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新学期

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新学期。
高校2年生。

今年は倫と別のクラスになってしまった。
倫は理系大学クラスで朔は短大専門学校クラスなので、当然と言えば当然だった。

朔は考えて、陽子のような保育士になる勉強をしたいと思った。
桃の面倒を見るのも好きだし、子供だったら人見知りの性質もあまり発動しない。
仕事になれば保護者の対応もしなくてはならないが、それはおいおい直していこうと、朔にしては前向きに考えた。

それを聞いた両親は喜んだ。
初めて朔がやりたいと自分の考えを言ってくれたから。
ただ元が、
「お母さんのようになりたいか…。お父さんのようにでないのが悔しいな」
と言って、朔を慌てさせた。

陽子は笑って、
「もっと頑張って働いて、朔に目標にしてもらえるようになるわ」
「お父さんも仕事は違っても尊敬されるように頑張るよ」
「がんばりゅろ」
桃が大人達の会話に飽きたのか、朔の背中に抱きついて叫んだ。
それを見て両親は笑って朔と桃の頭をくしゃしゃと撫でた。

もう、尊敬はしてるけど。
頭を撫でてもらつて嬉しくて、朔は頬を赤くして笑った。


守屋敷麗香は2年生にはならなかった。
勿論落第したのではなく、イギリスの大学に戻るのだと言う。

「休学してたのよ」
朔は治朗から麗香の年齢を聞いてたので驚かなかった。
「どうしてそこまでして?」
「ずっとあちらにいたから普通の学校生活をしてみたかったの」
言った後、少し悪戯っぽく笑い、
「治朗も日本に戻るって聞いてたし」

「離れて寂しくないの?」
フィアンセと離れてという意味で聞いたのに、麗香はぎゅっと朔の手を握りしめた。
「朔くんと離れるのは寂しい」
朔も姉のように慕っていたので、居なくなってしまうのが悲しかった。

「時々日本に戻ってくるから。夏休みにあちらに遊びに来たらいいわ。あちこち案内するから」
そう言われたが、パスポートもイギリスまでの渡航費も用意できそうにもなく曖昧に笑って誤魔化した。

「朔くんが保育士になったら私の子供をお願いしたいわ。だから頑張ってね」
そう言って麗香はぎゅっと朔を抱き締めた。
「子供…」
麗香と治朗の子供、きっと可愛らしいだろう。
想像して、少しどきどきしてしまった。

「きっと、また会いましょう」
そう言って、麗香は桜がまだ咲く前に行ってしまった。

アルバイトは図書室の仕事が終わったことで契約も終了した。
もうあそこへ行く理由もなくなってしまったが、朔はバイトの最後の日治朗に時々あの庭へ行ってもいいと許可を貰っていた。

そこでじーちゃとまた会える。
麗香もいなくなり、倫とはクラスも別々になり寂しく感じてはいたが、家族の笑顔とじーちゃのもふもふがあれば頑張れる。
そう思った。

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