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幼女と邪神とユキ

幼女と邪神とユキと食後のおやつ

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「腹が減ったのじゃ」
「バーベキューの片付け中に発する言葉じゃないだろ、それ」

 ユキを含めた全員でバーベキューをして大量に肉を食っていたクレバスが言った。
 シロとミドリとユキは木陰で仲良く寝ているので俺とクレバスで片付けをしているところだ。
 
「こう……なんかあるじゃろ? 飯を食うて少しもしていないのに腹が減るときが……」
「確かに分からなくはないが……」
「じゃろう!? 何かをガッツリと食うほどではないのじゃが口に何かものを入れたいという感覚なのじゃ」
「そうか」

 聞き流して片付けを進めているとクレバスが唐突に地面に寝転がった。
 そして、そのまま駄々を捏ねる子供のように両手両足を大きく動かして声を発した。
 
「妾はおやつを所望するのじゃーー!」
「……そうか」

 地面を転がり続けるクレバスを無視し片付けを終わらせる。
 片付けが終わった途端、軟体動物のように足に絡まってきた。
 
「のう、のう!? 所望すると言ったじゃろ!?」
「そうだな、そんな事よりお前が今どのようにしてその格好になっているのかが気になって仕方ない」
「骨に魔力を流して柔らかくするとできるんじゃぞ。ほれ! 教えたじゃろ!? 褒美を寄越すのじゃ!」
「今日に限って圧が強いな、ほれ」

 絡みついていたクレバスに失敗作のクッキーを見せて遠くに投げる。
 クッキーを追いかけていったクレバス。
 
 言った通りに骨に魔力を流して……。
 流すのは水の魔力か。
 真っ直ぐだった腕が真下に垂れた。
 
「うわっ」

 予想外の動きで思わず声が出た。
 想像以上に気持ち悪いぞ。
 
 急に何故、クレバスがこれをやり始めたのか疑問が尽きないところだが……原理がわかったので良しとしよう。
 
「のう……甘い香りがするのに苦いんじゃが……」
「失敗作だからな」
「そうじゃったが! 確かにクッキーに失敗作って書いたあったんじゃが!」

 砂糖を作りたくて色々と試行錯誤をしていたときに作ったクッキーだ。
 甘い香りはするのに味は苦いというよくわからない調味料になってしまったため、分かりやすく薬草を擦ったもので『失敗作』と書いておいた。
 
 この手の失敗作は捨てるのも勿体なく、全部保管してあるため沢山ある。
 文字を消してロシアンクッキーとかしても面白いかもな。
 
「……のぅ」
「わかったよ、ほれ。ちゃんとしたクッキーだ」

 目を潤ませて今にも泣きそうな顔でクレバスがこちらを見てきたため、ちゃんと甘いクッキーを渡した。
 時々、俺の飲み物をクソ苦いお茶にするからそれの仕返しだ。
 
「うゅ……? あー! ずるい!」
「……にゃに」

 おやつの気配を感じ取ったのかシロが起き上がってクッキーを頬張っているクレバスを指さして叫んだ。
 寝たりなさそうなミドリは目を擦りながらトボトボとこっちに歩いてきた。
 
 シロはとっくに走ってクレバスのクッキーを奪おうとしている。
 ユキは何が起きてるか分かっていないようだ。
 
「おやつにするか……」

 人数分のクッキーを取り出して渡していく。
 シロはすぐに食べ始め、ミドリは船を漕ぎながら少しずつ食べていた。
 
 ……無理して食べなくていいんだぞ?
 
「ん、ありがとう。っ……! おいひい」
「口にあって何よりだ」

 木の実を齧るリスのようにサクサクと食べるユキ。
 ミドリは眠気が限界のようで食べるのが止まってる。
 
「ミドリ、寝るか?」
「……たべなきゃ……くわれる……」
「シロに取られないように預かっておくぞ?」
「……じゃ……ねる」

 クッキーの袋を俺に渡して一瞬でミドリは眠った。
 ミドリを抱きかかえて先に家に戻る。
 
 ベッドに寝かせて布団を掛ける。
 
 一応、魔法で綺麗にしておこう。
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