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2章 不審な動き
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玲音は執務室に戻ると、すぐに浅川たちに指示を出した。
「黒崎の証言を基に、整備区域の監視記録を確認します。坂木の件も含めて、過去1カ月分の映像を徹底的に洗い直してください。」
浅川は頷きながら端末を操作し始めた。
「了解しました。映像データはすぐにアクセスできます。ただ、量が膨大です。山村と松岡にも手伝わせます。」
「お願いします。私は綾隊長に進捗を報告してきます。」
玲音が席を立つと、涼子が静かに声をかけた。
「早瀬さん、少し休む時間も作ったほうがいいですよ。」
その優しい言葉に玲音は短く微笑んだ。
「ありがとうございます。でも、今は時間が惜しいので。」
涼子は玲音の返事に納得したように頷き、引き続き部下たちの様子を見守る。
玲音は執務室を出て綾のもとへ向かった。途中、ふと父の言葉を思い出した。
「規律の乱れは命を失うきっかけになる。だから規律を守る者は、最前線にいるんだ。」
自分の任務がそれに通じるものであると、玲音は改めて感じていた。
綾の執務室では、彼が端末を操作しながら何かを調べていた。
「隊長、監視記録の確認作業が始まりました。進捗が出るまで少し時間がかかります。」
玲音が報告すると、綾は端末から顔を上げた。
「わかった。進捗が出たらすぐに知らせろ。俺の方でも通信ログの解析を進めているが、やはり発信者は基地内部からに間違いない。」
「黒崎の証言は信憑性が高いと思われますか?」
「まだ断定はできないが、矛盾は少ない。だが、脅迫が事実なら、実行犯は他にいる。黒崎は駒に過ぎない可能性が高い。」
「了解しました。」
玲音は短く答え、深く敬礼した。
「任務に戻ります。」
綾は玲音をじっと見つめ、静かに言葉を続けた。
「お前の判断を信じている。任務を全うしろ。」
玲音はその言葉に背中を押されるような思いで執務室を後にした。
数時間後、浅川から連絡が入った。
「副官、怪しい動きが映像に映っていました。」
玲音はすぐに浅川たちのいるデータルームへ向かった。部屋の中には山村と松岡もおり、それぞれ端末を操作している。
「これです。」
浅川がスクリーンに映像を表示した。
そこには、整備区域の一角で物資のコンテナを操作している人物が映っていた。帽子を深くかぶり、顔がカメラに映らないようにしているが、何かを素早く隠している様子が見て取れる。
「黒崎の証言どおりですね。彼がこの人物と接触した可能性があります。」
玲音は映像をじっと見つめた。
「この人物の動き、他に映っている時間帯を特定してください。」
「了解です!」
松岡が答え、さらに映像を検索し始めた。
その時、山村が別の端末を操作しながら声を上げた。
「副官! この人物、作業用のIDタグをスキャンしている場面がありました! データが残っていれば、誰か特定できるかもしれません!」
「すぐに確認してください。」
玲音は鋭い声で指示を出した。
山村は端末を操作し、数分後に結果を出した。
「IDタグのデータを解析しました。この人物の名前は……斉藤孝志(さいとう・たかし)です。」
玲音はその名前を聞いて記録を確認する。
「斉藤孝志……整備区域に所属する技術士官ですね。これまで問題の記録はありませんが……。」
浅川が疑念を込めて言葉を挟む。
「問題がないというのも、逆に怪しいですね。これだけの動きをしていながら、痕跡を残していないのは不自然です。」
玲音は静かに頷いた。
「斉藤孝志を特定し、今すぐ拘束する必要があります。」
「黒崎の証言を基に、整備区域の監視記録を確認します。坂木の件も含めて、過去1カ月分の映像を徹底的に洗い直してください。」
浅川は頷きながら端末を操作し始めた。
「了解しました。映像データはすぐにアクセスできます。ただ、量が膨大です。山村と松岡にも手伝わせます。」
「お願いします。私は綾隊長に進捗を報告してきます。」
玲音が席を立つと、涼子が静かに声をかけた。
「早瀬さん、少し休む時間も作ったほうがいいですよ。」
その優しい言葉に玲音は短く微笑んだ。
「ありがとうございます。でも、今は時間が惜しいので。」
涼子は玲音の返事に納得したように頷き、引き続き部下たちの様子を見守る。
玲音は執務室を出て綾のもとへ向かった。途中、ふと父の言葉を思い出した。
「規律の乱れは命を失うきっかけになる。だから規律を守る者は、最前線にいるんだ。」
自分の任務がそれに通じるものであると、玲音は改めて感じていた。
綾の執務室では、彼が端末を操作しながら何かを調べていた。
「隊長、監視記録の確認作業が始まりました。進捗が出るまで少し時間がかかります。」
玲音が報告すると、綾は端末から顔を上げた。
「わかった。進捗が出たらすぐに知らせろ。俺の方でも通信ログの解析を進めているが、やはり発信者は基地内部からに間違いない。」
「黒崎の証言は信憑性が高いと思われますか?」
「まだ断定はできないが、矛盾は少ない。だが、脅迫が事実なら、実行犯は他にいる。黒崎は駒に過ぎない可能性が高い。」
「了解しました。」
玲音は短く答え、深く敬礼した。
「任務に戻ります。」
綾は玲音をじっと見つめ、静かに言葉を続けた。
「お前の判断を信じている。任務を全うしろ。」
玲音はその言葉に背中を押されるような思いで執務室を後にした。
数時間後、浅川から連絡が入った。
「副官、怪しい動きが映像に映っていました。」
玲音はすぐに浅川たちのいるデータルームへ向かった。部屋の中には山村と松岡もおり、それぞれ端末を操作している。
「これです。」
浅川がスクリーンに映像を表示した。
そこには、整備区域の一角で物資のコンテナを操作している人物が映っていた。帽子を深くかぶり、顔がカメラに映らないようにしているが、何かを素早く隠している様子が見て取れる。
「黒崎の証言どおりですね。彼がこの人物と接触した可能性があります。」
玲音は映像をじっと見つめた。
「この人物の動き、他に映っている時間帯を特定してください。」
「了解です!」
松岡が答え、さらに映像を検索し始めた。
その時、山村が別の端末を操作しながら声を上げた。
「副官! この人物、作業用のIDタグをスキャンしている場面がありました! データが残っていれば、誰か特定できるかもしれません!」
「すぐに確認してください。」
玲音は鋭い声で指示を出した。
山村は端末を操作し、数分後に結果を出した。
「IDタグのデータを解析しました。この人物の名前は……斉藤孝志(さいとう・たかし)です。」
玲音はその名前を聞いて記録を確認する。
「斉藤孝志……整備区域に所属する技術士官ですね。これまで問題の記録はありませんが……。」
浅川が疑念を込めて言葉を挟む。
「問題がないというのも、逆に怪しいですね。これだけの動きをしていながら、痕跡を残していないのは不自然です。」
玲音は静かに頷いた。
「斉藤孝志を特定し、今すぐ拘束する必要があります。」
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