異世界、転生………。

15 文字通りのすれ違い

　どうしよう。どうしよう。

　頭の中がとっ散らかった状態で山頂をうろうろしていると、暫くして何かの気配がした。

　振り向けば。小綺麗な人型の青年がこちらをじーーーっと見つめている。

　彼はさっきのドラゴンである。

　そりゃ分かる、だって分かったんだもの。

　人化したドラゴンは、山の上には場違いなくらいに洒落た格好をしていた。よく似合っていて私のような追いはぎセットには見えない。

　キレイだなー。
　あの服、どこに置いておいたのかなー。

　なんて他愛ないことを思っていると。
　なんと彼は再び私に近づいて来たのだ。

　あっあっ、えっっっ。まだ、どうしたら良いか分かってない！

　いや今度は。
　今度は私も寄って行くんだ！！

　ともかく歩き始めてみる。歩いて、歩いて、歩いて、そして。

　ドラゴンの横を通過してしまった………。

　“とび出すな　車は急に　止まれない”

　………そういうことである。

　いやー、やっぱり詩歌は古典的なものより交通標語のほうがぐっと来るわー。

　じゃなくて。

　ああああ。ちょっともう、どうするのこれ。もういい加減フォローできないよ！？

　つ、通常モード。今すぐ私を通常モードに戻さなきゃ。通常モードのスイッチはどこ行ったーー！！

　パニくった私はその勢いで逃げ去った。

　すると。こう、後ろからずっと。気配というか。ドラゴン圧が付いてきたのだった。