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国内編

第20話 商人

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「では他に、質問がある方はいらっしゃいますでしょうか。」



ざわついた会議室に、クレアの凛とした声が響く。

それぞれの商人は、近くにいる同業者達と話し合いを始めた。内容はもちろん、俺(ほとんどアイ)の作ったガイドラインについてだ。

やがて、1人の老人が手を挙げた。名前は知らないが、結構貫禄があるお爺さんだ。



「ではそこのお爺さん、どうぞ。」



「儂は、デララント商会の者じゃ。2つ聞きたい事があるのだが、よろしいか?」



「いいぞ。」



お爺さんが話し始めた直後、会議室にいた全員が会話を一旦やめ、そのお爺さんに注目した。

商人とは、情報戦だ。当然、1つでも多く情報を仕入れた者が有利になる。



「1つ目の質問じゃが、商品価値というのはどうやって決めるのじゃ?」



「商品価値は取引を行った時点での金額の事だ。例えばパンを一切れ王都から輸入したとしよう。そのパンを王都で100マルク(100円とほぼ同じ)で買い150マルクで売ったとよう。その場合、商人はパンを最初に買った時の金額である100マルクの内の15%である15マルクを関税として納めるという事だ。ここまでは理解できるか?」



「はい、わかります。」



「では、パン一切れ分の小麦を60マルクで買い、同じ物を150マルクで売ったとしたらどうなるか、こういう場合は小麦の値段である60マルクの内の15%である9マルクが関税となる。つまり、原料を輸入した方が得という事だ。」



「なるほど。」



俺の説明を聞きながら、何人かがうなづいてくれた。どうやらシステムを理解してくれたようだ。



「では次に、小麦を60マルクで買って輸入し、加工してパンにしてから150マルクで輸出した場合どうなるか。こういう場合は、輸入のみ関税が発生し、60マルクの内の15%である9マルクが関税となる。これで理解できたか?」



「はい、ありがとうございました。」



この政策の狙いは、本格的に加工貿易に特化させようと思ったからだ。そうする事によって仕事が増え、労働者が集まりやすくなるのでは?と思ったからだ。

そしてそれは、領民全体の生活向上や出生率の上昇にも繋がる。

お母様の調べによると、ここ半年で出生率が20%ほど増加したそうだ。人口が増える事は、今のところ正直メリットしかない。

これからもバンバン人口を増やしてほしい。



そして少し間を空けてから、2つ目の質問へ移った。



「密輸対策はどうするのでしょうか。」



「それに関しては安心してほしい、我がハーンブルク家の懐刀であるSHSが責任を持って監視する予定だ。不正を行った場合、1回目と2回目は厳重注意と罰金、3回目は永久追放となる。ちなみに、罰金の金額は不正によって得したお金の10倍だ。払えない場合はその都度別の処置を考える。」



前世のような日本であれば、港と空港さえ封じておけば密輸などほぼ不可能であったが、陸路で他領や他国と接しているハーンブル領では完全に密輸を防ぐ事は出来ない。

そこで俺は、SHSに密輸の取り締まりなどを丸投げした。

餅は餅屋である。



【とりあえず、領内に微かに残っていたあらゆる犯罪組織を壊滅させるようにSHSに命令しましょう。】



了解っと、というか結構SHSの仕事多くね?



【確かにそうですね、人員を増やしましょう。】



わかった。

このように『アイ』と話していると、俺にある名案が浮かんだ。ここは1つ我が家お得意の、ありもしない噂を流そう。



「SHSがどのぐらいの強さを持つか教えてやるか。まぁまずは自分の周りに目を向けてみろ。あいつがいないとか、あの商会が参加していないとか、ないか?大抵の場合はSHSの調査の結果によって不正が明るみになり今後一切のハーンブルク家との取引が禁止された。君たちもそうなりたくなければしっかりとルールを守ってもらおう。」



具体例を示す時は、出来るだけ身近な存在の話をした方が効果的だ。

俺のこの話を間に受けた商人達の多くが驚いた顔をしていた。

もちろん、今の話はだいぶ強調されている。

基本的には、密輸をしていた証拠と新しいガイドラインを書いた紙を渡しておいただけである。確かに全ての財を投げ捨てて逃げ出した者たちもいたが、それはごく一部だ。



「どうも、ありがとうございました。」



俺が話を終えると、そのお爺さんは一礼してから席に着いた。どうやら満足したようであった。



「あぁ、それと、君たちに集めてもらいたい物がある。それは火薬だ、量はできるだけたくさん。先着順による制限はあるが、持ってきたら全て買い取ろう。」



「火薬ですか・・・・・・。」



商人の1人が聞き返した。

俺はすぐさまうなづく。



「あぁ、言い値で買い取ってやろう。」



いつか言ってみたかったセリフを吐く。少しカッコいいからだ。

そこからも何度も質問が続きおよそ2時間半が経過した、そして全会一致で合意された。

ハーンブルク家が新たに定めたガイドラインは、今までに見たことのない物であったのだが、何と全員が賛成してくれた。

これは、俺のスピーチが素晴らしかったからではなく、ハーンブルク家と今後取引が一切できなくなるというデメリットが大き過ぎたからだ。

まあそこは仕方がない、スピーチ力は今後磨いていくとしよう。



そして俺は再度、結構色んな事やってんな俺っと自画自賛するのであった。



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どうでもいい話



作者のネーミングセンスは基本ない
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