」
ガツガツと私を貪る猛々しい雄が、その質量を増して私を責め抜いた。
それは、彼の言葉通り私が泣いて善がってイかせてと叫ぶまでずっと、ずっと続いた……
「ベッド、ぐちゃぐちゃですよ……」
「あー……まぁ、とりあえずこれだけ持ち帰ればいいだろ」
と、聖さんが手にしたのは濡れたシーツです。えぇ、血がついてます。
「洗ってこっそり返却ですか?」
「んや、記念に取っとく」
…………
「オッサン……?」
「ん?」
何その爽やかな笑顔。
ふんだくってやろうと思ったのにひらりとかわされ、結局家にお持ち帰りされたそれは――
勿論、私の人生最大の黒歴史になったのでした――
うっかり思い出して悶絶する恥ずかしい記憶ってございませんか?
私にはございます。冒頭のアレです。三年とちょっと前の黒歴史です。
「って、お前さん言ってくれたのになぁ~?」
無精ヒゲを生やしたオッサンがアルコールくせぇ口を近づけて私の肩をお抱きになりやがります。
「うざっ」
素気無くその手を払って、私はさっさと台所へと向かうのでございます。
「おーい、マリアちゃ~ん。ツマミ追加ね~」
完全に無駄な美声、その声の主怪人に私は「死ねばいいのに」と言う視線を向けたのでございます――――
始まりは近所のもさいオッサンがくれた一枚の紙。
それはミュージカル<怪人の恋>のチケットでした。
小六の少女は恋と言う単語に超反応です。しかもすでに厨ニ病が始まりかけていた為<怪人>と言う単語に胸を高鳴らせてしまったのです。
小六の少女は、親に許可を貰いその舞台を一人で観に行きました。
そして、舞台の上、黒いマントに白いマスクで顔の半分を覆った怪人を見て一瞬で恋に落ちるのです。
公演後、もさいオッサンに言われた通り、私は楽屋を訊ねることにしました。
「楠木です。聖さんに会いに来ました」
聖さんとは、もさいオッサンです。役者らしいのですが、舞台上で見つけられませんでした。怪人ガン見でしたから。
「ほぉー、あいつにお客さん?今、終わったばっかでゴチャゴチャしてるから、お兄ちゃんと一緒に行こうか」
明らかにオッサンなお兄ちゃんが私の手を取り楽屋に案内をしてくれました。小六だぜ?手繋ぐとか、ガキ扱いすんじゃねぇよ。って思ったのは決して間違っていないと思います。
「おー、マリア。良く来たな」
怪人です。白馬に乗った王子様なんかガキだねガキ。と言うことを今さっき大人の色気でもって私に教えてくれた怪人が、私の名を呼び、抱きしめて来ました。
すげぇいい香りがします。心臓止まりかけました。
この瞬間、少女は目の前の男性に恋に落ちたのです。そう、怪人ではなく、目の前の男性に。
「なんだ、お前ロリコン?」
「おいおい、俺まだ三十二よ?あ、ロリコンか」
「え?マジ?」
「いや、冗談に決まってんでしょ。近所の子なんだよ。可愛いだろ?」
「ん~、確かに将来有望だな」
怪人が私を抱きしめたままオッサンお兄ちゃんと会話を続けます。
「歌も上手いんだよ。演劇センスもありそうでさ」
「あー、青田刈り?」
「そそ。今のうちに仕込んどこうと思って」
「いいねぇ、クリスティーヌとか嵌りそう」
「もちろん俺がファントムな」
「その頃にゃ、ファントム交替してんだろ~」
「ダメダメ。俺がやんの。後三十年は譲らんね」
後から知ったのですが、このミュージカルを公演した<劇団怪人座>は、怪人が主役のミュージカル・演劇専門で、私を抱きしめていた怪人がもう五年ほど主役をやり続けていたそうなのです。
「さすがに三十年は無理だろー」
「俺以上にファントム出来る奴なんて出てこねぇって」
「まぁ、あれはなぁ……確かに、お前ほど<怪人>が嵌る奴ぁいねぇわ。普段はこんななのになぁ」
「こんなは余計だ」
怪人が、オッサンお兄ちゃんに去れと言わんばかりに手を振ります。
「はいはい。打ち上げくんだろ?」
「いかね。マリア送ってかないとだからな」
怪人が半顔を覆ったマスク姿で私に妖しく微笑みかけます。心臓止まりました。色気全開です。ぴったりとその厚い胸板に頬を寄せてしまいました。
「お?なんだ、惚れちゃった?」
パタリと閉まるドアの音――私は熱い瞳で怪人を見つめます。
「今、帰り支度するから待っててな」
「……はい…………」
激アツな吐息を込めて返事をしました。
後ろを向いた怪人が、その仮面を外します。
鏡越しのその顔は近所のもさいオッサン・ヒゲがないバージョンです。普通ならここで、一気に恋が醒める所です。むしろ、醒めてくれれば良かったのに!
その時の私は、もさいオッサンが怪人だったことを……
『私だけが、この人が本当はカッコいいことを知っている』
そんな風に思ってしまったのです。
それが、黒歴史の始まりでした……
「いやっ…こないで……」
男が私の手を取ると強い力で腰を引き寄せる。
「……お前がどれほど私を恐れようが、憎もうが、離しはしない……」
身体の芯を貫く低い声、そこに潜む激情にこの身を震わせる。
「いや…いや……、怖いわ……あなたが怖い……」
「シルビア……」
「あなたを憎みたいのに……、あなたを愛してしまいそうな自分の心が怖いっ……!」
抱き寄せようとする男の胸に左手を打ち付ける。けれど男はその手を取り、掴んだ腰に力を込めて押し倒さんばかりに顔を寄せる。
「愛せ、私を愛せ。そして憎め。その心を私だけで満たせ…シルビア……私の、愛――」
そして、二人の唇が……
「おわっ!」
合わさろうとした瞬間に腰が持たずに倒れこみました。
「おま、身体柔らかすぎだって」
「聖さんがしっかり支えてくれないから!」
あれから二年、中二な私は怪人の家で稽古のお相手をするようになってました。
「いや、だってよぉ……」
情けない顔で頭をガシガシと掻いています。上下ジャージに無精ヒゲな姿に胸キュンです。
「だってなんですかー?」
うっかり腰が抜けちゃった私も悪い気がしますが、色っぽいオッサンが悪いです。
と、良くわからない溜息を落とされます。
「……お前、ほんと役者になれな?」
この頃は、聖さんの相手役が出来るなら役者もいいな。とか思ってた可哀相な乙女でした。
「もう一回、同じシーンですか?」
今のドキドキをもう一回!!と、熱い瞳で見つめますが聖さんは唸って頭を掻きます。
「今日はもういいわ。そろそろ帰らんとだろ、お前さん」
「私はお前さんじゃなくてマリアです」
「あー、はいはい。気をつけて帰れな」
そうして家を追い出されます。
「……マリアだもん……」
なんて呟いちゃった可哀相な乙女です。黒歴史です。
そうして時が流れます。中三、最大の黒歴史です。
あの頃も、いつもと同じように稽古の相手をしていました。
タイトルは<放課後の怪人>
現代モノで学校が舞台。ヒロインは高校三年生で名前がマリアです。マリアです!
未来の私……とか思っちゃって、嵌りました。聖さんより早く台詞覚えました。
「嫌い。みんな嫌い。親も、先生も、学校全部。この現実も、何もかも嫌い」
教室の窓枠に、私は腰掛けている。
「ならば、俺と行くか?」
夕日の差し込む教室に、漆黒を纏う仮面の男がいた。
「どこに……?」
眩しい夕日に目を細め、私は泣きたいのを堪える。
「劫火の世界――背徳の美酒の中。この現実ではない、夢幻の世界」
右手を私に差し向ける男。それは、私を妖しく誘う。
「嫌よ。劫火の世界ぃなんて、地獄みたいじゃない」
行きたい。こんな現実を捨てて、貴方の世界に……
「……だがお前は選ぶだろう、その地獄の世界を――この俺を」
「まさか」
一蹴する。けれど、その声は震えてしまっていた。
「呼べ。俺を――選べ」
いつの間にか近づいていた男が――怪人が私の頤を掴む。
「…………いやよ」
視線だけを下へ落として、私は闇を拒絶した――――
「いいねぇ」
悦に入る。まさにそんな声で演技が中断されました。
「ちょっと、勝手に切らないで下さいよ!」
「いやぁ、あまりにいい演技だったからさ。こう、受け入れたいのにそれを否定する感じ?惑う表情とか、やばいね」
「なに、腰に来たってわけ?」
挑発するような目線を向けてみます。これは、以前にやった<かどわかされし娘――怪人――>という劇で、ヒロインの友人で女の色気も持つ人の役を稽古相手としてやった時に覚えた仕草でした。
「……阿呆。中学生に欲情するかっての」
「なぁんだ、つまんないのー」
「お前さんなぁ……。そう言うのは、高校卒業してからやんなさい」
「今時中学生でヤッてる子沢山いますよ?」
「……はぁ?まさか…お前さん……」
「うわ、エロ親父~想像しちゃいました?」
「ばっか。ほれ、こっからやるぞ」
聖さんが示す部分を見て、私達は演技を再開したのです。
『今回の作品は現代の高校が舞台になっているんですよね?』
『えぇ。現実と幻想の世界の交わり、子供と大人の境で悩む少女、その少女を誘惑する闇。それが今回のテーマですので、舞台を高校に設定しているんです』
ファントムマスクをつけた聖さんが、テレビでインタビューを受けていました。
今回の作品はおっきなスポンサーがついているそうで、聖さんが怪人姿でテレビで番宣することになったのです!
インタビュアーが『最後に一言』と言うと、聖さんがカメラに向かって怪しい笑みを浮かべます。
それだけで腰が砕けそうになる私です。
『俺を選べ。俺の元へ来い、マリア。連れて行こう――お前を永遠の快楽の世界へ……』
これは演技じゃない、これは私に…この私に言ってる……
そう、感じました。
今思えば酷い勘違いです。
私は急いで家を飛び出して、聖さんの家に飛び込みました。
収録は昨日だったから家にいた聖さんは、私の姿を見るといつも通り手を上げて笑いかけてくれます。
「ねぇファントム!出てきてよ!いるんでしょ!」
私は叫びました。最初はきょとんとしていた聖さんが立ち上がります。私は聖さんを存在しないものとして、辺りを――
放課後の教室を必死に見渡した。
「ねぇっ……居るんでしょ……、お願い…出て、き、てよ……」
ファサリと、黒いマントのたなびく音。漆黒の闇から現れる怪人――――
「……マリア」
「本当に、呼んだら来るのね……」
「そう言ったからな……」
ゆっくりと、怪人が私の元へ歩みを進める。
「呼んだな……俺を」
そして、私の頬をその指で撫でる。
「えぇ、呼んだわ。ファントム……そうよ、呼んだのよ……」
私は、ファントムの愛撫にうっとりと目を閉じた。
「行くのだな……俺と――」
「えぇ…行くわ……。私を連れて行って……放課後の怪人――――」
そして、私は怪人のマントに包まれる。はずだった。
「…………」
抱きしめられるはずなのに、聖さんは苦い顔をしました。
「……マリア、帰れ」
「ここは、『マリア、永遠に共に』でしょ!?」
あの時の剣幕は、やばかったと思います。私は必死でした。
「今のは演技じゃないだろ?そんな感情を俺に向けるな」
「そんな感情って何!?」
「わかってんだろ……?演技と本気を、混同すんじゃねぇよ」
演技でしか聞いたことのない冷たい声に、心臓がつぶれるぐらいの苦しみを感じ、私は叫びました。
「だって……聖さんだって!」
「マリア」
吐き捨てるような声。
私は涙を拭うこともせず、聖さんから逃げたのです……
なんて、超黒歴史!!
恥 ず か し い ! !
あれから暫く、聖さんと顔を合わせることはありませんでした。
んでね、やっと目が醒めるわけですよ。高校で出逢ってしまったのですね!白馬に乗った王子様に!
やっと、阿呆な思い込みから脱出できたわけですよ!
そんな折、ばったりオッサンに会って、練習はかどってんの?って聞いたところから、また稽古相手が始まったんですね。
「ほら、オッサン。ご希望のツマミですよ」
結局王子様と結ばれることは無く、卒業式の放課後に待ち続けても怪人が夢幻へと私を誘うことも無く、つい一ヶ月前高校を卒業してしまいました。
別に本当に待ってたわけじゃないですよ?感傷に浸りたかっただけですよ?
ま、そんな感じで今は短大に通いつつなぜかオッサンの相手をしています。
「おま、昔は聖さん聖さんってさぁ……」
「うざい、オッサン」
「ほんとひでぇなおい」
お皿を受け取ったオッサンが、キュウリをポリポリしながらビールを呷ります。
「明日、千秋楽でしょ?飲みすぎ厳禁ですよ。私もう帰るから、それ食ったらさっさと寝るんですよ?」
「お~」
オッサンが背中を向けたまま応えます。
私はため息をついて靴を履くと、お見送りしようと考えたのか、いつの間にか背後にオッサンがいました。
「明日来いな?」
「アレは黒歴史だから見たくないです」
私は振り返りません。
明日千秋楽を迎える舞台は、私の恋を破くきっかけになった舞台。
三年ぶりの再演<放課後の怪人>なのです。
「ぜってーこいな、マリア」
「あー、はいはいわかったですよ」
そのまま、顔も見ずに私はオッサンの家を出ました。
『ねぇファントム!出てきてよ!いるんでしょ!』
千秋楽の舞台、私は渡されていたチケットの指定席、通路を挟んだど真ん中の席に座っていました。
叫ぶ<マリア>の声は後ろから音響を使って響きます。舞台には誰一人居ません。
『ねぇ……居るんでしょ……、お願い……出てきてよ……』
その声に応えるかのように舞台にスモークがたかれ、うっすらと影が浮かび上がります。
「……マリア」
朗々と響く声、舞台に一人きり――怪人が現れます。
『本当に呼んだら来るのね』
「そう言ったからな……」
上下から風が発生し、スモークが立ち消え怪人がその全貌を現しました。
「呼んだな……俺を」
そして、そっと……目の前に<マリア>が居るかのように手を差し出します。
『えぇ、呼んだわ。ファントム……そうよ、呼んだのよ』
「行くのだな……俺と――」
演出方法が以前と違うからか自分がヒロインになったかのような錯覚を覚えます。
「……この時を、待ち続けた……」
(あれ?セリフ違う……)
「見守り続けた……お前が、俺のモノになるまでの時を……」
不意に、亡くしたはずの恋心が沸き上がります。
だって、怪人が――確かに私を見詰めているから――――
「マリア……」
怪人が、苦しげに己の胸を掴み……
「俺と…俺と生きろ――その命燃え尽きる日まで――――」
<マリア>の返答は無いまま、手を伸ばす怪人。
音楽が盛り上がりをみせ、緞帳がゆっくりと下りていく――――
「どーよ」
ホールを出ようとしたら、懐かしのオッサンお兄ちゃんに声をかけられ舞台に残るように言われた私は、そこで誰も居なくなるのを待ち続けることになりました。
「どうって何が?」
ぼうっと舞台を見つめていたら、背後からかけられた声。私は振り向きもせず、その声に応えます。
「前よりいいだろ?」
「そうですね。<マリア>がファントムの手を取らなかった辺り最高でした」
「おいおい、あれは観客の判断に委ねる~って感じだろ?」
「だから、私だったら手を取らないんですよ」
思いのほか冷たい声が出て、そんな自分に少し驚きました。
「……取れよ」
「何がですか」
「怪人の手を、取れよ」
「ヤですよ」
「マリア」
「…………」
「マリア」
「……ばなかったくせに」
「マリア」
「こないだまで名前なんて全然呼んでくれなかったくせに!なんなんですか急に!演技と混同してんのどっちですか!!なんなのアレ!?待ち続けたって、はぁ?何言ってんの!?突き放したのはそっちのくせに!!」
激情に身を任せて振り向いた先に居たのは、怪人の衣装を身に纏った、怪人になり切れていない唯の男で――――
「俺を呼べよ」
「誰がっ……誰が呼ぶもんですか!!」
さっさとこの男の前から消えようとしたのに。
「呼べ!俺を呼べ!マリア!!」
強く腕を掴まれ、その勢いのままに引き寄せられて――
「なんで…今更……」
逞しい胸の中に封じられ、私は詰るようにその胸を叩く。
「お前、わかってんのか?あんころ中学生だぞ?俺なんて三十五だぞ?」
「今だって、十八歳と三十八歳です」
「そりゃ、年の差はどうやったって縮まんねぇからな……」
「ロリコン」
「悪かったな」
「公私混同」
「反省してる」
「怪人馬鹿」
「それは褒め言葉だ」
「あほ」
「ガキ」
「そんなガキが好きなくせに」
「あぁそうだよ、そんなガキが好きだよ」
ストレートな返答に、息が詰まった。
「だから、俺の名を呼べ……」
「ファントム?」
「ばっか、ちげぇだろ」
「……聖さん」
「それ苗字」
「…………海人、さん」
「呼んだな……俺を」
それは、舞台の台詞。でもそれは、演技じゃない声。
「えぇ、呼んだわ。……そうよ、呼んだのよ……」
「行くんだな……俺と――――」
「……どこへ?」
「劫火の世界――背徳の美酒の中。この現実での、夢幻の世界」
ほんの少し、違う台詞。
「えぇ…行くわ……。私を連れて行って……、あなたの、夢幻へ――――」
白い手袋を、噛んでゆっくりと外す。
ファントムマスクから覗く瞳が、私の心を震わせる。
漆黒のマントで隠すように抱きかかえられ、連れ去られた先は豪奢な天蓋付きベッドの上だった。まるで二人の姿を隠すようにカーテンが下ろされ、世界が鎖される……
「がっつき過ぎじゃないですか?いきなりですか?お家に帰ってからじゃ駄目なんですか?ここ、大道具室なんですけど?」
「だって俺、お前が十八になるまで超待ったもん。もう待てない」
「もんって……」
自分から良いムードをぶち壊した気がしますが、溜息が漏れます。
「ていうか、いつからですか」
「それだけは秘密」
「つまり、ロリコンと言われてもしょうがないぐらい前からこのマリアちゃんをロックオンしてた訳ですね?」
「あー……」
手袋を外した手で、頭をガシガシと掻く聖さん。外見だけはカッコいい怪人なのに、普段通りな彼の姿に、私は正直胸がきゅんきゅんです。
「……実は待ってたって言われて凄く喜んでいるから不問に処してあげます」
押し倒された格好のまま私がそう言えば、聖さんは色気ある笑顔を向けてきました。
「あんがとさん。……後悔しても、離してやんねぇからな」
そして、真剣な顔で私を見つめます。だから私は不敵な笑顔で返してあげました。
「後悔は、中三のあの日に置いて来ました」
「じゃあ二度と手離さなくてすむな」
マスク姿のまま降りてくる唇が私の目を閉じさせます。
「いっちょ前に化粧するようになったか」
「花の女子大生ですから。短大ですけど」
熱い唇が唐突に私の口を塞いで来ます。
「んっ……」
「鼻で息しろよ?」
そう告げると私の唇を舌で撫でました。
「口開けろって」
言われるままにほんの少しだけ口を開くと無遠慮に舌が差し込まれ、蠢くソレは何が気に入ったのか私の犬歯をゴリゴリと舐めます。いっそ押し出してやろうと舌を突き出した途端に、絡め取られました。
「んぐっ……ぅ」
じゅる、じゅぐ、と空気を含ませながら絡ませられる舌の動きに翻弄されて、私はただ苦しい喘ぎを漏らしてしまい、私のそんな姿に顔を離した聖さんが自身の唇を蠱惑的に舐めます。
「ほんと、女って…女になんの早ぇーのな」
「意味わかんないですよ」
「いいよ、わかんなくて。ただ、早く老けろ」
「はぁ?」
戻りかけたムードがまた崩れましたね。今。
「俺の隣に並んでも、お似合いですねって言われるぐらいの老けさを保て」
「そんな無茶な。むしろ、順当に老けてやりますから、オッサンはその顔保ってください」
「お前、流石にこの状況でオッサンはねぇだろ……。ま、五年前から顔変わってないって言われるからな。後十年ぐらいは頑張ってやる」
私の返事を待たずに、聖さんが私の首筋に噛み付きました。
「それ吸血鬼です。あなた怪人でしょ」
「もういいから黙ってろ」
意のままに女を従わせる、絶対の支配力を持つ男の声。
薄桃色のカーディガンを肌蹴させ、私の首に、肩に無言で噛み跡を付けていきます。
「……あっ…」
聖さんは私の肩を甘く噛むと、クリーム色のキャミワンピの肩紐をその口で咥えてゆっくりとおろす。おろされたのは片方だけ。もう片方は残したまま、私の胸元に顔を埋める。
ファントムマスクの冷たい感触に、身体が震えました。
「ねぇ…私を抱くのは怪人?それとも海人さん?」
昔やった<かどわか(以下略。で、そう聞くと、聖さんがマスクを外します。
「お前を抱くのは、俺だ」
傷なんてどこにもない美しい顔。
「だからお前も、お前以外になるな……」
そこからは性急に。
聖さんが下着ごとワンピをずり下げ、露になった私の胸に、その頂を避けて噛み付く。チクリと痛むのは、男が付ける征服欲の表れ。
「…んっ……」
素足を撫で上げ太股の内側をくすぐる指に、私の腰が思わず跳ねる。
指はそのまま私の内腿を辿り、下着越しに誰にも許したことの無い場所へと触れる。
「湿ってる」
「黙れ、です」
「駄目だな。言葉攻めの刑に処すつもりだから」
「こっちは不問に処しっ…あっ…」
文句を言おうとした途端に、聖さんが私の右胸にしゃぶりつき、固く勃ち上がっていた頂を舌で蹂躙する。そうしたまま下着に指を引っ掛けあっさりと脱がしてしまうと、その指を蜜壷に刺し入れた。
「んぅっ!」
「初めてのくせに、ナカ、ぐちょぐちょだぞ?」
私の反応を覗き込む顔が、身を焦がす低い声が、乱暴に蠢く指が……その全てが私を煽る。
「ほら、聞こえるだろ?この音……」
ぐちゅ、ぐちゅ、とワザと音を立てて責め立てられ、私の声が甘やかに響く。
「あっ――、ふ……」
胸を虐めていた舌が、圧し掛かっていた身体が離れたと思った矢先、快楽が背中を突き抜ける。
「やぁっ……」
上体を起こして見ると、聖さんが私の花芯をその舌で弄り、啜っていた。
「嫌じゃないだろ?ナカこんなにひくつかせといて……」
容赦なく責める姿、ベッドに広がるマントの裾、欲情を滲ませた美しい男……
私の体が燃え上がる。
「俺さ、サドなの。だから、お前の身体に強烈に俺を刻み付けたいわけ」
いきなり何を言い出すのかと思った矢先、ピタリと私の蜜壷に熱い何かが当たる。
「初めてがこんなだったら、絶対に俺のこと忘れらんないだろ……?」
あぁ、そこにあるのは獲物を残酷に食い荒らそうとする獣の瞳――
「だから、精々痛がれ…な……!」
「ぐぅっ!!」
言葉の終わりと同時に、一気に私を貫く。
ブチリ、と破瓜の音が聞こえた気がした。
「マリア、これでお前は俺のモノだ……」
恍惚の表情で、残虐な男が優しく私の頬を撫でる。
「元から…貴方のです…よ……」
痛みに息を荒げつつ答えたその言葉は、どうやら男を煽るものだったらしく……
「馬鹿だな、こっからは優しくしてやろうと思ってたのに……」
その言葉と共に、酷く、酷く私のナカを抉られた。
「あっ、だっ――やぁ……」
「嫌って言う割りに、ナカは凄いぜ?」
私の耳元に唇を寄せて、耳朶を噛みながら抽挿を繰り返す。
「キツいわりに柔らけぇ……、お前感じてんだろ?」
何も言えずに、私は唯喘ぐだけで。
「あっ…あぁっ……」
聖さんが、その動きに翻弄される私を覗き込む。
「……お前って、すっげぇ虐めたくなる……」
その言葉とは裏腹に、責め立てるような動きが何か探るように緩やかな腰付きになった。
「泣いて善がって、イかせてって言わせてやりたい……」
あぁ、この男は本当にサドだ。この抽挿は優しいんじゃない。私の感じる所をただ貪欲に探っているんだ。そう思う私に訪れたのは恐怖ではなくゾクゾクとした期待だった。
「お前、マゾだろ。俺が喋るたびにこんなに締め付けて……」
「あ、あ、あぁ……」
掠る。確かに感じる場所があって、そこを掠られるたびに腰が跳ねた。絶対に気付いているはずなのに、聖さんはそこを責めてはくれない。
「マリア…、お前今すっげぇ物欲しそうな顔してる」
「…んっ、だって……海、人さっ……」
「言ったら、ご褒美やるよ」
「な、にをっ……?」
きっとそれは「イかせて」の言葉だと思ったのに、優しいキスと共に降って来たのは……
「好きって、言ってくれ」
心臓が破れてしまうかと思った。今までの余裕はどこに行ったのか、聖さんの瞳は愛を乞う哀れな男のモノだった。
「好き……好き、好き」
愛してる、ずっと、ずっと前から――――
「マリア……俺もだ。好きだ…愛してる……」
唇を奪われる。口内を舌が犯す。同時に激しくなった抽挿に、私の頭は真っ白になっていった。
「んぅ……んっ…!んんっ――!!」
あぁ、だめ、やめて、気持ち良すぎて頭が変になりそう。
「マリア――」
私への劣情を吐息と共に吐き出して――それが余計に私を煽る。
「海、人さ…、好き……好き、すき――」
ガツガツと私を貪る猛々しい雄が、その質量を増して私を責め抜いた。
それは、彼の言葉通り私が泣いて善がってイかせてと叫ぶまでずっと、ずっと続いた……
「ベッド、ぐちゃぐちゃですよ……」
「あー……まぁ、とりあえずこれだけ持ち帰ればいいだろ」
と、聖さんが手にしたのは濡れたシーツです。えぇ、血がついてます。
「洗ってこっそり返却ですか?」
「んや、記念に取っとく」
…………
「オッサン……?」
「ん?」
何その爽やかな笑顔。
ふんだくってやろうと思ったのにひらりとかわされ、結局家にお持ち帰りされたそれは――
勿論、私の人生最大の黒歴史になったのでした――
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