上 下
33 / 90
軍事編

第5話 調印

しおりを挟む
「いやいやちょっと待って下さい、本気で言っているのですか?」



俺は思わず、人間の共通語で話してしまった。俺の予想では、交渉がまとまるまでに1週間はかかると思ったが、まだ1時間も経過していない。

そして、エルフ側からの人質交換と提案。不平等条約を結ぶならともかく、人質交換となるとお母様の許可が必要だ。



「あぁ、私のひ孫であるスピカが其方の側にいれば、ハーンブルク領内での我々エルフに対する対応が良い方向にも傾くかもしれないからな。」(亜人語)



「その考えは理解できますが・・・・・・」(亜人語)



「人質を出すのが難しいのならば、代わりとして周囲の島の領有を認めてもらおう。」(亜人語)



【了承して大丈夫だと思います。沿岸部に港を持っていれば、万が一の時にもすぐに対応できます。条約が結べるなら得です。】



『アイ』が許可を出したので、俺もこの条件で了承する。



「わかりました。細かな割合などは後で決めるとして、内容を他の2集落にも伝えてきて下さい。」(亜人語)



「わかった。・・・・・・すまんが1つ教えてくれ、条約の締結はどうやってやるのだ?」(亜人語)



確かに・・・・・・どうやるんだ?

俺も知らんぞ。



【この場合だと、黒船級一番艦『テンペスト』の上が最適でしょう。全ての集落から代表を選出して調印を行うべきです。】



へーそうなんだ。でも何で?



【ハーンブルク領とエルフの差を知ってもらうためです。おそらく、エルフの多くは差を自覚していないでしょう。ここは、大々的に行い、エルフに我々の顔を覚えてもらえのです。】



なるほどね、頭良すぎでしょ。



【・・・・・・】



「調印は我々の船の上で行います。全ての集落の代表が揃ったら、我々の船にお越しください。」(亜人語)



「わかった。」(亜人語)



そして、この会談から1週間後、それぞれの集落の代表一行が到着し、調印が行われる事となった。



その間、俺は何もせずただぼ~っと待っていたわけではもちろんない。

ある物を探しに来たのだ。



「レオルド様、間違いございません。これ全部サトウキビでございます。」



「レオルド、こちらにはリストにあった『ゴムノキ』を発見しましたっ!」



俺が探していた物は、あらかじめその物の特徴を共有していた事もあって、すぐに見つかった。



天然ゴム、パーム油、サトウキビ、稲の4つである。

前者の2つは商人達を使って周辺を探させたが見つからなかったもので、後半の2つは見つかったけど輸送するのに時間がかかりすぎる&希少価値があるものだ。



【この4品を安定的に供給できるようになればハーンブルク領の暮らしは段違いに良くなります。早速、港を整備しましょう。】



了解、早速量産体制を整えるとしようか。



「本拠地はこことする。まだ交渉中ではあるが、もはや決まったようなもの。ここに拠点を作るぞ!」



「「「了解」」」



そして、木造の輸送船に乗せておいた木材やツルハシやオノといった道具を使い、一気に建設を進めた。

そして1週間後、木造ではあるが仮拠点が完成した。




✳︎




1週間後、エルフの代表者達は、ハーンブルク家が誇る世界最強の戦艦である黒船に案の定驚いた顔をしていた。

国力の差をアピールしつつ、できるだけ友好的な態度をとるように努める。




今回の条約で決まった事は、以下の通りだ。



✳︎ハーンブルク家は、エルフ共和国を1つの国家として認める。



✳︎エルフ共和国は、沿岸部を含む本島の3分の1をハーンブルク領として認める。ハーンブルク家は、エルフ共和国の本島の3分の2及び、周辺の島の領有を認める。



✳︎ハーンブルク家は、エルフ共和国の安全保障を行う。ただし、対価を支払う。



✳︎相互間における関税を撤廃する。



✳︎この条約は本日より25年間有効とする。



という4つが『テンペスト安全保障条約』として締結された。(正確には5つ)

正直、めちゃくちゃ不平等な条約である。絶対に無いとは限らないが、現状エルフ共和国を攻めるような国は無いし、攻める事もできない。

揚陸隊のような物で攻撃しようとしても、防衛はできるだろう。

そもそもここに辿り着ける船が限られているのだ。

そして、関税が無いという事は、ハーンブルク領で作られた物資をどんどん輸出する事ができるという事だ。

もう調印してしまったので、変更はできないはずだ。



調印は、案外あっさりと終わった。まぁ今日までの間に、色々と調節しておいたので、今日はサインをするだけで終わった。

そして、1番迷ったのはこの島及び、沿岸部に新しく作った都市の名前である。

迷いに迷った末、エルフ共和国の本島を『ハワイ』と『エルフ』を合成させて『ハワフ島』、残りはエルフ側に命名権をあげた。

まぁそこら辺はテキトーでいいだろう。

ちなみに都市名はハワフシティだ。

命名者のやる気の無さがよくわかる。




調印が終わると、俺たちは『テンペスト』に乗って、ひとまずシュヴェリーンに帰る事にした。長居は無用、というわけではないが、お母様に現状を報告しなければならないからだ。それに、そろそろサッカーのリーグ戦が始まる。開会式に、サッカー管理部のリーダーとして、顔を出さないわけにはいかないからだ。

一応現地には、発展の指揮役として、研究部漁業部門のメンバーと、SHSのメンバー数名が残る事となった。

彼らが、この島をより良い島へと発展させてくれるだろう。

翌朝、大量の水と食料を詰め込むとスピカを連れて、日が昇る前に出港した。



結局預かるんかい。



__________________________________________



どうでもいい話

レビューや星待ってますっ!

是非お願いします!
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

最底辺の落ちこぼれ、実は彼がハイスペックであることを知っている元幼馴染のヤンデレ義妹が入学してきたせいで真の実力が発覚してしまう!

電脳ピエロ
恋愛
時野 玲二はとある事情から真の実力を隠しており、常に退学ギリギリの成績をとっていたことから最底辺の落ちこぼれとバカにされていた。 しかし玲二が2年生になった頃、時を同じくして義理の妹になった人気モデルの神堂 朱音が入学してきたことにより、彼の実力隠しは終わりを迎えようとしていた。 「わたしは大好きなお義兄様の真の実力を、全校生徒に知らしめたいんです♡ そして、全校生徒から羨望の眼差しを向けられているお兄様をわたしだけのものにすることに興奮するんです……あぁんっ♡ お義兄様ぁ♡」 朱音は玲二が実力隠しを始めるよりも前、幼少期からの幼馴染だった。 そして義理の兄妹として再開した現在、玲二に対して変質的な愛情を抱くヤンデレなブラコン義妹に変貌していた朱音は、あの手この手を使って彼の真の実力を発覚させようとしてくる! ――俺はもう、人に期待されるのはごめんなんだ。 そんな玲二の願いは叶うことなく、ヤンデレ義妹の暴走によって彼がハイスペックであるという噂は徐々に学校中へと広まっていく。 やがて玲二の真の実力に危機感を覚えた生徒会までもが動き始めてしまい……。 義兄の実力を全校生徒に知らしめたい、ブラコンにしてヤンデレの人気モデル VS 真の実力を絶対に隠し通したい、実は最強な最底辺の陰キャぼっち。 二人の心理戦は、やがて学校全体を巻き込むほどの大きな戦いへと発展していく。

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

悠々自適な転生冒険者ライフ ~実力がバレると面倒だから周りのみんなにはナイショです~

こばやん2号
ファンタジー
とある大学に通う22歳の大学生である日比野秋雨は、通学途中にある工事現場の事故に巻き込まれてあっけなく死んでしまう。 それを不憫に思った女神が、異世界で生き返る権利と異世界転生定番のチート能力を与えてくれた。 かつて生きていた世界で趣味で読んでいた小説の知識から、自分の実力がバレてしまうと面倒事に巻き込まれると思った彼は、自身の実力を隠したまま自由気ままな冒険者をすることにした。 果たして彼の二度目の人生はうまくいくのか? そして彼は自分の実力を隠したまま平和な異世界生活をおくれるのか!? ※この作品はアルファポリス、小説家になろうの両サイトで同時配信しております。

チートがん積みで転生したけど、英雄とか興味ないので異世界をゆるっと旅行して楽しみます!~ところで《放浪の勇者》って誰のことですか?~

メルメア
ファンタジー
チートがん積みで異世界に転生した元社畜のクロは、冒険者協会で働くエリスと出会う。 元の世界では叶えられなかった世界を旅してまわるという夢をエリスに語ったクロは、ちょうど各地の冒険者協会を視察しに行こうとしていたエリスの旅に用心棒として同行することに。 いろいろな観光名所を楽しんだり、その土地のグルメを楽しんだり、正体を隠して各地の問題をチート活かし解決したり……。 遊び半分、仕事半分の旅を楽しみながら、2人の関係もどんどん深まっていく。 そしていつしか、ピンチの時に現れるチート級に強い《放浪の勇者》がいるなんて噂が出始めて……? でも英雄とか興味ないです。有名になっちゃったら、落ち着いて旅ができないから。 そんなマインドでクロは、エリスと一緒に異世界をゆるっと旅してまわるのだった。

ぐ~たら第三王子、牧場でスローライフ始めるってよ

雑木林
ファンタジー
 現代日本で草臥れたサラリーマンをやっていた俺は、過労死した後に何の脈絡もなく異世界転生を果たした。  第二の人生で新たに得た俺の身分は、とある王国の第三王子だ。  この世界では神様が人々に天職を授けると言われており、俺の父親である国王は【軍神】で、長男の第一王子が【剣聖】、それから次男の第二王子が【賢者】という天職を授かっている。  そんなエリートな王族の末席に加わった俺は、当然のように周囲から期待されていたが……しかし、俺が授かった天職は、なんと【牧場主】だった。  畜産業は人類の食文化を支える素晴らしいものだが、王族が従事する仕事としては相応しくない。  斯くして、父親に失望された俺は王城から追放され、辺境の片隅でひっそりとスローライフを始めることになる。

退屈な人生を歩んでいたおっさんが異世界に飛ばされるも無自覚チートで無双しながらネットショッピングしたり奴隷を買ったりする話

菊池 快晴
ファンタジー
無難に生きて、真面目に勉強して、最悪なブラック企業に就職した男、君内志賀(45歳)。 そんな人生を歩んできたおっさんだったが、異世界に転生してチートを授かる。 超成熟、四大魔法、召喚術、剣術、魔力、どれをとっても異世界最高峰。 極めつけは異世界にいながら元の世界の『ネットショッピング』まで。 生真面目で不器用、そんなおっさんが、奴隷幼女を即購入!? これは、無自覚チートで無双する真面目なおっさんが、元の世界のネットショッピングを楽しみつつ、奴隷少女と異世界をマイペースに旅するほんわか物語です。

田舎暮らしと思ったら、異世界暮らしだった。

けむし
ファンタジー
突然の異世界転移とともに魔法が使えるようになった青年の、ほぼ手に汗握らない物語。 日本と異世界を行き来する転移魔法、物を複製する魔法。 あらゆる魔法を使えるようになった主人公は異世界で、そして日本でチート能力を発揮・・・するの? ゆる~くのんびり進む物語です。読者の皆様ものんびりお付き合いください。 感想などお待ちしております。

エラーから始まる異世界生活

KeyBow
ファンタジー
45歳リーマンの志郎は本来異世界転移されないはずだったが、何が原因か高校生の異世界勇者召喚に巻き込まれる。 本来の人数より1名増の影響か転移処理でエラーが発生する。 高校生は正常?に転移されたようだが、志郎はエラー召喚されてしまった。 冤罪で多くの魔物うようよするような所に放逐がされ、死にそうになりながら一人の少女と出会う。 その後冒険者として生きて行かざるを得ず奴隷を買い成り上がっていく物語。 某刑事のように”あの女(王女)絶対いずれしょんべんぶっ掛けてやる”事を当面の目標の一つとして。 実は所有するギフトはかなりレアなぶっ飛びな内容で、召喚された中では最強だったはずである。 勇者として活躍するのかしないのか? 能力を鍛え、復讐と色々エラーがあり屈折してしまった心を、召還時のエラーで壊れた記憶を抱えてもがきながら奴隷の少女達に救われるて変わっていく第二の人生を歩む志郎の物語が始まる。 多分チーレムになったり残酷表現があります。苦手な方はお気をつけ下さい。 初めての作品にお付き合い下さい。

処理中です...