上 下
13 / 57
ぼっちと幼女

幼女と買い物②

しおりを挟む


 脇に抱えてたシロとミドリを椅子に座らせていると奥から受付嬢が戻ってきた。
 隣にヒゲを蓄えた歴戦の猛者のような風貌をした男性を連れている。

「自分じゃ対応できないとメル君に言われて来てみたら若造じゃないか」
「人を見かけで判断すると後悔するぞ、おっさん」

 多分、おっさんの500倍は生きてるからな?

 椅子に座らせたシロとミドリがいつの間にか俺の膝の上に座っている。
 いつ移動したんだ?

「ご忠告感謝しよう。さて、この素材だが何処で手に入れた?」
「何処って……普通に倒しただけだが?」
「くまさんおいしかった!」

 ふむ……と小さく唸り考え込んでいるようだ。
 そして口を開いた。

「もし、それが本当なら国に報告しないといけない」
「理由を聞かせてもらおう」
「この爪が本物なら国が滅びる危険性があるからだ」

 ごめん、理解が追いつかない。
 あの熊ごときで国が滅びるとか大げさすぎるだろ。

「聞いた特徴に関しては『カイザーグリズリー』そのものだ。しかも大人のな」

 あの熊そんなに仰々しい名前だったのか。
 少しかっこいいじゃないか。

「昔その子供が前線都市の生活圏に侵入した時があった。その時でさえ、この前線都市は半壊。ここにいる人間も2割は死んだ」
「それで倒せたのか?」
「もう200年も前の話だがな。勇者様が駆けつけてくれたよ。それがなければここは滅んでた」

 やはりまだ勇者の存在はあるのか。

「子供でもそのレベルだ。大人の『カイザーグリズリー』の爪だと? 冗談じゃない。アレは人間の手に負えるものじゃない」
「くまさんつよかった……?」
「そうみたいだ」
「ほへー!」

 あの熊がそこまで強かったらあれ以上に強いのが来たら世界滅亡だな。
 別に俺には関係ないが。

「それを若造が狩れるとでも? 冗談も大概にして欲しいものだ。大方落ちていたのを拾っただけだろう」
「ガイトのおっさん、それマジで言ってんのか?」

 なんか増えたぞ。
 背中ぐらいまである赤い髪のボインの姉ちゃんだ。強そう。
 ビキニアーマーで床に着きそうな長さの大剣を背負っている。
 随分と太い大剣だな……俺の腰幅ぐらいあるぞ……?


 何か言い争いが始まりそうな雰囲気なのでシロとミドリの頰を突いて遊んでいよう。

「何をだ? 『紅蓮』」
「コイツから何も感じないってことだ」
「ここで冗談を言う必要もなかろう」
「だとしたら耄碌したな、引退してギルドマスターになって正解だ」

 言い争いをしている2人の間に火花が散る。
 頬を突いてるシロとミドリがにへぇーと笑い、仕返しと言わんばかりに俺の頬を掴んでくる。
 倍返しかコヤツら。

「この若造が爪を拾って来たなら元の大人がまだ近辺にいるはすだ。国に報告しなければならない」
「耄碌したジジイには倒したって線は浮かばないんだな、私にはコイツの強さがヤバイほど伝わってくるぞ」

 強さの認識って一定ラインを超えると感じなくなるんだよな。
 と、なるとこの姉ちゃんはおっさんより強いってことか……?
 だとしたら人間の中でも強い部類……だと思う。

「おい、少年」
「ん? 俺か?」
「そうだ。この爪、何処で手に入れた?」
「森の中だ」

 間違ってはない。
 ってかあの森アホみたいに広いんだな。

 半径2000kmってやばいだろ。

「少年、家は何処にある?」
「もりのなか!」
「ん? お嬢ちゃんが答えてくれるのか。どっちの方向の森だい?」
「あっち!」

 シロが来た方向の森を指差す。
 方向がわかるのか、偉いぞ。

 答えたお礼にシロを撫で回す。

「えへへー」

 ミドリが羨ましそうな顔で見てるのでついでに撫でておこう。

「『魔の森』の住人か…」
「バカな!あそこに人族は住めないはずだ!」
「でもこの尋常じゃない魔力の濃度を見るとそれしか考えられない」

 ん? 少し魔力が漏れてるか?
 量が多すぎて完全に抑え込むのはキツイんだよな。
 意図的に抑え込んでみるとするか。

「にーに……なんかくるしい」
「ぼくも……」

 なんだと……?
 この街に入ってから索敵は怠ってないし、2人には魔法反射と物理無効の魔法をかけている。
 何かしらの攻撃ではないな。

 まさか……魔力欠乏か?
 森と比べたら空気中の魔力濃度が非常に薄い。
 俺の近くに居たからシロとミドリは魔力欠乏にならずに済んでいたのか?

 魔力なら余っているから2人を纏うように魔力で包んでみるか。

「らくになった! にーにのにおい!」
「いいにおい……」
「やっぱりそうか、良かった」

 ふと周りを見ると俺を囲むように武器を持っている。
 はて、何かしただろうか?

「少年……その魔力は何だ……?」
「あ? ここの魔力が薄くて2人が苦しいって言ったから応急処置だ。何か問題があったのか?」
「敵意は?」
「ない。素材の買い取りはまだか?」

 そう、ここに来てから1時間位経つが素材の買い取りが終わらないのだ。
 そこが1番の問題だと思う。

「あっはっは!これだけの殺意を向けられて眉ひとつ動かさないか!想定以上の強さだ!」
「死の危険を感じない殺意なんて警戒するだけ無駄だろ」
「若造がそうでもその2人はどうだろうか?」

 その瞬間、臨戦態勢に入る。
 滲み出る魔力によって髪が逆立つ。

「今なんて言った?」

 おっさんが口をパクパクとさせている。
 この程度の殺気で声も出なくなるのか、雑魚め。

「こちらの非礼は詫びよう。どうかその魔力と殺気を収めてくれないだろうか」
「この2人に手を出したらこの街を消す。覚えておけ」

 そう言って臨戦態勢を解く。
 シロとミドリは未だに俺の頬を突いてる。そんなに楽しいのか?

「残念だがジジイが気絶してしまったから素材の買い取りはできない」
「は?」
「ギルドでは…ってことだ。私が個人的に買うぶんには問題ない」

 なるほど、そう言うことか。
 正直な話、金になればどうでもいい。

「白金貨10枚でどうだ?」
「物価を知らん」
「一般的な家庭なら10年は遊んで暮らせる」
「売った」

 よしっ! 金だ!
 相場を知らないので買い叩かれても別にいい。

「じゃあ爪はもらってくね」
「ん? 全部で白金貨10じゃないのか?」
「はっ?」

 口を開けてこちらを見る。
 なるほど、開いた口が塞がらないというのはこう言うことか。

「この素材って…もしかして全部『魔の森』の魔物のか?」
「そうだ。その羽はクソみたいに規模のでかい魔法を使う鳥の羽だ」
「『死鳳凰』…!?」

 そう呟いて気絶してしまった。
 ここの人間はよく気絶するな。

 まあいいや。
 金はもらったので街に繰り出すとしよう。

「おかいもの…?」
「ああ、やっとだ」
「おなかへった!」

 まずは腹ごしらえからだな。
 美味しそうな匂いのする店に入ろう。



しおりを挟む
感想 21

あなたにおすすめの小説

「残念でした~。レベル1だしチートスキルなんてありませ~ん笑」と女神に言われ異世界転生させられましたが、転移先がレベルアップの実の宝庫でした

御浦祥太
ファンタジー
どこにでもいる高校生、朝比奈結人《あさひなゆいと》は修学旅行で京都を訪れた際に、突然清水寺から落下してしまう。不思議な空間にワープした結人は女神を名乗る女性に会い、自分がこれから異世界転生することを告げられる。 異世界と聞いて結人は、何かチートのような特別なスキルがもらえるのか女神に尋ねるが、返ってきたのは「残念でした~~。レベル1だしチートスキルなんてありませ~~ん(笑)」という強烈な言葉だった。 女神の言葉に落胆しつつも異世界に転生させられる結人。 ――しかし、彼は知らなかった。 転移先がまさかの禁断のレベルアップの実の群生地であり、その実を食べることで自身のレベルが世界最高となることを――

生活魔法しか使えない少年、浄化(クリーン)を極めて無双します(仮)(習作3)

田中寿郎
ファンタジー
壁しか見えない街(城郭都市)の中は嫌いだ。孤児院でイジメに遭い、無実の罪を着せられた幼い少年は、街を抜け出し、一人森の中で生きる事を選んだ。武器は生活魔法の浄化(クリーン)と乾燥(ドライ)。浄化と乾燥だけでも極めれば結構役に立ちますよ? コメントはたまに気まぐれに返す事がありますが、全レスは致しません。悪しからずご了承願います。 (あと、敬語が使えない呪いに掛かっているので言葉遣いに粗いところがあってもご容赦をw) 台本風(セリフの前に名前が入る)です、これに関しては助言は無用です、そういうスタイルだと思ってあきらめてください。 読みにくい、面白くないという方は、フォローを外してそっ閉じをお願いします。 (カクヨムにも投稿しております)

休憩スキルで異世界無双!チートを得た俺は異世界で無双し、王女と魔女を嫁にする。

ゆう
ファンタジー
剣と魔法の異世界に転生したクリス・レガード。 剣聖を輩出したことのあるレガード家において剣術スキルは必要不可欠だが12歳の儀式で手に入れたスキルは【休憩】だった。 しかしこのスキル、想像していた以上にチートだ。 休憩を使う事でスキルを強化、更に新スキルを獲得できてしまう… そして強敵と相対する中、クリスは伝説のスキルである覇王を取得する。 ルミナス初代国王が有したスキルである覇王。 その覇王発現は王国の長い歴史の中で悲願だった… それ以降、クリスを取り巻く環境は目まぐるしく変化していく… ※小説家になろう、カクヨムでも掲載しております。

『付与』して『リセット』!ハズレスキルを駆使し、理不尽な世界で成り上がる!

びーぜろ@転移世界のアウトサイダー発売中
ファンタジー
ハズレスキルも組み合わせ次第!?付与とリセットで成り上がる! 孤児として教会に引き取られたサクシュ村の青年・ノアは10歳と15歳を迎える年に2つのスキルを授かった。 授かったスキルの名は『リセット』と『付与』。 どちらもハズレスキルな上、その日の内にステータスを奪われてしまう。 途方に暮れるノア……しかし、二つのハズレスキルには桁外れの可能性が眠っていた! ハズレスキルを授かった青年・ノアの成り上がりスローライフファンタジー! ここに開幕! ※本作はフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。

バイトで冒険者始めたら最強だったっていう話

紅赤
ファンタジー
ここは、地球とはまた別の世界―― 田舎町の実家で働きもせずニートをしていたタロー。 暢気に暮らしていたタローであったが、ある日両親から家を追い出されてしまう。 仕方なく。本当に仕方なく、当てもなく歩を進めて辿り着いたのは冒険者の集う街<タイタン> 「冒険者って何の仕事だ?」とよくわからないまま、彼はバイトで冒険者を始めることに。 最初は田舎者だと他の冒険者にバカにされるが、気にせずテキトーに依頼を受けるタロー。 しかし、その依頼は難度Aの高ランククエストであることが判明。 ギルドマスターのドラムスは急いで救出チームを編成し、タローを助けに向かおうと―― ――する前に、タローは何事もなく帰ってくるのであった。 しかもその姿は、 血まみれ。 右手には討伐したモンスターの首。 左手にはモンスターのドロップアイテム。 そしてスルメをかじりながら、背中にお爺さんを担いでいた。 「いや、情報量多すぎだろぉがあ゛ぁ!!」 ドラムスの叫びが響く中で、タローの意外な才能が発揮された瞬間だった。 タローの冒険者としての摩訶不思議な人生はこうして幕を開けたのである。 ――これは、バイトで冒険者を始めたら最強だった。という話――

加護とスキルでチートな異世界生活

どど
ファンタジー
高校1年生の新崎 玲緒(にいざき れお)が学校からの帰宅中にトラックに跳ねられる!? 目を覚ますと真っ白い世界にいた! そこにやってきた神様に転生か消滅するかの2択に迫られ転生する! そんな玲緒のチートな異世界生活が始まる 初めての作品なので誤字脱字、ストーリーぐだぐだが多々あると思いますが気に入って頂けると幸いです ノベルバ様にも公開しております。 ※キャラの名前や街の名前は基本的に私が思いついたやつなので特に意味はありません

異世界転生!俺はここで生きていく

おとなのふりかけ紅鮭
ファンタジー
俺の名前は長瀬達也。特に特徴のない、その辺の高校生男子だ。 同じクラスの女の子に恋をしているが、告白も出来ずにいるチキン野郎である。 今日も部活の朝練に向かう為朝も早くに家を出た。 だけど、俺は朝練に向かう途中で事故にあってしまう。 意識を失った後、目覚めたらそこは俺の知らない世界だった! 魔法あり、剣あり、ドラゴンあり!のまさに小説で読んだファンタジーの世界。 俺はそんな世界で冒険者として生きて行く事になる、はずだったのだが、何やら色々と問題が起きそうな世界だったようだ。 それでも俺は楽しくこの新しい生を歩んで行くのだ! 小説家になろうでも投稿しています。 メインはあちらですが、こちらも同じように投稿していきます。 宜しくお願いします。

私公爵令嬢としてこの世界を楽しみます!

神桜
ファンタジー
小学生の子を事故から救った華倉愛里。本当は死ぬ予定じゃなかった華倉愛里を神が転生させて、愛し子にし家族や精霊、神に愛されて楽しく過ごす話! 『私公爵令嬢としてこの世界を楽しみます!』の番外編を『私公爵令嬢としてこの世界を楽しみます!番外編』においています!良かったら見てください! 投稿は1日おきか、毎日更新です。不規則です!宜しくお願いします!

処理中です...