悪役令嬢は修道院を目指しますーなのに、過剰な溺愛が止まりません

4章 波乱の中の協力

①

修道院に来てから数週間が過ぎた頃、私の平穏な生活は再びざわめきに包まれ始めていた。エリーナとの親交は深まる一方だったが、それが外部にどのような波紋を広げているのかを、私はまだ十分に理解していなかった。

その日、修道院の門に一台の馬車が停まり、見覚えのある使用人が降り立った。私の家からの使者だ。

「お嬢様、奥様からお手紙をお届けに参りました。」

手渡された封筒には、母の名前が記されている。静かに封を切ると、母のきれいな筆跡が目に飛び込んできた。

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リリアナへ

あなたが修道院で過ごすと聞いて、少し安堵していました。しかし、最近になって社交界であなたに関する妙な噂が広がり始めています。
平穏を望むならば、こうした噂の火種を消す努力をしなさい。それができないのなら、すぐに実家に戻りなさい。
あなたが何を考えているのか、話し合う必要があります。

母より

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私は手紙を畳み、ため息をついた。噂が広まる――そうしたことはある程度覚悟していたが、修道院という場所にまでそれが届くとは予想していなかった。

「何か、問題が……？」

隣で私の様子を伺っていたエリーナが、心配そうに尋ねる。私は手紙をそっと机に置き、彼女に微笑みかけた。

「少しだけ厄介なことが起こっているようですわ。でも、大丈夫よ。」

「本当に……？」

「ええ。」

彼女にはこれ以上心配をかけたくなかった。しかし、私の中で小さな疑念が生まれていた。この修道院に来てから続いている妙な出来事と、外部の噂が繋がっているのではないかという考えだ。

その時だった。修道院の修道女が慌てた様子で部屋に駆け込んできた。

「リリアナ様、大変です！また妙な手紙が届きました！」

「妙な手紙……？」

私は修道女の手から封筒を受け取り、中身を確認した。そこには不気味な言葉が簡潔に書かれていた。

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貴女の行動は、再び波紋を呼び起こしています。平穏を望むならば、これ以上真実を追求しないことです。過去に触れれば、貴女に再び災厄が訪れるでしょう。

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冷たい恐怖が胸を締め付ける。この手紙を書いた者が誰なのか、すぐに特定することはできない。しかし、これが私の過去――処刑の原因となった陰謀に繋がるものであることは間違いなかった。

「リリアナ様……その手紙、一体……？」

エリーナが心配そうに覗き込んでくる。私は彼女を落ち着かせるように頷きながら、言葉を絞り出した。

「わたくしの過去に関わる何かが、動き出しているようです。」

「過去に……？」

「ええ。おそらく、この手紙の送り主は、わたくしが巻き込まれた陰謀について知っているのでしょう。」

「それって……危ないのでは？」

「危険でしょうね。でも、このまま放置するわけにはいきません。」

エリーナは困惑した顔をしていたが、やがて真剣な表情になり、力強く頷いた。

「私もお手伝いします！」

「エリーナ……」

「リリアナ様を一人で危険な目に遭わせるなんてできません！私にもできることがあれば、何でも言ってください！」

その言葉に、私は思わず微笑みを浮かべた。彼女の純粋さと強い意志が、私に少しだけ安心感を与えてくれた。

「ありがとう、エリーナ。」

私たちは、修道院に渦巻く波乱を収めるために動き出す決意を固めた。しかし、その時点ではまだ、この波乱がどれほど深い陰謀に繋がっているのかを知る由もなかった。