暖炉が好きなシンデレラ

ねね

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13 もう一度、同じ夜を

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 2日目の夜。

 シンデレラは魔女に願いました。

「昨日と同じ格好にしてください!」

「おや。そんなにアレが気に入ったのかい?」

「ええと、そのー。実は昨日、舞踏会ですてきな人に会ったんです。

 でも私たち長くは一緒にいられなかったから。その人は私のこと、もうわからないかもしれなくて。

 ほら。3日間同じ格好なら……さすがに覚えてもらえるんじゃないのかなー、と。」

 魔女は首をかしげました。

「んん?あの坊やはそこまで忘れっぽく見えなかったけどね。

 ……………あんたまさか、坊やの顔をきちんと覚えられなかったのかい。忘れてるのは自分じゃないの?ぼんやりしてるとは思ってたけど。」

 昨夜、魔女はこっそりシンデレラの様子を覗いていたのです。彼女はこれで結構、律儀に世話を焼く人なのでした。

「………うっ……。」

「え、ちょっと、うそだろ!?
 あれだけひっついておいてさ!」

(いやその。なんて言ったら良いんだろ。)

 もちろん会えばわかるはずです。
 はず、ですけれども。

 わからなかったらどうしよう、と思うとどんどん怖くなって行くのです。そしてわからないような気がし始めてしまいます。

 まるで悩みのための悩み。答えを出さないための悩み。考えれば考えるほど不安が大きくなるばかり。

 シンデレラは臆病のスパイラルに陥りつつありました。

「はあ……しょーもない。
 けどまあ、案外、ちょうど良いかもしれないね。」

 魔女は半目です。

 それでも。よくわからないことを言いながら、彼女はシンデレラの望みを叶えてくれたのでした。

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