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連邦編
第9話 再来
しおりを挟むファリア姉さんとの会話を終え、しばらく経った後、司会と思われる人が国王の登場を宣言した。
「国王陛下のおな~り~」
いや、時代劇かよっ。
【今回はツッコミが出来ましたね。】
まぁ心の声だけどな。
流石に現実の方でツッコミを入れるのは無理だし・・・・・・
【当たり前です。おそらく『時代劇』という単語を理解できる事は無いと思いますが、控えるのが無難かと・・・・・】
いやアホか。
流石にやらんわ。
以前見た時と変わらない無駄に豪華な紺と赤の衣装を身に纏った50代後半お爺さんがやって来た。国王って毎回おんなじ服着ているのか?と疑いたくなる。
まぁどうでもいいけど。
反対に、王太子の着ている服には妙な違和感があった。
ちょっと待て、もしかしてアレ・・・・・・
【はい、間違いありません。先日完成したばかりの新素材であるレーヨンが使われております。流石王族と言った所でしょうか。】
どんだけ手が早いんだよ。まだレーヨンで作った服は一般には売られていないぞ。
【おそらくマスターの父親との繋がりによって特別に取り寄せた物でしょう。不可能ではありません。】
先日、ハーンブルク家直属の研究所にて、レーヨンの製作に成功した。とは言っても、作り方を一から十まで指示したのでそれほど時間はかかっていない。
だが、量産となると話は別だ。まだ数十着分しか作っておらず、家族や家臣に配った程度だ。
そんな事を考えていると、国王陛下が口を開いた。
「皆の衆、本日はよくぞ来てくれた。共に勝利を喜び合い、楽しんで欲しい。」
「「「はっ!」」」
正直威厳などは全く感じないが、一応この国の王様なので、俺も習って頭を下げた。
俺の隣にはいつものようにヘレナ様がいて、まるで見せつけるかのように腕を組んでいた。
お母様から、お互いを他の貴族からの縁談から守るように常に一緒にいろと言われた。正直腕を組む必要性は無いと思うが、ヘレナ様にどうしてもと言われたので組んでいる。
そんな俺たちは、中々に目立っていた。
というのも、元々ハーンブルク家の人間というだけで一目置かれていたが、先程披露した演奏によって注目の的となっており、多くの貴族に王族とハーンブルク家の結束力を印象付けた。
前回同様、国王への挨拶タイムが始まったわけだが、ヘレナが王族という事で前回よりもだいぶ早く俺たちの番がやって来た。
王国の身分制度において、例え子供でも王族は貴族よりも上の立場となるのだ。
「お久しぶりです、お爺様、お父様」
「うむ、余も久しぶりに余の孫の顔が見れて嬉しく思う。」
続いて、お父様とお母様がヘレナ様の一歩後ろから頭を下げた。同時に俺たち3姉弟とイレーナも頭を下げる。
「おめでとうございます、陛下。」
「戦勝おめでとうございます、陛下。」
4年ぶりであったが、このしきたりは一応覚えていた。というか先程確認した。
今回はヘレナ様がいたので少し違ったが、前回とほとんど変わらない。
だが、参加しているメンバーは前回と結構変わっていた。前回はたくさんいた国王の孫達の多くは、有力な貴族と婚姻などを結んでバラバラになり、参加できるのは王太子の直接の息子が上から4人(次期王太子候補)と、まだ婚姻などを結んでいない少女達が数名だけだ。
ちなみに、次期王太子候補は4人いるが、ダメ王子こと、サルラックで既にほぼ決まっており、残りの3人はおまけみたいなものだ。何故なら、サルラックには現在3名の婚約者がおり、その内の1人がハーンブルク家の長女だからだ。
ハーンブルク家の影響力は、今や公爵家をも上回る。
久しぶりにサルラックの顔を見たが、以前会った時よりもだいぶ大人びていた。確か6歳年上だったはずだから今16歳で、前世なら高校生だ。
そんなサルラックに、国王陛下は落ち着いた口調でとんでも無い事を伝えた。
「では、以前からの取り決め通り、ここにサルラック=フォン=サーマルディアとスワンナ=フォン=ハーンブルクの婚姻を宣言する。互いに支え合い、良き夫婦となるんだぞ。」
「はい、お爺様」
「よろしくお願いします、サルラック様」
2人、いや1人と1匹は見つめ合うと、誓いの口付けをその場で交わした。
直後、盛大な拍手が、色々な方向からされた。
後から聞いた話だが、スワンナとの婚約成立後、サルラックは心を入れ替え、真面目に生活をしていたそうだ。
先の戦争では、総大将である父、ジルバートに付いて戦場をかけ回り、武勲を上げたそうだ。
今回はそれが高く評価され、婚姻に至ったそうだ。
また、前回会った時はヒョロガリであった身体が、今回会った時は筋肉ムキムキに大変身していた。
一体何に影響されたのだろうか・・・・・・
前回は「ざまぁ」と笑ったが、今回は純粋に俺も婚姻を祝った。
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