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あれからとこれから
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「ただいま」
日付を跨いでしまって、マンションの玄関扉を小声でそっと閉じる。
明日も仕事のはずの幹はもう就寝しているだろう。
洗面所でうがいをし手を洗った後キッチンへ向かう。
冷蔵庫から缶ビールを取り出し、プルトップを抜くのももどかしく流し込む。
やっと一息付けた。
缶を持ったままリビングへ向かうと、ダイニングテーブルの上にラップをした器が乗っていた。
料理が苦手な幹だったが、一緒に暮らすようになってから少しずつ料理に挑戦し始めた。
最近やっと幹の舌の合格点を得たのか、幹の手料理がたまに食卓に出るようになった。
それまでは味見もさせてくれなかった。
不味くても食べたいと言う森川に、幹は怒ったように
「ぜってーやだ」
目尻を赤らめて言う。
「いつか料理の腕で晃をうならせてやるからな」
と、違う意味で森川を唸らせた。
そんな幹の手料理。
鮭の塩麹焼き、里芋と豚挽き肉の煮物。森川が好きなほうれん草とチーズ入りの卵焼き。
卵焼きが少し焦げているのはご愛敬。味噌汁まで手が回らなかったのか、インスタントだった。
一口一口大事に堪能し、残さず完食。
出張で外食ばかりの森川を気遣い、慣れない料理を頑張ってくれた人。
「もうどうしていいか分からない」
愛おしすぎて。
「うちの奥さん可愛すぎ」
本人に向かって言ったなら、絶対顔をしかめて言うはずだ。
「奥さんはお前だろ」
料理も含めて家事は森川の方が上手だし負担が多い。
2人とも仕事してるんだからと、幹は半分は自分がすると主張するが、森川はやらせてほしいと反対していた。
愛する人の世話をしたい。負担なんかじゃない。させてほしい。
「夜の方は幹さんの方が負担かかるんだから」
と、茶化すと幹はむっとしてそっぽを向く。
「じゃあ、そっちも負担半分にしろ」
「駄目です。だから家事は俺の負担にしてください」
そんな会話を思い出しながら、シャワーを浴び歯磨きしてからそっと寝室の扉を閉めた。
2人のために一番大きいサイズを購入したベットにはこんもりとタオルケットの山。
幹らしく右半分に横になっていた。
後から寝に来る森川の場所を眠った後も空けていてくれる。
そっと背中を向けた幹の脇に滑り込むように横になる。
腕を回して幹の腹を抱き締める、起こさないようにそっと。
幹の髪に鼻先を埋めて幹の匂いを嗅ぐ。
ここが俺の居場所だ。
そう強く思った。
両親も弟も愛してる。大事な家族だ。
でもこの世の中で失いたくないのは、この場所だった。
腕の中の幹がごそごそと動く。
身体の向きを変え、森川の肩に額を擦り寄せる。
「お帰り」
目を閉じたまま、ため息を付くように幹が呟いた。
目が覚めた訳ではないようだ。
「ただいま、雅司さん」
森川は幹の頬にそっと唇を触れて、目を閉じた。
「ん」
幹が腕を伸ばし背中を抱き締められ、森川は身震いするように幸せを感じた。
ずっとここに居られるように。
祈るように眠りに付いた。
日付を跨いでしまって、マンションの玄関扉を小声でそっと閉じる。
明日も仕事のはずの幹はもう就寝しているだろう。
洗面所でうがいをし手を洗った後キッチンへ向かう。
冷蔵庫から缶ビールを取り出し、プルトップを抜くのももどかしく流し込む。
やっと一息付けた。
缶を持ったままリビングへ向かうと、ダイニングテーブルの上にラップをした器が乗っていた。
料理が苦手な幹だったが、一緒に暮らすようになってから少しずつ料理に挑戦し始めた。
最近やっと幹の舌の合格点を得たのか、幹の手料理がたまに食卓に出るようになった。
それまでは味見もさせてくれなかった。
不味くても食べたいと言う森川に、幹は怒ったように
「ぜってーやだ」
目尻を赤らめて言う。
「いつか料理の腕で晃をうならせてやるからな」
と、違う意味で森川を唸らせた。
そんな幹の手料理。
鮭の塩麹焼き、里芋と豚挽き肉の煮物。森川が好きなほうれん草とチーズ入りの卵焼き。
卵焼きが少し焦げているのはご愛敬。味噌汁まで手が回らなかったのか、インスタントだった。
一口一口大事に堪能し、残さず完食。
出張で外食ばかりの森川を気遣い、慣れない料理を頑張ってくれた人。
「もうどうしていいか分からない」
愛おしすぎて。
「うちの奥さん可愛すぎ」
本人に向かって言ったなら、絶対顔をしかめて言うはずだ。
「奥さんはお前だろ」
料理も含めて家事は森川の方が上手だし負担が多い。
2人とも仕事してるんだからと、幹は半分は自分がすると主張するが、森川はやらせてほしいと反対していた。
愛する人の世話をしたい。負担なんかじゃない。させてほしい。
「夜の方は幹さんの方が負担かかるんだから」
と、茶化すと幹はむっとしてそっぽを向く。
「じゃあ、そっちも負担半分にしろ」
「駄目です。だから家事は俺の負担にしてください」
そんな会話を思い出しながら、シャワーを浴び歯磨きしてからそっと寝室の扉を閉めた。
2人のために一番大きいサイズを購入したベットにはこんもりとタオルケットの山。
幹らしく右半分に横になっていた。
後から寝に来る森川の場所を眠った後も空けていてくれる。
そっと背中を向けた幹の脇に滑り込むように横になる。
腕を回して幹の腹を抱き締める、起こさないようにそっと。
幹の髪に鼻先を埋めて幹の匂いを嗅ぐ。
ここが俺の居場所だ。
そう強く思った。
両親も弟も愛してる。大事な家族だ。
でもこの世の中で失いたくないのは、この場所だった。
腕の中の幹がごそごそと動く。
身体の向きを変え、森川の肩に額を擦り寄せる。
「お帰り」
目を閉じたまま、ため息を付くように幹が呟いた。
目が覚めた訳ではないようだ。
「ただいま、雅司さん」
森川は幹の頬にそっと唇を触れて、目を閉じた。
「ん」
幹が腕を伸ばし背中を抱き締められ、森川は身震いするように幸せを感じた。
ずっとここに居られるように。
祈るように眠りに付いた。
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