3 / 11
1 エゴイスティック≒ヒロイック
3.私の中のお兄さんの好感度が急上昇していく件②
しおりを挟む
「おはようございます……」
慣れない場所に緊張して夜中に何度か起きてしまった私は、あくびを極力丁寧に噛み殺しながら起こしに来てくれたらしいアルに挨拶をする。
「おはよう。……寝られなかったか?粗末な部屋で悪いな」
おお、流石色男。
よく変化に気づく。ちゃんと隠したつもりだったのに。
「ううん。ベッドとかふかふかで凄く居心地良かったです。ちょっと緊張しちゃっただけ。素敵なお部屋をありがとう」
粗末な部屋に掛けて返しながら、本心から言っていることを示す為にへにゃりと笑顔も添える。
ほんとにいい部屋だったんだよ。客間なんてそんな使わないだろうにすぐ泊まれるくらい綺麗だったし。家具も揃ってたし。
そんな私を見て、アルは昨日と同じようにどこか困ったように苦笑いした。
「……朝食を用意した。食べられそうか?」
なんとご飯まで用意してくれたと。
しかもその口ぶりからするとご自分でお作りになられましたね?
これはモテますわ。
泊まった日の朝に恋人が朝食用意してくれてるとか女の子だったらきゅんとするに違いない。……多分。ちょっとそこらへん疎いので想像ですが。
少なくとも私は嬉しい。きゅんとはちょっと違うけど、昨日からアルの優しさが身に染み入っている。
というかこういうの一宿の恩として私が買って出るべき仕事でしたよね。ごめんなさい。でも是非頂きたいです。
*************
「ご馳走様でした!凄く美味しかったです!」
ダイニングに案内されてから30分ちょっと。私は大満足でフォークを置く。
ちなみにこの国ではフォークとナイフが主流らしい。
今回は内輪(?)のご飯だったから関係なかったけど、マナーも向こうと大体一緒。貴族のアルの所作を観察したんだから間違いない。
細かいところは違ったとしても、必要に応じて詳しく習えばいいだろう。
いや、それにしても美味しかった。
パンは小麦の甘みがよく出ていて噛めば噛むほど味が出たし(正直スープにつけないと食べられないような堅パンを想像してた)、ベーコンは厚く切られて外はカリカリ中はジュワッだ。
オムレツは新鮮な卵とバター使われてふわっふわ、とろりとしたじゃがいもベースのポタージュは数種類の野菜の旨味が絶妙なバランスでとけ合っている。
素材もいいのだろうけど、アルの料理の腕はかなりのものだ。
量は十分頂いたのだけど食べ終わっても味を反芻して恍惚としてしまう。
「ふっ…ははっ……ああ、君の食べている時の顔を見ればわかるよ。口に合って良かった」
アルはそんな私を見て非常に楽しそうに笑った。
彼は意外と笑い上戸らしい。
「さて、少ししたら準備をして出ようと思うのだが構わないか?」
「うん!あ、王宮へは市街地を通って行くことはできる?」
この世界をまずは自分の目で見たいと訴えるとアルは快く頷いてくれた。
「そうだな。ついでに服も新しく買った方がいいだろう」
あー言い忘れたけど私、実は現在異世界産のワンピースちゃんと着てるんです。はい。
何故かアルが女物の服持ってたんですね。「新品だから大丈夫。」って爽やかに笑われたけどそういう問題じゃないですね。まあツッコまない!ツッコまないんですけど!!
まあ朱色の色っぽいデザインはどう欲目で見ても似合ってないだろうし、仮にも王宮に上がるならドレスとまでは行かなくてもそれなりの格好はした方がいいだろう。
元の世界から着てきた服は、ジーンズ、シャツワンピ、カーディガン。……ちょっと厳しいかな。
服が異世界人たる証明になるーーということもアルの反応を見る限りなさそうなので、ここは素直に彼に頼ろうと思う。
「では、準備が出来たらまたこちらに来てくれ」
「はーい!」
慣れない場所に緊張して夜中に何度か起きてしまった私は、あくびを極力丁寧に噛み殺しながら起こしに来てくれたらしいアルに挨拶をする。
「おはよう。……寝られなかったか?粗末な部屋で悪いな」
おお、流石色男。
よく変化に気づく。ちゃんと隠したつもりだったのに。
「ううん。ベッドとかふかふかで凄く居心地良かったです。ちょっと緊張しちゃっただけ。素敵なお部屋をありがとう」
粗末な部屋に掛けて返しながら、本心から言っていることを示す為にへにゃりと笑顔も添える。
ほんとにいい部屋だったんだよ。客間なんてそんな使わないだろうにすぐ泊まれるくらい綺麗だったし。家具も揃ってたし。
そんな私を見て、アルは昨日と同じようにどこか困ったように苦笑いした。
「……朝食を用意した。食べられそうか?」
なんとご飯まで用意してくれたと。
しかもその口ぶりからするとご自分でお作りになられましたね?
これはモテますわ。
泊まった日の朝に恋人が朝食用意してくれてるとか女の子だったらきゅんとするに違いない。……多分。ちょっとそこらへん疎いので想像ですが。
少なくとも私は嬉しい。きゅんとはちょっと違うけど、昨日からアルの優しさが身に染み入っている。
というかこういうの一宿の恩として私が買って出るべき仕事でしたよね。ごめんなさい。でも是非頂きたいです。
*************
「ご馳走様でした!凄く美味しかったです!」
ダイニングに案内されてから30分ちょっと。私は大満足でフォークを置く。
ちなみにこの国ではフォークとナイフが主流らしい。
今回は内輪(?)のご飯だったから関係なかったけど、マナーも向こうと大体一緒。貴族のアルの所作を観察したんだから間違いない。
細かいところは違ったとしても、必要に応じて詳しく習えばいいだろう。
いや、それにしても美味しかった。
パンは小麦の甘みがよく出ていて噛めば噛むほど味が出たし(正直スープにつけないと食べられないような堅パンを想像してた)、ベーコンは厚く切られて外はカリカリ中はジュワッだ。
オムレツは新鮮な卵とバター使われてふわっふわ、とろりとしたじゃがいもベースのポタージュは数種類の野菜の旨味が絶妙なバランスでとけ合っている。
素材もいいのだろうけど、アルの料理の腕はかなりのものだ。
量は十分頂いたのだけど食べ終わっても味を反芻して恍惚としてしまう。
「ふっ…ははっ……ああ、君の食べている時の顔を見ればわかるよ。口に合って良かった」
アルはそんな私を見て非常に楽しそうに笑った。
彼は意外と笑い上戸らしい。
「さて、少ししたら準備をして出ようと思うのだが構わないか?」
「うん!あ、王宮へは市街地を通って行くことはできる?」
この世界をまずは自分の目で見たいと訴えるとアルは快く頷いてくれた。
「そうだな。ついでに服も新しく買った方がいいだろう」
あー言い忘れたけど私、実は現在異世界産のワンピースちゃんと着てるんです。はい。
何故かアルが女物の服持ってたんですね。「新品だから大丈夫。」って爽やかに笑われたけどそういう問題じゃないですね。まあツッコまない!ツッコまないんですけど!!
まあ朱色の色っぽいデザインはどう欲目で見ても似合ってないだろうし、仮にも王宮に上がるならドレスとまでは行かなくてもそれなりの格好はした方がいいだろう。
元の世界から着てきた服は、ジーンズ、シャツワンピ、カーディガン。……ちょっと厳しいかな。
服が異世界人たる証明になるーーということもアルの反応を見る限りなさそうなので、ここは素直に彼に頼ろうと思う。
「では、準備が出来たらまたこちらに来てくれ」
「はーい!」
0
お気に入りに追加
19
あなたにおすすめの小説
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
俺以外美少女の戦隊ヒーローに入隊したけどヒロインもれなくヤンデレンジャー
寄紡チタン
恋愛
ヤンデレだらけのハーレムヒーロー!?【カクヨムにて1200フォロー突破!!】
戦隊ヒーローが活躍する現代社会である日突然ブルーとしてスカウトされた浅葱空。
美少女だらけのメンバーは全員愛の重たいヤンデレンジャーだった!!
獣人の彼はつがいの彼女を逃がさない
たま
恋愛
気が付いたら異世界、深魔の森でした。
何にも思い出せないパニック中、恐ろしい生き物に襲われていた所を、年齢不詳な美人薬師の師匠に助けられた。そんな優しい師匠の側でのんびりこ生きて、いつか、い つ か、この世界を見て回れたらと思っていたのに。運命のつがいだと言う狼獣人に、強制的に広い世界に連れ出されちゃう話
【本編完結】異世界再建に召喚されたはずなのにいつのまにか溺愛ルートに入りそうです⁉︎
sutera
恋愛
仕事に疲れたボロボロアラサーOLの悠里。
遠くへ行きたい…ふと、現実逃避を口にしてみたら
自分の世界を建て直す人間を探していたという女神に
スカウトされて異世界召喚に応じる。
その結果、なぜか10歳の少女姿にされた上に
第二王子や護衛騎士、魔導士団長など周囲の人達に
かまい倒されながら癒し子任務をする話。
時々ほんのり色っぽい要素が入るのを目指してます。
初投稿、ゆるふわファンタジー設定で気のむくまま更新。
2023年8月、本編完結しました!以降はゆるゆると番外編を更新していきますのでよろしくお願いします。
【完結】うっかり異世界召喚されましたが騎士様が過保護すぎます!
雨宮羽那
恋愛
いきなり神子様と呼ばれるようになってしまった女子高生×過保護気味な騎士のラブストーリー。
◇◇◇◇
私、立花葵(たちばなあおい)は普通の高校二年生。
元気よく始業式に向かっていたはずなのに、うっかり神様とぶつかってしまったらしく、異世界へ飛ばされてしまいました!
気がつくと神殿にいた私を『神子様』と呼んで出迎えてくれたのは、爽やかなイケメン騎士様!?
元の世界に戻れるまで騎士様が守ってくれることになったけど……。この騎士様、過保護すぎます!
だけどこの騎士様、何やら秘密があるようで――。
◇◇◇◇
※過去に同名タイトルで途中まで連載していましたが、連載再開にあたり設定に大幅変更があったため、加筆どころか書き直してます。
※アルファポリス先行公開。
※表紙はAIにより作成したものです。
別に要りませんけど?
ユウキ
恋愛
「お前を愛することは無い!」
そう言ったのは、今日結婚して私の夫となったネイサンだ。夫婦の寝室、これから初夜をという時に投げつけられた言葉に、私は素直に返事をした。
「……別に要りませんけど?」
※Rに触れる様な部分は有りませんが、情事を指す言葉が出ますので念のため。
※なろうでも掲載中
余命宣告を受けたので私を顧みない家族と婚約者に執着するのをやめる事にしました 〜once again〜
結城芙由奈@12/27電子書籍配信
恋愛
【アゼリア亡き後、残された人々のその後の物語】
白血病で僅か20歳でこの世を去った前作のヒロイン、アゼリア。彼女を大切に思っていた人々のその後の物語
※他サイトでも投稿中
【完結済】私、地味モブなので。~転生したらなぜか最推し攻略対象の婚約者になってしまいました~
降魔 鬼灯
恋愛
マーガレット・モルガンは、ただの地味なモブだ。前世の最推しであるシルビア様の婚約者を選ぶパーティーに参加してシルビア様に会った事で前世の記憶を思い出す。 前世、人生の全てを捧げた最推し様は尊いけれど、現実に存在する最推しは…。 ヒロインちゃん登場まで三年。早く私を救ってください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる