文学作品を読んだ感想など

江戸川乱歩 芋虫 感想文１

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　この作品の概要と背景からまず考えていきたいと思う。この小説は江戸川乱歩氏の初期の短編の代表的なもののひとつである。
　内容が性的なものを含むことと、傷痍軍人の悲劇を描いたもののため発表当時つまり戦中のことであるが、発売禁止処分を受けた。
　これは当時、芋虫が反戦的な表現を含んでいるという判断のためであるが、私はそれを差し引いても性愛や人の心に住む残虐性などのタブーを書いたこの書を健全な小説と呼ぶことはできない。
だがただの悪趣味な書と思うわけでもない、人の本質を夢想し文学の域までに引き上げた名作であると思う。
　次にあらすじだが、一言でいうなら戦争の為に両手両足を失い聴覚や発声機能をも失った傷痍軍人とその妻の生活を描いた悲劇である。
　と説明することはこの書の内容の半分も説明ができていない、良識のある人ならば気分を悪くすることもあるであろう内容は、人の中に眠る残虐性と情愛のそのグロテスクさにスポットが当てられている点だ。
　また、この書の中で中心人物の一人の傷痍軍人のことを作中で廃人、不具者等の表現で呼ばれることもあるが、現代でも非常にデリケートな問題でありその表現自体に不快感を覚える人も多くあるだろうことも考察できる。だがそのアンモラルな表現がこの作品のグロテスクさや恐ろしさを際立たせていることも事実である。
　蛇足だが、様々な障害が悲劇しか生まないというのは真実ではない。と付け加えておく。