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2章 不審な動き
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緊急会議が終わり、綾は憲兵隊の指揮官として捜査の全体像を整理していた。
彼は隊員たちを前に、冷静かつ的確な指示を出す。
「坂木信吾の証言と補給機01の貨物室で発見された機材、これらから基地内部に内通者がいる可能性が濃厚になった。」
スクリーンが切り替わり、補給機01の貨物室で発見された部品の写真が映し出された。
「これらの部品は敵の無人機に使用されているものと一致する。そして、それを補給機に持ち込んだ坂木信吾の証言から、この指示が基地内部から発信されていたことが判明した。」
ざわめきが広がったが、綾はそれを制し、冷静に続けた。
「現在、この件に関与した人物が基地内部に潜んでいると考えられる。これが敵との内通者である可能性を排除できない。」
綾の言葉に、部屋全体が緊張感に包まれた。玲音もその一人だった。綾の背中を見つめながら、自分の役割を再確認する。副官として、彼を補佐しながら任務を遂行する――それが玲音の使命だった。
会議が解散すると、綾は玲音を含む憲兵隊の主要メンバーを別室に呼び出した。浅川、山村、松岡、そして医療カウンセラーの涼子も揃っている。
綾は全員を見渡しながら言った。
「捜査の主軸は通信ログの追跡だ。坂木の証言を基に、匿名通信を送った可能性のある整備士、黒崎を特定した。」
彼は端末を操作し、黒崎の勤務記録や通信履歴をスクリーンに映し出す。
「黒崎は過去数カ月間、補給機01を中心に配属されている。そして、彼の端末から匿名通信の痕跡が見つかった。」
浅川が手を挙げて質問する。
「黒崎を直接尋問すべきかと存じますが、いつ行いますか?」
「それには慎重を期す。」
綾は静かに答えた。
「彼が仲間と連携している可能性を考慮し、捜査を拡大する必要がある。」
玲音が一歩前に出て提案した。
「坂木への匿名通信に使用された端末の詳細をさらに追跡し、黒崎以外に関与者がいないか調べるべきかと思います。」
綾はその提案に頷いた。
「その通りだ。早瀬、お前がその追跡を指揮しろ。必要なサポートは俺が直接指示する。」
「了解しました。」
玲音は敬礼し、端末を手にして作業を始めた。
その日の夕方、綾と玲音は黒崎の行動を監視するため、整備区域の記録を確認した。黒崎は補給機01の整備チームに所属しながらも、勤務中の移動が不規則であることが明らかになった。
「ここです。」
玲音がスクリーンを指差した。
「この時間帯、黒崎は本来の作業区域を離れて別の倉庫に移動しています。そこで何をしていたか調べる必要があります。」
「倉庫か。」
綾は考え込むように端末を見つめた。
「山村と松岡を連れて、現場を確認してこい。」
「了解しました。」
玲音は部下二人を連れ、倉庫の捜査に向かった。
倉庫は補給機の整備区域から少し離れた場所にあり、普段は使用頻度の低い物資が保管されている。鍵を解除して中に入ると、薄暗い空間に規則的に並べられたコンテナが見えた。
「ここですかね……。」
松岡が懐中電灯を照らしながら呟いた。
山村がコンテナの一つを開け、中身を確認する。
「副官、これ……!」
玲音が近づいて覗き込むと、中には小型の通信装置と何らかの暗号化デバイスが隠されていた。さらに、敵軍の無人機に似た部品も含まれている。
「やはり、ここで何かが行われていた……。」
玲音は通信装置のシリアルナンバーを確認し、端末に記録を取った。
玲音たちが発見した情報を持ち帰ると、綾はすぐに解析チームにデータを渡した。彼は玲音に目を向け、静かに言った。
「今回の成果は大きい。だが、黒崎への尋問はさらに慎重を期す必要がある。奴が全てを知っているとは限らん。」
玲音は深く頷いた。
「引き続き、通信記録の追跡と倉庫で発見した物資の詳細確認を進めます。」
「頼む。」
綾は短く返事をし、再びデータに目を通した。
彼は隊員たちを前に、冷静かつ的確な指示を出す。
「坂木信吾の証言と補給機01の貨物室で発見された機材、これらから基地内部に内通者がいる可能性が濃厚になった。」
スクリーンが切り替わり、補給機01の貨物室で発見された部品の写真が映し出された。
「これらの部品は敵の無人機に使用されているものと一致する。そして、それを補給機に持ち込んだ坂木信吾の証言から、この指示が基地内部から発信されていたことが判明した。」
ざわめきが広がったが、綾はそれを制し、冷静に続けた。
「現在、この件に関与した人物が基地内部に潜んでいると考えられる。これが敵との内通者である可能性を排除できない。」
綾の言葉に、部屋全体が緊張感に包まれた。玲音もその一人だった。綾の背中を見つめながら、自分の役割を再確認する。副官として、彼を補佐しながら任務を遂行する――それが玲音の使命だった。
会議が解散すると、綾は玲音を含む憲兵隊の主要メンバーを別室に呼び出した。浅川、山村、松岡、そして医療カウンセラーの涼子も揃っている。
綾は全員を見渡しながら言った。
「捜査の主軸は通信ログの追跡だ。坂木の証言を基に、匿名通信を送った可能性のある整備士、黒崎を特定した。」
彼は端末を操作し、黒崎の勤務記録や通信履歴をスクリーンに映し出す。
「黒崎は過去数カ月間、補給機01を中心に配属されている。そして、彼の端末から匿名通信の痕跡が見つかった。」
浅川が手を挙げて質問する。
「黒崎を直接尋問すべきかと存じますが、いつ行いますか?」
「それには慎重を期す。」
綾は静かに答えた。
「彼が仲間と連携している可能性を考慮し、捜査を拡大する必要がある。」
玲音が一歩前に出て提案した。
「坂木への匿名通信に使用された端末の詳細をさらに追跡し、黒崎以外に関与者がいないか調べるべきかと思います。」
綾はその提案に頷いた。
「その通りだ。早瀬、お前がその追跡を指揮しろ。必要なサポートは俺が直接指示する。」
「了解しました。」
玲音は敬礼し、端末を手にして作業を始めた。
その日の夕方、綾と玲音は黒崎の行動を監視するため、整備区域の記録を確認した。黒崎は補給機01の整備チームに所属しながらも、勤務中の移動が不規則であることが明らかになった。
「ここです。」
玲音がスクリーンを指差した。
「この時間帯、黒崎は本来の作業区域を離れて別の倉庫に移動しています。そこで何をしていたか調べる必要があります。」
「倉庫か。」
綾は考え込むように端末を見つめた。
「山村と松岡を連れて、現場を確認してこい。」
「了解しました。」
玲音は部下二人を連れ、倉庫の捜査に向かった。
倉庫は補給機の整備区域から少し離れた場所にあり、普段は使用頻度の低い物資が保管されている。鍵を解除して中に入ると、薄暗い空間に規則的に並べられたコンテナが見えた。
「ここですかね……。」
松岡が懐中電灯を照らしながら呟いた。
山村がコンテナの一つを開け、中身を確認する。
「副官、これ……!」
玲音が近づいて覗き込むと、中には小型の通信装置と何らかの暗号化デバイスが隠されていた。さらに、敵軍の無人機に似た部品も含まれている。
「やはり、ここで何かが行われていた……。」
玲音は通信装置のシリアルナンバーを確認し、端末に記録を取った。
玲音たちが発見した情報を持ち帰ると、綾はすぐに解析チームにデータを渡した。彼は玲音に目を向け、静かに言った。
「今回の成果は大きい。だが、黒崎への尋問はさらに慎重を期す必要がある。奴が全てを知っているとは限らん。」
玲音は深く頷いた。
「引き続き、通信記録の追跡と倉庫で発見した物資の詳細確認を進めます。」
「頼む。」
綾は短く返事をし、再びデータに目を通した。
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