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幼女と邪神
幼女と邪神と遠足
しおりを挟む「主? 妾が?」
『そうです』
クレバスが惚けた顔をする。
絶対覚えて無いな、こいつ。
「待つのじゃ。今思い出す」
うーん……と唸り始めた。
思い出すって事は普通に忘れているな?
抱っこしているシロを降ろしてクレバスの妨害をしてくるように言っておこう。
「行け、シロ」
「いえっさー!」
座って考えてるクレバスの元へシロが駆けていく。
とうっ と掛け声と共にクレバスに向けてシロがダイブした。
「ふむ……」
「だめっ、ねーね! くすぐっちゃ……やっ!」
綺麗にキャッチされそのまま脇をクレバスの両手によって蹂躙されている。
身をひねって逃げようとするシロだがクレバスがガッチリと掴んでいるため逃げることは叶わない。
……シロよ、無事に成仏してくれ。
「くれねえ……ようしゃない……」
ミドリが戦慄した様子で言った。
こひゅー、こひゅー と息を荒げてぐったりでしている。
過呼吸になっていないか心配して目に魔力を込めてシロの魔力の流れを確認する。
……うん。問題ないな
魔力とは結構繊細で少しでも体に異変があると流れが乱れたり、その異変がある場所に集中したりする。
正常に魔力が流れていたのでシロは放置して大丈夫だろう。
「思い出したのじゃ! ピー太じゃな!?」
『そうです』
人のこと言えないがもう少しまともな名前はなかったのか?
「妾がこの世界にお主を放った時はまだ雛じゃったような気もしなくもないんじゃが……」
『2万年も時間があれば成長します』
「そうかそうか!」
なるほど。
この鳥はクレバスが雛の状態で創り出してこの世界に放逐したわけか。
それでこんなに大きくなった……と。
随分と成長してんなぁ……。
『よもや我が主がこの人間……ん? ついに人間を辞めたのか。人の子よ』
「うるせぇ。ボケが始まってるお前の主に聞け」
無駄に羽を広げやがって……毟るぞ?
……と言ってもこいつの素材は余るほど倉庫にあるから正直な話もういらない。
「確か……不死鳥じゃったか? お主は」
『すぐには復活できませんが不死鳥です』
「ああ、だからぶっ殺しても1年で復活するのか」
不思議な鳥だとは思っていたけど不死鳥だったか。
「ふしちょう……?」
「そうだ。死なない鳥でな? ももの部分を串にして焼いて食べると結構美味しい」
「おにくっ!?」
食べ物の話に釣られてシロが復活した。相変わらずの食い意地だ。
どの部位を食おうか睨んでいたら不死鳥が震え始めた。
『あの……すいません‥‥…もう殺すのだけは勘弁してください……』
「そんな取って食ったりは……するか。大丈夫だ。今は狩らない」
ここ4000年くらいはリスキルしまくってたからな。
今年ぐらいは見逃してやろう。
「遠足じゃ言うておったがここで何するんじゃ?」
「弁当食べて帰る」
「おなかすいた!」
1時間ぐらい前に朝飯食わなかったか?
仕方ないので亜空間からレジャーシートを敷いてその上に弁当を乗せる。
靴を脱いで座り、ミドリを膝の上に移行させよう。
風魔法で浮かせようとしているのだが俺の髪を引っ張って抵抗している。
「無駄な抵抗はするんじゃない」
「ふわふわ……とんでる……」
俺の言葉を聞いていないかのように無視をしたのでお仕置きだ。
ハングライダーみたいな感じで浮いているミドリの脇を両手で抑える。
そのまま指を動かしくすぐりを開始する。
「んんっっ……? おにいちゃ……だめっ……!」
髪から手が離れたのでそのまま膝の上に乗せる。
俺の勝ちだな。
恍惚とした表情でミドリがぐったりしているが気にしないでおこう。
シロがさっきから弁当の蓋を掴んで涎を隠しきれてない表情でこっちをチラチラ見ている。
「開けていいぞ」
「わーい!」
弁当を開けると中には色とりどりの料理が入っていた。
あまり作り込んでないので簡単なものしか詰め込んでない。
食べていい? 食べていい? と顔にうるさく書かれているシロにお手拭きを渡してフォークを渡す。
これでもかっ、と頬に物を詰め込むシロを背景に不死鳥とクレバスが戯れているのを眺めていた。
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