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第1章 学院入学編

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「ひぃ……」

真夜中の戦闘が繰り広げられたであろう場所
無数の仲間達の屍が散乱する光景を目にし
恐怖に満ちた声が木霊する。

「ば、化け物悪魔…」

恐怖に顔を染め腰を抜かし体を這いずって後ずさる男の前に1人の仮面をつけた男が立っていた。
そのまま男は目の前で男の頭に手をのせ一言言葉を発する。

「 破壊ディストラクション 」

その一言で恐怖に顔を歪ませいた男は無表情になり目は光を無くしまるで停止したかのようにそのまま横に倒れた。

彼は何を考えているのだろう
仮面のせいで彼の表情はみえない。その事切れた男をただ見下ろしている所に人影が4つ現れる。

「隊長、任務終了しました」

男は声のする後方に体を向け
そこには敬礼し任務遂行した部下達の姿があり
ご苦労と一言発すればその場の緊張感は一気に飛散する。

男は仮面を外すと180程あった身長も少しばかり縮み赤髪は藍色の髪色へと変わりこのような場所にいるには場違いな少年への姿へとなる。

認識阻害──その仮面には付けている者を別人に見えるような魔法式が組み込まれた仮面であり正体を隠している者にとっては必需品である。

「任務終わった~!!」

そんな砕けた言葉を発し背伸びするのはまだ20歳そこらの容姿の女性が一仕事終えた疲れを噛み締めていた。

その様子を見て隊長と呼ばれていた少年は無表情ではなく笑顔をみせる。

「アンナ・フィフス上等兵、気を抜くな
帰還までが任務だぞ」

「なっ…エ、エリク!フルネームで呼ぶなー!!
しかも何その帰るまでが遠足だぞみたいなセリフ!」

真面目な顔をして注意したエリクと呼ばれた男を含め隊のみんなが吹き出し笑いに包まれる。

一頻り笑った後でエリクが口を開く

「隊長、今日が隊の最後の任務であり隊長とこれまで共に任務につけた事を光栄に思います。アレン・ドレファス大尉に敬礼!」

その号令と共に4人共に綺麗に揃う敬礼を行った。
それをみた隊長はというと…

「ふ、フルネームやめて!
ほんと何かむず痒いから!!」

そこには羞恥からか身体をプルプルさせ身悶えた隊長をみてまた笑い出す隊員達の姿があった。

この時隊のメンバーが考えた事は同じだった
この目の前で自分達より歳下で年相応の表情をみせる少年があのまるで殺気を着込むかのように纏い敵を殲滅して行く他国だけでなく自国の中からも恐れられ『帝国の悪魔』と言われているアレン・ドレファスと同一人物なのかと──

「俺は軍を辞める。3年間こんな俺に付いてきてくれてありがとう。これが最後の別れともいうわけでもないだろうし、もしどこかで会う事があれば気軽に話しかけてくれ。あ、でもアレン・ドレファスの名は秘密で!これは軍人としての名だから…」

「寂しくなるなー!レイ!」

そういいアレン改めてレイの頭に腕を回しホールドをキメるアンナに

「うぉ、締まってる締まってる…
死ぬからほんとに息できないから」

アンナの腕を必死にタップし抜け出そうとする
雰囲気は軍人ではなく友達と接する様子であった──。


軍基地に戻り上官に任務遂行の報告をし部下達に見送られながら基地を後にする。

アレン・ドレファスではなくレイ・グラスティスとしてこれから訪れるだろう普通の学園生活に色々な思いを馳せながら帰路に着く──


◇◇


「レーーーーーーイ…ィ!!
…おー…ろ!おーーきーー…ろッ!!!」

ドゴンッ

「ウゲッえ」

俺は不意に訪れた腹部の激痛に一気に目を覚ました。
目の前には俺が居候させてもらっている従兄弟でありこのエルドラ家のご令嬢でもある同い年のリリスが青筋を浮かべ見下ろしていた…。
エルドラ家は本家にあたり俺のグラスティス家は分家にあたる家である。


「あんた、今日が入学式って分かってるわよね?
今何時だと思ってるのかな?
来てみれば気持ち良さそうに寝てるなんて…」

そこまで言うとリリスは鉄槌を俺の腹部に振り下ろしたのだった──。



15歳から3年間強制では無いものの学院に通うことができる。

4年前に起きた三大国1つ、アスタリア王国やその周辺諸国を巻き込んだ大規模戦役に兵器として生まれ育てられた俺は〝六魔公〟の一角エルドラ家当主サイラスの命により従軍、大戦終結に貢献しそのまま軍属していた。

人生を軍に捧げるものだと思っていた俺にある日当主より学院に通うよう指示がありリリスの護衛を仰せつかい、そういうわけでこうしてリリスと学園に通う事になった。


ナヴァーロ帝国に複数ある学院の内帝都ナヴァロにある数ある学院の中のナヴァロ魔法学院の正門前に俺とリリスは着いていた。

周りにはたくさんの生徒達がおり
中にはリリスの方を見ている生徒もいる。

『リリス様だわ』
『お美しい…』
『六魔公一角のエルドラ公爵家のご令嬢よ』
『エルドラ家って色々黒い噂があるわよね』
『派閥的にはどうなるのかしら』

小声で話しているのだろうが案外聞こえているものである。
ふと横にいるリリスの顔を覗くがいまいち読めない…。

『リリス様の横におられる男性はどなたかしら?結構かっこいいんですけど…』

え、おれ?
かっこいいだなんて照れるな~

「なーーッに!ニヤついてるのよ」
「ひぃいて、ひいててぇ!」

リリスよ、俺のほっぺを思いっきし摘むのは辞めてくれー!!!!

「行くわよ!」

行くからその手を離してくれ…
俺たちは入学式会場へと向かった。





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