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四捨五入すれば……?
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「ワタシの目標はゼロキロになることなの!」
そう豪語するのは目の前にいる小柄な少女、カノン。
高校二年生でありながら身長は百四十センチ台後半と小柄ではあるが、目に見えて太っているという印象はない。
それでいてダイエットをすると息巻いているのだから不思議な話だ。
「カノンは細いでしょ?」
「ううん、最近めっちゃ太ったんだから!!」
そう言って制服のブラウスをぺろりと捲り上げる。
それができちゃう時点で痩せてるのよ。
腹筋こそ割れていないけど、お腹に肉がついているって感じでもないし。
どちらかというと……――。
私の視線に気づいたのか、カノンはバッと上半身を抱きすくめるような動きをした。
「カノン、また大きくなった?」
私の問いかけに、カノンはむっとして口を尖らせる。
「好きででかくしてるわけじゃないもん」
羨ましい。
その一言に尽きる。
「見てよこの断崖絶壁! ちょっと分けて欲しいくらいなんだけど!!?」
「ワタシだってあげられるものならあげたいよ! 肩こるしー……」
ぺたんと机に体重を預けるカノン。
その姿勢になると余計に胸が強調される。
羨ましいことに、カノンの胸は机に置けるサイズらしい。
「……で? ゼロキロを目指すってどういうこと?」
私が尋ねると、カノンは不思議そうな顔をした。
「どういうこともなにも、そのまんまじゃない?
いまのワタシって四捨五入すると百なわけよ。だから、四捨五入したらゼロになるまで減らしたいの」
「へ? もしかしてカノン、十の位で四捨五入してる?」
「むしろそれ以外になんかある?」
さも当然のように言ってのけるカノンに返す言葉もなくなる。
むしろ今までゼロだったのかな?
それがすごいよ。
「ちなみに、目標まではあとどのくらい?」
「さんびゃく、ぐらむ」
口ごもるほどの重さじゃないな?
この贅沢娘めっ!
カノンを睨みつける真似をした時、彼女はハッとしたように頭を上げた。
「麻那ちゃんのやり方なら五キロだ!」
走ってくる! とでも言って飛び出して行ってしまいそうなカノンを押さえつけて、目の前にいちごみるくの飴をひとつ置いてみる。
「はっ!!!」
目が輝き、光の速さで包みを開いて飴を口に放り込むカノン。
左のほっぺがぷくりと膨らみ、幸せそうな笑顔が溢れる。
この小動物的な可愛さがたまらないんだよなぁ。
「カノンさぁ、痩せなくてもいいと思うよ?」
「えぇ~?」
「だって、ダイエットするならこういうお菓子も食べれないし、放課後にみんなでアイス食べたりバーガー屋さん行ったりもできないよ?」
「うっ……」
カノンの顔に明らかな迷いの色が浮かんだ。
あと一押し! ……かな?
「学生のうちにダイエットするのは体にも良くないって言うしさ?」
「うぅん……そうだね。……あ、そうだ!」
カノンは名案が思い浮かんだ、というような表情になった。
「みんながもっと太ればいいんだよ。そうすればあたしは相対的に痩せてるってことになるしさ? 体重偏差値三十くらいを目指せるんじゃない!?」
満面の笑みでなんて恐ろしいことを……。
てか体重偏差値って!?
カノンの体重偏差値が三十になる頃には私たちは何キロまで太らされてるの!?
「……ごめん。私もダイエット頑張るからさ、一緒に目指そ? 四捨五入してゼロ」
「ふえ?」
「ほら、飴ぺっして。ダイエット、ダイエット!」
私の切り替えについてこられないのか、カノンはまだ目を白黒させている。
「とりあえず、もう授業が始まるから席戻るね。次の数学の時間は足をちょっと浮かせて腹筋を鍛えながら授業を受けようかな」
「ねえ、ちょっと! 急にどうしたの!?
ねえ麻那、ねえってばぁ!!」
泣きそうな声を上げるカノンを置き去りにして、私は腹筋に力を入れながら自分の席に着いた。
さあ、先にゼロになるのはどっちかな?
そう豪語するのは目の前にいる小柄な少女、カノン。
高校二年生でありながら身長は百四十センチ台後半と小柄ではあるが、目に見えて太っているという印象はない。
それでいてダイエットをすると息巻いているのだから不思議な話だ。
「カノンは細いでしょ?」
「ううん、最近めっちゃ太ったんだから!!」
そう言って制服のブラウスをぺろりと捲り上げる。
それができちゃう時点で痩せてるのよ。
腹筋こそ割れていないけど、お腹に肉がついているって感じでもないし。
どちらかというと……――。
私の視線に気づいたのか、カノンはバッと上半身を抱きすくめるような動きをした。
「カノン、また大きくなった?」
私の問いかけに、カノンはむっとして口を尖らせる。
「好きででかくしてるわけじゃないもん」
羨ましい。
その一言に尽きる。
「見てよこの断崖絶壁! ちょっと分けて欲しいくらいなんだけど!!?」
「ワタシだってあげられるものならあげたいよ! 肩こるしー……」
ぺたんと机に体重を預けるカノン。
その姿勢になると余計に胸が強調される。
羨ましいことに、カノンの胸は机に置けるサイズらしい。
「……で? ゼロキロを目指すってどういうこと?」
私が尋ねると、カノンは不思議そうな顔をした。
「どういうこともなにも、そのまんまじゃない?
いまのワタシって四捨五入すると百なわけよ。だから、四捨五入したらゼロになるまで減らしたいの」
「へ? もしかしてカノン、十の位で四捨五入してる?」
「むしろそれ以外になんかある?」
さも当然のように言ってのけるカノンに返す言葉もなくなる。
むしろ今までゼロだったのかな?
それがすごいよ。
「ちなみに、目標まではあとどのくらい?」
「さんびゃく、ぐらむ」
口ごもるほどの重さじゃないな?
この贅沢娘めっ!
カノンを睨みつける真似をした時、彼女はハッとしたように頭を上げた。
「麻那ちゃんのやり方なら五キロだ!」
走ってくる! とでも言って飛び出して行ってしまいそうなカノンを押さえつけて、目の前にいちごみるくの飴をひとつ置いてみる。
「はっ!!!」
目が輝き、光の速さで包みを開いて飴を口に放り込むカノン。
左のほっぺがぷくりと膨らみ、幸せそうな笑顔が溢れる。
この小動物的な可愛さがたまらないんだよなぁ。
「カノンさぁ、痩せなくてもいいと思うよ?」
「えぇ~?」
「だって、ダイエットするならこういうお菓子も食べれないし、放課後にみんなでアイス食べたりバーガー屋さん行ったりもできないよ?」
「うっ……」
カノンの顔に明らかな迷いの色が浮かんだ。
あと一押し! ……かな?
「学生のうちにダイエットするのは体にも良くないって言うしさ?」
「うぅん……そうだね。……あ、そうだ!」
カノンは名案が思い浮かんだ、というような表情になった。
「みんながもっと太ればいいんだよ。そうすればあたしは相対的に痩せてるってことになるしさ? 体重偏差値三十くらいを目指せるんじゃない!?」
満面の笑みでなんて恐ろしいことを……。
てか体重偏差値って!?
カノンの体重偏差値が三十になる頃には私たちは何キロまで太らされてるの!?
「……ごめん。私もダイエット頑張るからさ、一緒に目指そ? 四捨五入してゼロ」
「ふえ?」
「ほら、飴ぺっして。ダイエット、ダイエット!」
私の切り替えについてこられないのか、カノンはまだ目を白黒させている。
「とりあえず、もう授業が始まるから席戻るね。次の数学の時間は足をちょっと浮かせて腹筋を鍛えながら授業を受けようかな」
「ねえ、ちょっと! 急にどうしたの!?
ねえ麻那、ねえってばぁ!!」
泣きそうな声を上げるカノンを置き去りにして、私は腹筋に力を入れながら自分の席に着いた。
さあ、先にゼロになるのはどっちかな?
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