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北方動乱

第二十七話 探索開始

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 アレク達が倉庫の中を調べると、網や浮きといった漁具が保管されており、長期間、人の出入りが無く、使用されていないようであった。

 アレクが口を開く。

「よし。ここに荷物と物資を置こう。トゥルムとドミトリーは、ここで荷物の番を頼む」

「了解だ」

 アレクが続ける。

「二人一組で探索しよう。オレとルイーゼ、アルとナタリー、ナディアとエルザ・・・」

 そこまで口にすると、アレクは口籠くちごもる。

 不審に思ったエルザがアレクに尋ねる。

「・・・どうしたの?」

 アレクが気まずそうに答える。

「街には、人狩りがウヨウヨいるようだし、ナディアとエルザの二人は、ちょっと・・・、マズいかなと・・・」

 心配するアレクにエルザは笑顔で答える。

「大丈夫よ!」

 エルザに続いてナディアも自信有り気に答える。

「そうよ、お姉さんに任せなさいって」

 アルがエルザとナディアにツッコミを入れる。

「いや、この街でお前ら二人で組むってのは、凄く不安なんだが・・・」

 エルザが大見えを切って答える。

「大丈夫! 大丈夫! ユニコーンの獣耳けもみみアイドル、エルザちゃんに任せなさいって!!」

 ナディアもエルザに続く。

「エルザはともかく、私が付いているから心配ないわよ」

 アレクが口を開く。

「・・・判った。任せるけど、ローブを羽織ってフードも被り、極力目立たないように行動して。二人とも、目立つから」

「「りょ~か~い!!」」

 アレクから探索任務を任されてナディアとエルザは喜ぶ。

 アルがアレクに耳打ちする。

「アレク。・・・ホントに大丈夫か? 敵地のド真ん中で、やらかしそうな気がするんだが・・・」

 アレクが苦笑いしながらアルに答える。

「・・・彼女達がやらかした時は、やらかした時で、何とかするしかないだろ?」

 アルは諦めたように答える。

「まぁな」

 アレクが口を開く。

「オレとルイーゼは、街の庁舎周辺でカスパニア軍の動静を探る。アルとナタリーは、城壁や塔の防衛施設や設備を調べてくれ。ナディアとエルザは、街の様子を探ってくれ。陽が昇ったら街の探索に出て、日没までに、この倉庫に戻る事。みんな、いいね?」

「「了解!」」

 アレク達は、倉庫の中で陽が昇るのを待つ。







--ゴズフレズ王国 王都ハフニア

 アレク達教導大隊の活躍により、対カスパニア戦争でゴズフレズ軍が初めて大々的に勝利を収めた事で、ゴズフレズ王国の王都ハフニアは、お祭りのような騒ぎになっていた。

 ゴズフレズ王国のハロルド王と、バレンシュテット帝国の皇太子ジークは、王城の応接室に居た。

 ハロルド王が上機嫌にジークに語る。

「むはははは。カスパニア軍三万を容易く敗走させるとは、さすが帝国の黒い剣士が率いる部隊だ!」

 ジークもにこやかに答える。

「お褒め頂き、恐縮です」

 ハロルド王が豪語する。

「かくなる上は、余、自ら前線に出て軍勢を率い、ティティスを奪還してくれようぞ!」

 ジークが驚く。

「ハロルド王、御自ら御出陣なさると!?」

 ハロルド王が熱弁を振るう。

「その通りだ、殿下。ゴズフレズの王は、戦士達の先頭に立たねばならん! それがゴズフレズ王家の伝統なのだ!!」

 ジークに豪語したハロルド王は、軍勢を率いて王都王都ハフニアから前線に向かって行った。







 陽が上り、アレク達は三手に分かれてティティス市内の探索に当たる。

 アレクとルイーゼは市庁舎へ向かい、アルとナタリーは街の城壁と塔を、ナディアとエルザは街の中心街へと向かう。

 ティティス市内は、カスパニア軍兵士と傭兵団、人狩りや、それらを相手に商売する者達で溢れ返り、街の至る所に仮設の救護所が作られ、前線から運び込まれた傷病兵と医療関係者で混雑していた。

 アレクとルイーゼは、港から裏通りを抜け、建物の影から市庁舎の様子を窺う。

 市庁舎前の広場にも仮設の救護所が作られ、運び込まれた傷病兵の手当で看護婦がせわしなく駆け回っていた。

 アレクが口を開く。

「カスパニア軍には随分と傷病兵が居るんだな」

 ルイーゼが答える。

「そうね。飛空艇で司令部を叩いたのが予想以上に効いているみたいね」

 アレクが市庁舎の入り口を指差してルイーゼに告げる。

「ルイーゼ、市庁舎の入り口に歩哨が立ってる。・・・きっと、中にカスパニア軍の高官が居るんだ」

 ルイーゼが答える。

「忍び込めれば、カスパニア軍の動向が掴めるかもしれないわね」

 アレクが口を開く。

「裏へ回ろう」

 アレクとルイーゼは市庁舎の裏手へ回り込む。




 港から城壁に向かうアルとナタリーの二人と、街の中心街に向かうナディアとエルザは、途中まで一緒であった。

 四人で裏通りを歩いていると、通りの角からカスパニア軍の警ら隊がやって来る。

 アルが口を開く。

「マズい! カスパニア軍の警らだ! 二手に分かれよう!」

 四人は、二手に分かれて、それぞれ裏通りの別の店に入り、カスパニア軍の警ら隊をやり過ごす。

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