20 / 90
国内編
第20話 商人
しおりを挟む
「では他に、質問がある方はいらっしゃいますでしょうか。」
ざわついた会議室に、クレアの凛とした声が響く。
それぞれの商人は、近くにいる同業者達と話し合いを始めた。内容はもちろん、俺(ほとんどアイ)の作ったガイドラインについてだ。
やがて、1人の老人が手を挙げた。名前は知らないが、結構貫禄があるお爺さんだ。
「ではそこのお爺さん、どうぞ。」
「儂は、デララント商会の者じゃ。2つ聞きたい事があるのだが、よろしいか?」
「いいぞ。」
お爺さんが話し始めた直後、会議室にいた全員が会話を一旦やめ、そのお爺さんに注目した。
商人とは、情報戦だ。当然、1つでも多く情報を仕入れた者が有利になる。
「1つ目の質問じゃが、商品価値というのはどうやって決めるのじゃ?」
「商品価値は取引を行った時点での金額の事だ。例えばパンを一切れ王都から輸入したとしよう。そのパンを王都で100マルク(100円とほぼ同じ)で買い150マルクで売ったとよう。その場合、商人はパンを最初に買った時の金額である100マルクの内の15%である15マルクを関税として納めるという事だ。ここまでは理解できるか?」
「はい、わかります。」
「では、パン一切れ分の小麦を60マルクで買い、同じ物を150マルクで売ったとしたらどうなるか、こういう場合は小麦の値段である60マルクの内の15%である9マルクが関税となる。つまり、原料を輸入した方が得という事だ。」
「なるほど。」
俺の説明を聞きながら、何人かがうなづいてくれた。どうやらシステムを理解してくれたようだ。
「では次に、小麦を60マルクで買って輸入し、加工してパンにしてから150マルクで輸出した場合どうなるか。こういう場合は、輸入のみ関税が発生し、60マルクの内の15%である9マルクが関税となる。これで理解できたか?」
「はい、ありがとうございました。」
この政策の狙いは、本格的に加工貿易に特化させようと思ったからだ。そうする事によって仕事が増え、労働者が集まりやすくなるのでは?と思ったからだ。
そしてそれは、領民全体の生活向上や出生率の上昇にも繋がる。
お母様の調べによると、ここ半年で出生率が20%ほど増加したそうだ。人口が増える事は、今のところ正直メリットしかない。
これからもバンバン人口を増やしてほしい。
そして少し間を空けてから、2つ目の質問へ移った。
「密輸対策はどうするのでしょうか。」
「それに関しては安心してほしい、我がハーンブルク家の懐刀であるSHSが責任を持って監視する予定だ。不正を行った場合、1回目と2回目は厳重注意と罰金、3回目は永久追放となる。ちなみに、罰金の金額は不正によって得したお金の10倍だ。払えない場合はその都度別の処置を考える。」
前世のような日本であれば、港と空港さえ封じておけば密輸などほぼ不可能であったが、陸路で他領や他国と接しているハーンブル領では完全に密輸を防ぐ事は出来ない。
そこで俺は、SHSに密輸の取り締まりなどを丸投げした。
餅は餅屋である。
【とりあえず、領内に微かに残っていたあらゆる犯罪組織を壊滅させるようにSHSに命令しましょう。】
了解っと、というか結構SHSの仕事多くね?
【確かにそうですね、人員を増やしましょう。】
わかった。
このように『アイ』と話していると、俺にある名案が浮かんだ。ここは1つ我が家お得意の、ありもしない噂を流そう。
「SHSがどのぐらいの強さを持つか教えてやるか。まぁまずは自分の周りに目を向けてみろ。あいつがいないとか、あの商会が参加していないとか、ないか?大抵の場合はSHSの調査の結果によって不正が明るみになり今後一切のハーンブルク家との取引が禁止された。君たちもそうなりたくなければしっかりとルールを守ってもらおう。」
具体例を示す時は、出来るだけ身近な存在の話をした方が効果的だ。
俺のこの話を間に受けた商人達の多くが驚いた顔をしていた。
もちろん、今の話はだいぶ強調されている。
基本的には、密輸をしていた証拠と新しいガイドラインを書いた紙を渡しておいただけである。確かに全ての財を投げ捨てて逃げ出した者たちもいたが、それはごく一部だ。
「どうも、ありがとうございました。」
俺が話を終えると、そのお爺さんは一礼してから席に着いた。どうやら満足したようであった。
「あぁ、それと、君たちに集めてもらいたい物がある。それは火薬だ、量はできるだけたくさん。先着順による制限はあるが、持ってきたら全て買い取ろう。」
「火薬ですか・・・・・・。」
商人の1人が聞き返した。
俺はすぐさまうなづく。
「あぁ、言い値で買い取ってやろう。」
いつか言ってみたかったセリフを吐く。少しカッコいいからだ。
そこからも何度も質問が続きおよそ2時間半が経過した、そして全会一致で合意された。
ハーンブルク家が新たに定めたガイドラインは、今までに見たことのない物であったのだが、何と全員が賛成してくれた。
これは、俺のスピーチが素晴らしかったからではなく、ハーンブルク家と今後取引が一切できなくなるというデメリットが大き過ぎたからだ。
まあそこは仕方がない、スピーチ力は今後磨いていくとしよう。
そして俺は再度、結構色んな事やってんな俺っと自画自賛するのであった。
______________________________________
どうでもいい話
作者のネーミングセンスは基本ない
ざわついた会議室に、クレアの凛とした声が響く。
それぞれの商人は、近くにいる同業者達と話し合いを始めた。内容はもちろん、俺(ほとんどアイ)の作ったガイドラインについてだ。
やがて、1人の老人が手を挙げた。名前は知らないが、結構貫禄があるお爺さんだ。
「ではそこのお爺さん、どうぞ。」
「儂は、デララント商会の者じゃ。2つ聞きたい事があるのだが、よろしいか?」
「いいぞ。」
お爺さんが話し始めた直後、会議室にいた全員が会話を一旦やめ、そのお爺さんに注目した。
商人とは、情報戦だ。当然、1つでも多く情報を仕入れた者が有利になる。
「1つ目の質問じゃが、商品価値というのはどうやって決めるのじゃ?」
「商品価値は取引を行った時点での金額の事だ。例えばパンを一切れ王都から輸入したとしよう。そのパンを王都で100マルク(100円とほぼ同じ)で買い150マルクで売ったとよう。その場合、商人はパンを最初に買った時の金額である100マルクの内の15%である15マルクを関税として納めるという事だ。ここまでは理解できるか?」
「はい、わかります。」
「では、パン一切れ分の小麦を60マルクで買い、同じ物を150マルクで売ったとしたらどうなるか、こういう場合は小麦の値段である60マルクの内の15%である9マルクが関税となる。つまり、原料を輸入した方が得という事だ。」
「なるほど。」
俺の説明を聞きながら、何人かがうなづいてくれた。どうやらシステムを理解してくれたようだ。
「では次に、小麦を60マルクで買って輸入し、加工してパンにしてから150マルクで輸出した場合どうなるか。こういう場合は、輸入のみ関税が発生し、60マルクの内の15%である9マルクが関税となる。これで理解できたか?」
「はい、ありがとうございました。」
この政策の狙いは、本格的に加工貿易に特化させようと思ったからだ。そうする事によって仕事が増え、労働者が集まりやすくなるのでは?と思ったからだ。
そしてそれは、領民全体の生活向上や出生率の上昇にも繋がる。
お母様の調べによると、ここ半年で出生率が20%ほど増加したそうだ。人口が増える事は、今のところ正直メリットしかない。
これからもバンバン人口を増やしてほしい。
そして少し間を空けてから、2つ目の質問へ移った。
「密輸対策はどうするのでしょうか。」
「それに関しては安心してほしい、我がハーンブルク家の懐刀であるSHSが責任を持って監視する予定だ。不正を行った場合、1回目と2回目は厳重注意と罰金、3回目は永久追放となる。ちなみに、罰金の金額は不正によって得したお金の10倍だ。払えない場合はその都度別の処置を考える。」
前世のような日本であれば、港と空港さえ封じておけば密輸などほぼ不可能であったが、陸路で他領や他国と接しているハーンブル領では完全に密輸を防ぐ事は出来ない。
そこで俺は、SHSに密輸の取り締まりなどを丸投げした。
餅は餅屋である。
【とりあえず、領内に微かに残っていたあらゆる犯罪組織を壊滅させるようにSHSに命令しましょう。】
了解っと、というか結構SHSの仕事多くね?
【確かにそうですね、人員を増やしましょう。】
わかった。
このように『アイ』と話していると、俺にある名案が浮かんだ。ここは1つ我が家お得意の、ありもしない噂を流そう。
「SHSがどのぐらいの強さを持つか教えてやるか。まぁまずは自分の周りに目を向けてみろ。あいつがいないとか、あの商会が参加していないとか、ないか?大抵の場合はSHSの調査の結果によって不正が明るみになり今後一切のハーンブルク家との取引が禁止された。君たちもそうなりたくなければしっかりとルールを守ってもらおう。」
具体例を示す時は、出来るだけ身近な存在の話をした方が効果的だ。
俺のこの話を間に受けた商人達の多くが驚いた顔をしていた。
もちろん、今の話はだいぶ強調されている。
基本的には、密輸をしていた証拠と新しいガイドラインを書いた紙を渡しておいただけである。確かに全ての財を投げ捨てて逃げ出した者たちもいたが、それはごく一部だ。
「どうも、ありがとうございました。」
俺が話を終えると、そのお爺さんは一礼してから席に着いた。どうやら満足したようであった。
「あぁ、それと、君たちに集めてもらいたい物がある。それは火薬だ、量はできるだけたくさん。先着順による制限はあるが、持ってきたら全て買い取ろう。」
「火薬ですか・・・・・・。」
商人の1人が聞き返した。
俺はすぐさまうなづく。
「あぁ、言い値で買い取ってやろう。」
いつか言ってみたかったセリフを吐く。少しカッコいいからだ。
そこからも何度も質問が続きおよそ2時間半が経過した、そして全会一致で合意された。
ハーンブルク家が新たに定めたガイドラインは、今までに見たことのない物であったのだが、何と全員が賛成してくれた。
これは、俺のスピーチが素晴らしかったからではなく、ハーンブルク家と今後取引が一切できなくなるというデメリットが大き過ぎたからだ。
まあそこは仕方がない、スピーチ力は今後磨いていくとしよう。
そして俺は再度、結構色んな事やってんな俺っと自画自賛するのであった。
______________________________________
どうでもいい話
作者のネーミングセンスは基本ない
3
お気に入りに追加
941
あなたにおすすめの小説
今さら言われても・・・私は趣味に生きてますので
sherry
ファンタジー
ある日森に置き去りにされた少女はひょんな事から自分が前世の記憶を持ち、この世界に生まれ変わったことを思い出す。
早々に今世の家族に見切りをつけた少女は色んな出会いもあり、周りに呆れられながらも成長していく。
なのに・・・今更そんなこと言われても・・・出来ればそのまま放置しといてくれません?私は私で気楽にやってますので。
※魔法と剣の世界です。
※所々ご都合設定かもしれません。初ジャンルなので、暖かく見守っていただけたら幸いです。
【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
元悪役令嬢はオンボロ修道院で余生を過ごす
こうじ
ファンタジー
両親から妹に婚約者を譲れと言われたレスナー・ティアント。彼女は勝手な両親や裏切った婚約者、寝取った妹に嫌気がさし自ら修道院に入る事にした。研修期間を経て彼女は修道院に入る事になったのだが彼女が送られたのは廃墟寸前の修道院でしかも修道女はレスナー一人のみ。しかし、彼女にとっては好都合だった。『誰にも邪魔されずに好きな事が出来る!これって恵まれているんじゃ?』公爵令嬢から修道女になったレスナーののんびり修道院ライフが始まる!
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
転生してチートを手に入れました!!生まれた時から精霊王に囲まれてます…やだ
如月花恋
ファンタジー
…目の前がめっちゃ明るくなったと思ったら今度は…真っ白?
「え~…大丈夫?」
…大丈夫じゃないです
というかあなた誰?
「神。ごめんね~?合コンしてたら死んじゃってた~」
…合…コン
私の死因…神様の合コン…
…かない
「てことで…好きな所に転生していいよ!!」
好きな所…転生
じゃ異世界で
「異世界ってそんな子供みたいな…」
子供だし
小2
「まっいっか。分かった。知り合いのところ送るね」
よろです
魔法使えるところがいいな
「更に注文!?」
…神様のせいで死んだのに…
「あぁ!!分かりました!!」
やたね
「君…結構策士だな」
そう?
作戦とかは楽しいけど…
「う~ん…だったらあそこでも大丈夫かな。ちょうど人が足りないって言ってたし」
…あそこ?
「…うん。君ならやれるよ。頑張って」
…んな他人事みたいな…
「あ。爵位は結構高めだからね」
しゃくい…?
「じゃ!!」
え?
ちょ…しゃくいの説明ぃぃぃぃ!!
転生したので好きに生きよう!
ゆっけ
ファンタジー
前世では妹によって全てを奪われ続けていた少女。そんな少女はある日、事故にあい亡くなってしまう。
不思議な場所で目覚める少女は女神と出会う。その女神は全く人の話を聞かないで少女を地上へと送る。
奪われ続けた少女が異世界で周囲から愛される話。…にしようと思います。
※見切り発車感が凄い。
※マイペースに更新する予定なのでいつ次話が更新するか作者も不明。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる