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本編
第一話
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午前の授業が終わり、昼休憩の時間になった。
僕――木野宮零はいつも通り食堂に向かう。
気合と怒りが混じったような、力強い足取りでずんずん進む。
待ち合わせしている二つ年上、高校三年生になる彼氏の元に向かったのだが――。
「……はあ。やっぱり、今日もか」
食堂に入ると、一つのテーブルに生徒の塊ができているのが見えた。
あの中心に、僕の待ち合わせ相手がいる。
僕の彼氏、栗須貴久は『超』がつく人気者なのだ。
通っているこの『秀海高校』は、エリートを育てる学園都市内の特別行政区にあり、一般的な高校とは違う。
午前中の授業の学習内容は一般的なものだが、午後からはそれぞれの分野に特化した特別授業が行われる。
その準備や移動のため、昼の休憩時間が二時間もあるのだが……。
二時間もあれば軽く遊ぶこともできるし、じっくり話すこともできる。
だから、僕の彼氏である貴久先輩とお近づきになりたい生徒達はここぞとばかりに、いつもこの時間に群がってくるのだ。
気に入らない光景に向かってどすどす進んでいくと、センター分けのサラサラな金髪に、金のまつげが縁取る美しい蒼い目の『王子様』な貴久先輩が見えた。
今日も腹が立つほど美しい。
群がる生徒達に苦笑を浮かべているが、その困った表情も絵になる。
「クリス先輩は何を食べるんですか?」
ここは男子校だから男子しかいないのに、女子のような可愛らしい声が聞こえる。
また、あいつか!
「はいはい、どけてくださいね!」
人だかりを蹴散らしながら進むと、思った通りの光景が見えた。
僕の彼氏の隣を陣取り、腕に絡みつく美少年――早川千鳥。
桃色の髪に翡翠色の瞳で、中性的な容姿をしている。
……悔しいけど、二人は似合う。
僕はよくある栗色の髪にグレーの瞳で、特別整った容姿じゃない。
でも……付き合っているのは僕だ!
「早川、いいかげんにしてくれない? 貴久先輩の隣は僕の席なんだけど!」
「はあ? あんたが買った椅子じゃないででしょ? 早い者勝ちだから」
「まあまあ、喧嘩しないで。ほら、零はこっちにおいで。ちゃんと空けておいたから」
そう言って貴久先輩は反対側の席をポンポンと叩いているが……。
「先輩、二人で違うところに行こうよ」
こんな環境ではまともに話ができないし、僕は貴久先輩と二人っきりになりたいのだ。
「ええー、クリス先輩ここにいてよ」
早川がより一層、貴久先輩に凭れ掛かかって甘える。
「……そうだな、ここでもいいか。零、いいよね?」
「やったあ!」
「…………」
……はあ……まただ。
思わず深いため息をついた。
僕の意見はいつも通らない……いつもそうだ。
早川にベタベタされている貴久先輩を見てイライラしながら、味のしないご飯を食べる毎日――。
僕は先輩と二人でいたいのに、先輩は違うのか?
二人きりじゃないのは嫌だけど、先輩といたいから我慢して、いつも集団での昼休憩を過ごす。
全然楽しくない。もうこんな日々はやめたい。
いつも思うのに、先輩は別れ際になると必ず僕だけを人目のないところに連れて行き、「オレが好きなのは零だけだよ」と言って抱きしめる。
そんなことに絆され、同じ毎日を繰り返していたが……もう限界だ。
「じゃあ、僕は他のところで食べますね。もうここには来ません。……さようなら」
もう、疲れたよ。
一人でいた方がまだマシだ。
「え? 零?」
戸惑っている貴久先輩の声が聞こえるけど、もう足を止めることはない。
もう、昼休憩にここに来ることもないだろう。
もっと早くこうするべきだったんだ。
早川が「ふふん」と楽しそうに笑った気がしたが、もう関係ない。
……決めた。
貴久先輩も、早川も、もう僕の世界からいないものとする!
僕――木野宮零はいつも通り食堂に向かう。
気合と怒りが混じったような、力強い足取りでずんずん進む。
待ち合わせしている二つ年上、高校三年生になる彼氏の元に向かったのだが――。
「……はあ。やっぱり、今日もか」
食堂に入ると、一つのテーブルに生徒の塊ができているのが見えた。
あの中心に、僕の待ち合わせ相手がいる。
僕の彼氏、栗須貴久は『超』がつく人気者なのだ。
通っているこの『秀海高校』は、エリートを育てる学園都市内の特別行政区にあり、一般的な高校とは違う。
午前中の授業の学習内容は一般的なものだが、午後からはそれぞれの分野に特化した特別授業が行われる。
その準備や移動のため、昼の休憩時間が二時間もあるのだが……。
二時間もあれば軽く遊ぶこともできるし、じっくり話すこともできる。
だから、僕の彼氏である貴久先輩とお近づきになりたい生徒達はここぞとばかりに、いつもこの時間に群がってくるのだ。
気に入らない光景に向かってどすどす進んでいくと、センター分けのサラサラな金髪に、金のまつげが縁取る美しい蒼い目の『王子様』な貴久先輩が見えた。
今日も腹が立つほど美しい。
群がる生徒達に苦笑を浮かべているが、その困った表情も絵になる。
「クリス先輩は何を食べるんですか?」
ここは男子校だから男子しかいないのに、女子のような可愛らしい声が聞こえる。
また、あいつか!
「はいはい、どけてくださいね!」
人だかりを蹴散らしながら進むと、思った通りの光景が見えた。
僕の彼氏の隣を陣取り、腕に絡みつく美少年――早川千鳥。
桃色の髪に翡翠色の瞳で、中性的な容姿をしている。
……悔しいけど、二人は似合う。
僕はよくある栗色の髪にグレーの瞳で、特別整った容姿じゃない。
でも……付き合っているのは僕だ!
「早川、いいかげんにしてくれない? 貴久先輩の隣は僕の席なんだけど!」
「はあ? あんたが買った椅子じゃないででしょ? 早い者勝ちだから」
「まあまあ、喧嘩しないで。ほら、零はこっちにおいで。ちゃんと空けておいたから」
そう言って貴久先輩は反対側の席をポンポンと叩いているが……。
「先輩、二人で違うところに行こうよ」
こんな環境ではまともに話ができないし、僕は貴久先輩と二人っきりになりたいのだ。
「ええー、クリス先輩ここにいてよ」
早川がより一層、貴久先輩に凭れ掛かかって甘える。
「……そうだな、ここでもいいか。零、いいよね?」
「やったあ!」
「…………」
……はあ……まただ。
思わず深いため息をついた。
僕の意見はいつも通らない……いつもそうだ。
早川にベタベタされている貴久先輩を見てイライラしながら、味のしないご飯を食べる毎日――。
僕は先輩と二人でいたいのに、先輩は違うのか?
二人きりじゃないのは嫌だけど、先輩といたいから我慢して、いつも集団での昼休憩を過ごす。
全然楽しくない。もうこんな日々はやめたい。
いつも思うのに、先輩は別れ際になると必ず僕だけを人目のないところに連れて行き、「オレが好きなのは零だけだよ」と言って抱きしめる。
そんなことに絆され、同じ毎日を繰り返していたが……もう限界だ。
「じゃあ、僕は他のところで食べますね。もうここには来ません。……さようなら」
もう、疲れたよ。
一人でいた方がまだマシだ。
「え? 零?」
戸惑っている貴久先輩の声が聞こえるけど、もう足を止めることはない。
もう、昼休憩にここに来ることもないだろう。
もっと早くこうするべきだったんだ。
早川が「ふふん」と楽しそうに笑った気がしたが、もう関係ない。
……決めた。
貴久先輩も、早川も、もう僕の世界からいないものとする!
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