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「すいません」
森川は床に手を付いて頭を下げる。いわゆる土下座だ。
原因は昨夜にある。昨日は皆沢山呑んだ。幹はほとんど酔ってなかったが、トイレに行ってる間森川はダウンしたらしい。テーブルにうつ伏せになっていた。
香は木皿と先に帰っていた。
スマホが震えているので見ると、香から
「ごめーん、後は宜しく」
はぁー。
取り敢えず森川を起こそうとしたが、全く起きず。
支払いは香がしてくれていたようなので、タクシーを捕まえ、自分より重い森川にをやっとこさとタクシーに放り込む。
「森川くん、住所は?」
「$%∪∽Ⅴ」
何を言ってるか不明。
思い付き、自分の住所を言った。
「駅の近くで一度停めて下さい」
わずかな望み。
「やっぱり閉まってたか」
森川くんのバイト先スルタンは閉まっていた。10時閉店とあった。今は11時半。
仕方なく自分の部屋へ連れてきた。
いわゆるお持ち帰り、相手は男だけど。
桃果が泊まったときのようにソファーに寝せた。
今朝起きた森川は真っ青になって土下座した、というわけだ。
「大げさだよ。酔っぱらって寝ちゃっただけだから」
住所知らないし。
「俺なんか失礼なことしませんでしたか?」
必死な様子で尋ねる。
「失礼なことって?吐いたり絡んだりはしなかったけど」
「そうじゃなく…」
「?」
「乱暴なこと、無理矢理っていうか」
真っ赤になって口ごもるので、幹は笑って
「襲わなかったかって?いくら酔っても男相手に欲情しないでしょ」
そう言うと、森川は力が抜けたようにそのまま床に倒れた。
「大丈夫?」
幹さんが取り敢えずコーヒーをいれてテーブルにマグカップを2つ置きソファーに座る。
「君も座れば」
そう言うと、森川くんは幹の隣ではなく、ソファーの向の床に正座した。
「すいません」
「この場合、ありがとうの方が嬉しいけど」
「ありがとうございます」
森川はそう言ってコーヒーを一口飲む。そしてほっと息を吐いた。
「分かってるかもしてませんが、俺幹さんが好きなんです」
「ぶっ」
幹は飲んでいたコーヒーを吹いた。
「ごめん」
幹はティッシュボックスからティッシュを何枚も引っ張り出して森川に渡した。自分もテーブルに飛んだコーヒーを拭く。
自分の顔をティッシュで拭く森川に、
「君、オレ嫌いなんじゃないの?」
聞くとこそこですか、森川は小さく呟いた。
「なに?」
「自分では分からないんですけど、俺緊張すると顔が強ばるんです。木皿や家族に時々言われました」
「緊張?オレといると緊張するの?なんで?」
きょとんと尋ねる幹に、
「好きだからです」
「…」
考え込む幹に、森川は立ち上がろうとしながら、
「気持ち悪いですよね。男から」
「そこじゃなく。君がオレを好きになる要素っていうか、理由なんてあったか?図書館で本の貸出返却しかしてないのに」
森川は拍子抜けしたように、もう一度床の上に座った。正座ではなく、胡座。
「去年春に俺怪我してラグビーできなくなったです。」
「ラグビー?うちの大学で?」
森川は頷く。
「うちの大学ってラグビー結構強いよね」
「そうですね」
でも。ラグビー部の奴等よりは身体華奢な方だな。内心思う。オレに比べてがっちりはしてるが、あのラグビー部の面々よりは…あいつらキャタピラーみたいだもんな。
「ずっと落ち込んでて。図書館の近くの休憩室で落ち込んでたら、幹さんが缶のお汁粉をくれたんです」
「お汁粉?」
せめてコーヒーにしろよ、オレ。幹は苦笑する。
「俺あんこ苦手なんですけど、見知らぬ人に貰ったお汁粉がすごく美味しかった。と言うか、染みました」
「苦手だったんだ。そうだよなぁ、コーヒーよりお汁粉の方は好き嫌いあるよなぁ」
「問題はそこじゃないと思いますけど」
森川は笑ってコーヒーを飲んだ。初めて笑った顔見せたな、幹は少しほっとした。
「いつも沢山本借りてるけど、あれちゃんと読んでんの?」
「はい。元々本読むの好きなんです。大学入ってラグビーばっかで暫く読んでなかったけど、怪我してできなくなったから。読む時間は増えたんです」
「読むの早いよね」
そう言うと、森川は赤くなって、
「図書館に行くと幹さんに会えるから…」
乙女か。心のなかで突っ込む。
赤くなってマグカップを両手で包むように持ってコーヒーを飲む森川を見て、そっとため息をつく。
今も少し緊張してるんだろう。無愛想な表情。
でもよく観察すると、本当に無愛想なのではなく緊張した表情にも見えなくもない。
嫌なやつではないな。うん。
「苦手なお汁粉貰ってなんで好きになるんだ?」
素朴な疑問点。
「あの、何て言ったらいいか」
照れたように笑って、
「すごいへこんでたんです。もう大学辞めようかと思うくらい。でもお汁粉貰って、折角だからと飲んだら。なんかお腹の中から暖まって…」
「…」
「幹さんは何も言わずに隣に座ってたんです。自分の飲んだら、じゃあなって図書館へ入って行って」
なんとなく、そんなことがあったような…朧気に思い出した。
ガックリ肩落とした奴がいたから、何となく自分が飲んでるのと同じお汁粉をあげた。少しでも元気になればいいな、って。思ったかな…?
「まぁ、それはきっかけで。時々図書館や食堂で見かけて、それで」
「まぁ、良かったよ。嫌われてないなら」
「すいま…。ありがとうございます」
「なにが?」
「告白したら嫌がられるかと思ってたので」
「本気の告白ならいやじゃないよ。まぁ、付き合う付き合わないは別にして」
「そうですね…」
「オレ君のことよく知らないから。まぁ、とにかく友達ってことで」
宜しくと右手を差し出すと、森川はぱぁっと明るい顔をして、
「ありがとうございます。宜しくお願いします」
と握り返してきた。
森川は床に手を付いて頭を下げる。いわゆる土下座だ。
原因は昨夜にある。昨日は皆沢山呑んだ。幹はほとんど酔ってなかったが、トイレに行ってる間森川はダウンしたらしい。テーブルにうつ伏せになっていた。
香は木皿と先に帰っていた。
スマホが震えているので見ると、香から
「ごめーん、後は宜しく」
はぁー。
取り敢えず森川を起こそうとしたが、全く起きず。
支払いは香がしてくれていたようなので、タクシーを捕まえ、自分より重い森川にをやっとこさとタクシーに放り込む。
「森川くん、住所は?」
「$%∪∽Ⅴ」
何を言ってるか不明。
思い付き、自分の住所を言った。
「駅の近くで一度停めて下さい」
わずかな望み。
「やっぱり閉まってたか」
森川くんのバイト先スルタンは閉まっていた。10時閉店とあった。今は11時半。
仕方なく自分の部屋へ連れてきた。
いわゆるお持ち帰り、相手は男だけど。
桃果が泊まったときのようにソファーに寝せた。
今朝起きた森川は真っ青になって土下座した、というわけだ。
「大げさだよ。酔っぱらって寝ちゃっただけだから」
住所知らないし。
「俺なんか失礼なことしませんでしたか?」
必死な様子で尋ねる。
「失礼なことって?吐いたり絡んだりはしなかったけど」
「そうじゃなく…」
「?」
「乱暴なこと、無理矢理っていうか」
真っ赤になって口ごもるので、幹は笑って
「襲わなかったかって?いくら酔っても男相手に欲情しないでしょ」
そう言うと、森川は力が抜けたようにそのまま床に倒れた。
「大丈夫?」
幹さんが取り敢えずコーヒーをいれてテーブルにマグカップを2つ置きソファーに座る。
「君も座れば」
そう言うと、森川くんは幹の隣ではなく、ソファーの向の床に正座した。
「すいません」
「この場合、ありがとうの方が嬉しいけど」
「ありがとうございます」
森川はそう言ってコーヒーを一口飲む。そしてほっと息を吐いた。
「分かってるかもしてませんが、俺幹さんが好きなんです」
「ぶっ」
幹は飲んでいたコーヒーを吹いた。
「ごめん」
幹はティッシュボックスからティッシュを何枚も引っ張り出して森川に渡した。自分もテーブルに飛んだコーヒーを拭く。
自分の顔をティッシュで拭く森川に、
「君、オレ嫌いなんじゃないの?」
聞くとこそこですか、森川は小さく呟いた。
「なに?」
「自分では分からないんですけど、俺緊張すると顔が強ばるんです。木皿や家族に時々言われました」
「緊張?オレといると緊張するの?なんで?」
きょとんと尋ねる幹に、
「好きだからです」
「…」
考え込む幹に、森川は立ち上がろうとしながら、
「気持ち悪いですよね。男から」
「そこじゃなく。君がオレを好きになる要素っていうか、理由なんてあったか?図書館で本の貸出返却しかしてないのに」
森川は拍子抜けしたように、もう一度床の上に座った。正座ではなく、胡座。
「去年春に俺怪我してラグビーできなくなったです。」
「ラグビー?うちの大学で?」
森川は頷く。
「うちの大学ってラグビー結構強いよね」
「そうですね」
でも。ラグビー部の奴等よりは身体華奢な方だな。内心思う。オレに比べてがっちりはしてるが、あのラグビー部の面々よりは…あいつらキャタピラーみたいだもんな。
「ずっと落ち込んでて。図書館の近くの休憩室で落ち込んでたら、幹さんが缶のお汁粉をくれたんです」
「お汁粉?」
せめてコーヒーにしろよ、オレ。幹は苦笑する。
「俺あんこ苦手なんですけど、見知らぬ人に貰ったお汁粉がすごく美味しかった。と言うか、染みました」
「苦手だったんだ。そうだよなぁ、コーヒーよりお汁粉の方は好き嫌いあるよなぁ」
「問題はそこじゃないと思いますけど」
森川は笑ってコーヒーを飲んだ。初めて笑った顔見せたな、幹は少しほっとした。
「いつも沢山本借りてるけど、あれちゃんと読んでんの?」
「はい。元々本読むの好きなんです。大学入ってラグビーばっかで暫く読んでなかったけど、怪我してできなくなったから。読む時間は増えたんです」
「読むの早いよね」
そう言うと、森川は赤くなって、
「図書館に行くと幹さんに会えるから…」
乙女か。心のなかで突っ込む。
赤くなってマグカップを両手で包むように持ってコーヒーを飲む森川を見て、そっとため息をつく。
今も少し緊張してるんだろう。無愛想な表情。
でもよく観察すると、本当に無愛想なのではなく緊張した表情にも見えなくもない。
嫌なやつではないな。うん。
「苦手なお汁粉貰ってなんで好きになるんだ?」
素朴な疑問点。
「あの、何て言ったらいいか」
照れたように笑って、
「すごいへこんでたんです。もう大学辞めようかと思うくらい。でもお汁粉貰って、折角だからと飲んだら。なんかお腹の中から暖まって…」
「…」
「幹さんは何も言わずに隣に座ってたんです。自分の飲んだら、じゃあなって図書館へ入って行って」
なんとなく、そんなことがあったような…朧気に思い出した。
ガックリ肩落とした奴がいたから、何となく自分が飲んでるのと同じお汁粉をあげた。少しでも元気になればいいな、って。思ったかな…?
「まぁ、それはきっかけで。時々図書館や食堂で見かけて、それで」
「まぁ、良かったよ。嫌われてないなら」
「すいま…。ありがとうございます」
「なにが?」
「告白したら嫌がられるかと思ってたので」
「本気の告白ならいやじゃないよ。まぁ、付き合う付き合わないは別にして」
「そうですね…」
「オレ君のことよく知らないから。まぁ、とにかく友達ってことで」
宜しくと右手を差し出すと、森川はぱぁっと明るい顔をして、
「ありがとうございます。宜しくお願いします」
と握り返してきた。
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